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漁業の現場はここまで変わった|スマート水産業 全国に広がるデジタル化の最新事例


こんにちは、弁護士の長友隆典です。

前回は「スマート水産業」の基本的な考え方と、国の取り組みの現状をご紹介しました。

スマート水産業は、いまや全国各地の漁業・養殖の現場で導入が進んでいます。

今回のコラムでは、実際にどのような取り組みが行われているのか、具体例をご紹介します。

船上でスマホを開けば、海の様子がわかる 

引用:宮崎県農林水産省ナビひなたMAFiN

宮崎県では、令和2(2020)年度から県内の漁業者専用のスマートフォンアプリ「宮崎県漁業技術支援システム」が提供されています。

このアプリでできることは、主に次の4つです。

  • 毎日の漁獲の記録や、船の航跡の記録
  • 潮の流れや波の高さなど、海の状況の確認
  • 浮魚礁(魚が集まるよう海に浮かべた人工の魚礁)の位置や漁業権など、漁場の情報の確認
  • 漁獲や漁場の情報を、仲間や師匠と共有

令和5(2023)年のリニューアルによって、Androidに加えてiPhoneやiPadでも使えるようになり、電波の届かない沖合でも使える機能や、海底地形図などの表示も加わりました。

海の情報の元になっているのは、沖合の浮魚礁「うみさち」による水温や潮の流れの観測と、令和元(2019)年に全国に先駆けて整備された海洋レーダー(沖合約100kmまでの潮の流れや波の高さを観測)です。

注目したいのは、記録した情報を仲間と共有できる点です。

ベテランの頭の中にある「暗黙知」(言葉や数字にしにくい感覚)を次の世代へつなぐ取り組みが、まさに形になりつつある例と言えるでしょう。

養殖は宇宙から見守る時代へ

引用:JAXA(宇宙航空研究開発機構)

海の様子を広くこまめに知るために、養殖の現場で活躍し始めているのが、人工衛星のデータです。

JAXA(宇宙航空研究開発機構)の気候変動観測衛星「しきさい」は、2〜3日おきに地球全体を観測しています。湾の中の水温や植物プランクトンの量の目安まで、細かく見分けるのが特長です。

実際に、各地の養殖現場では、次のような使い方が広がっています。

  • 広島県(カキ養殖):漁場の観測ブイと衛星の情報を組み合わせて、種苗を採る場所やタイミング、高水温時に筏を移す判断に活かす取り組みが進行中
  • 佐賀県・有明海(ノリ養殖):衛星の情報で赤潮の広がりを確認し、網を張る時期や収穫のタイミングを見極める材料に

衛星の力を借りることで、船を出さなくてもスマホやパソコンで海全体の様子がわかるようになり、その負担が大きく変わろうとしています。

地域まるごとデジタル化!「デジタル水産業戦略拠点」

個々の取り組みから一歩進んで、地域全体でデジタル化に取り組むモデルづくりも始まっています。

それが、水産庁の「デジタル水産業戦略拠点」です。

水揚げから市場、流通、消費まで、これまでバラバラに進んできたデジタル化を地域ぐるみで進め、うまくいった方法をほかの地域にも広げていこう、という取り組みです。

【モデル地域に選ばれた7か所】

  • 令和5(2023)年度:宮城県気仙沼、大阪府泉州、山口県下関
  • 令和6(2024)年度:静岡県焼津、鹿児島県
  • 令和7(2025)年度:三重県南伊勢、愛媛県愛南

各地域の取り組みはさまざまです。
たとえば、静岡県焼津や三重県南伊勢では、セリや計量といった市場業務をデジタル化。

大阪府泉州では漁獲・漁場情報のデータベースやWeb販売の仕組みづくり、宮城県気仙沼では海の状況を共有するデータ基盤づくりが進んでいます。

愛媛県愛南のように、市場業務に加えて海洋環境のデータの電子化まで手がける地域もあります。

鹿児島県では、海況・漁場予測による漁船漁業の効率化、自動計量器や電子入札による市場業務のデジタル化、赤潮情報をリアルタイムで共有するネットワークづくりなど、複数の分野を同時に進めています。

さらに鹿児島県の稚うなぎ(シラスウナギ)に関する取り組みは、法律の面でも注目したいケースです。

稚うなぎは、令和7(2025)年12月から水産流通適正化法の対象になりました。これに合わせて、採捕の許可手続きや報告、取引のときの漁獲番号の伝達をデジタル化。採捕から養殖池に入れるまでを一貫して追える仕組みづくりが進められています。

法律で求められる手続きを、デジタルの力で無理なく守れるようにする。こうした発想は、今後ほかの地域や魚種にも広がっていくと考えられます。

デジタル化推進を支える事業者一覧

「デジタル化を進めたいけれど、どこに相談すればいいのかわからない」という方のために、水産庁では水産分野のデジタル化に取り組む事業者の情報を集め、一覧として公表しています。

IT企業や機器メーカー、大学、研究機関、自治体など50を超える事業者・団体を紹介しています。

現場のデジタル化を、国が技術だけでなく「人」の面からも後押ししていることがわかります。
水産庁「デジタル化に取り組む事業者一覧」

私が代表を務める長友国際法律事務所も、水産業に関する法務の分野でこの一覧に掲載されています。水産デジタル人材プロフィールシート(シート番号38)

デジタル化には、機器の導入やシステム開発、データの取り扱いなど、さまざまな契約がつきものです。

技術の専門家と法律の専門家、それぞれの力を組み合わせて、最適なデジタル化を進めていきましょう。

水産ブランディングセミナーのお知らせ

スマート水産業は、遠い未来の話ではなく、すでに全国の浜で動き始めています。

私のライフワークは、「豊かな海や川、湖を残しながら、水産業を発展させていくこと」。データの力で資源を守り、ベテランの技を次の世代へつなぐ。そんなスマート水産業の広がりを、法務の立場からこれからも応援していきたいと思います。

水産庁出身の弁護士、そして水産業経営アドバイザーとして、毎月水産業ブランディングセミナーを開催しております。ご興味のある方はぜひお申し込みください。

▼長友隆典 編著『水産業法務のすべて』はこちらから
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デジタル化に伴う機器導入やデータの取り扱いに関する契約、その他水産業に関する法律相談のご予約は、お電話またはお問い合わせフォームをご利用ください。

▼参考サイト
水産庁「デジタル水産業戦略拠点の取組について」
水産庁「デジタル化に取り組む事業者一覧」
水産デジタル人材プロフィールシート(長友国際法律事務所)
水産庁「令和6年度 水産白書(スマート水産業の推進等に向けた技術の開発・活用)」

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