
こんにちは、水産庁出身弁護士・水産業経営アドバイザーの長友隆典です。
現在、日本の水産業では、漁業者の減少と高齢化が大きな課題となっており、地域の基幹産業としての漁業の将来を不安視する声も少なくありません。
こうした状況を受け、水産庁では新規就業者の確保や漁業経営の改善など、さまざまな取り組みが進められています。
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令和6年版水産白書によると、日本の漁業就業者数は1980年代には約30万人規模でしたが、その後も減り続け、最新の令和5(2023)年には約12万人まで減少しています。
一方で、明るい兆しも見えています。
就業者全体に占める「39歳以下の若手」の割合が年々微増し令和5年には17.8%となっています。
これは、新規就業者(年間1,733人)のうち約7割をこの若い世代が占めていることが理由です。
完全な世代交代には至っていませんが、新しい担い手が少しずつ育ち始めているのが現状です。
しかし、地域によっては後継者不足で漁業の継続が難しくなるケースも依然として見られます。
漁業は天候や資源量の変動など自然条件に左右されやすく収入が不安定になりがちなうえ、近年の燃料費の高騰や設備投資の負担など、経営面での課題も山積みです。
こうした状況を踏まえ、水産業がこれからも続いていくためには、若い世代が安心して働ける環境づくりや、将来の担い手を確保していくことが、これまで以上に重要な課題となっています。
漁業者の高齢化や担い手不足の中、水産庁では新たな人材を確保するため、さまざまな支援制度を整備しています。
次世代の漁業を支える人材の確保のための水産庁の政策は、新規の漁業就業者を確保することが不可欠ですが、そのために「新規漁業者の確保・育成」、「水産教育」、「海技士等の人材の確保・育成」、及び「外国人材の受入れ・確保」を進めることとしています。
端的には大きく分けて「教育等による人材の育成」と「漁船で働く資格人材の確保」の2つを柱としていると考えられます。
参考情報:令和6年度水産白書 人材育成

水産業における長期的な人材確保のため、水産庁では、就業前から就業後まで段階的に支援する仕組みを設けています。
まず、漁業に興味を持った人が参入しやすいよう、就業相談会の開催や研修制度の案内などを通じて情報提供を行っています。
就業後の研修の機会として、漁業経営体に雇用されて経験を積む「雇用型」と、将来的に独立して漁業経営を行うことを目指す「独立型」の2種類の長期研修に補助があります。
| 雇用型 | 雇用型研修 (漁業経営体に雇用されて経験を積む) | 最長1年間 月額最大14.1万円 |
| 幹部養成型 (沖合・遠洋漁船などで将来の幹部人材を育成) | 最長2年間 月額最大18.8万円 | |
| 独立型 | 独立型研修 (将来独立して漁業経営を行う) | 最長3年間 月額最大28.2万円 |
さらに最終段階では、経営計画の実証を行う実践型研修もあり、年間最大150万円の支援を受けながら独立に向けた準備を進めることができます。
夜間や休日に漁業の知識や技術を学べる環境も整備され、働きながら学ぶことも可能です。
さらに漁船漁業の乗組員不足に対応するため、水産高校生を対象とした「漁業ガイダンス」を実施し、漁業者が水産高校に出向き、少人数のブース形式で生徒に対して漁業とその魅力等を説明しています。
このような段階的な支援により、新規就業者の確保だけでなく、漁業技術や経営力を備えた担い手の育成が進められています。
もう一つの柱は、漁船で働くために必要な資格人材の確保です。
漁船を運航するためには「海技士」という国家資格が必要ですが、受験資格を得るためには通常1〜2年程度の乗船履歴が必要とされるため、資格取得までに時間がかかるという課題があります。
このため水産庁では、数か月〜1年程度の乗船実習で乗船履歴を取得できる実習コースを支援しています。
受講生は乗船実習を通じて経験を積み、海技士試験の受験資格を得ることができる仕組みとなっています。
水産業では、上記の取り組みの他にも、女性や外国人など多様な人材の活躍も重要視しています。
水産業の発展を考えるうえで、女性の活躍推進は欠かせません。
これまでも女性は、加工や販売、地域活動の主軸として漁業を支えてきました。
しかしながら、水産業協同組合における女性の正組合員の割合は令和5年で5.4%、役員に至っては0.4%に過ぎません。
そのため国では、「海の宝!水産女子の元気プロジェクト」により水産業界における女性の繋がりを強化すること等により女性のとっての「水産業」全体の魅力向上を図ったり、「浜の活力再生プラン(浜プラン)」などを通じて、水産物を活用した特産品開発や直売所の運営といった、漁村コミュニティにおける女性の主体的な活動を支援しています。
また、仕事と家庭の両立を支える「子ども待機室」などの施設整備も進められており、誰もが働きやすい環境づくりが進められています。
漁業や水産加工の現場での人材不足を補うために、在留資格「特定技能(漁業・養殖業)」制度や、技能実習制度を活用した外国人材の受け入れも進められています。
特に遠洋漁業などでは長期間の航海となることも多く、日本人乗組員だけでは人手が不足するケースもあるためです。
地域コミュニティや漁協には、多様な人材との共生を支える役割が求められています。
参考情報:水産業の就業者をめぐる動向|水産庁
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