
こんにちは、弁護士の長友隆典です。
「漁港でBBQができる」「漁師さんの船に乗って漁業体験ができる」
そんな話を、最近耳にしたことはありませんか?
実はこれ、水産庁が推進する「海業(うみぎょう)」という取り組みの一つです。令和8年3月時点で、全国110の漁港がこの海業に取り組む地区として動き出しています。
今回は、この「海業」がどのような制度で、なぜ今注目されているのか、基本的なことを解説します。
海業とは、海や漁村が持つ地域資源の価値や魅力を活かした事業のことです。
すなわち、地域資源の活用、水産業を補完しながら、国内外からの多様なニーズに応えることで、地域のにぎわいや所得・雇用を生み出すことが期待されています。
具体的には、次のような取り組みが海業にあたります。
これまで漁港は「魚を水揚げする場所」という役割が中心でした。
しかし、消費者のニーズが「モノを買う」ことから「体験する」ことへと移り変わる中、漁港ならではの景色や漁業文化そのものを商品化していこうという発想が、海業の根っこにあります。
なぜ今、水産庁がここまで海業を後押ししているのか。その背景には、漁村が抱える切実な事情があります。
漁村では、全国平均を上回るスピードで人口減少・高齢化が進行しており、漁村の賑わいをどう取り戻すかが大きな課題となっています。
こうした状況を受け、水産庁は令和4年3月に閣議決定された水産基本計画・漁港漁場整備長期計画において「海業等の振興」を明確に位置付けました。さらに令和5年5月26日には、漁港漁場整備法・水産業協同組合法の改正法が公布され、漁港を海業に活用しやすくするための法的な仕組みも整えられています。
つまり海業は、単なる「賑わいづくりのアイデア」ではなく、国の政策として法制度の後ろ盾がある取り組みなのです。
水産庁は「5年間でおおむね500件の漁港で新たな海業等の取り組みを実施する」という目標を掲げています。
これを受けて選ばれた「海業の推進に取り組む地区」は、令和6年3月の第1弾から令和8年3月の最新分まで、全国で合計110地区にのぼります。
北は北海道の漁港から南は沖縄まで、規模も内容もさまざまな取り組みが同時多発的に進んでいるのが特徴です。
水産庁では、これらの地区に個別のアドバイスや情報提供を行うほか、「海業支援パッケージ」として関連する各種施策をまとめた資料も公表しており、これから海業に取り組みたい漁業者・漁協・自治体・民間企業を後押しする体制も整いつつあります。
私は水産庁に勤めていた頃から、漁村の人口減少や後継者不足という課題を間近で見てきました。豊かな海と魚を未来に残すためには、資源管理のルールを守るだけでなく、漁業そのものが「稼げる産業」であり続けることも欠かせません。
海業は、漁港や漁村が本来持っている価値を掘り起こし、新しい形で経済に結びつけていく挑戦です。
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参考
水産庁「海業の推進」
水産基本計画(令和4年3月25日閣議決定)