遺言書をいざ準備しようと思っても,何から手をつけていいのかわからない方が多いでしょう。
「まだまだ自分には関係ない」「そんなに残すような財産もないな」などと思ってしまう方も多いと思います。
長友国際法律事務所では,定期的に「遺言書の書き方セミナー」を開催しています。
遺言書は正しく作成しなければ,無効となってしまう可能性もあります。
残されたご家族が困らないために,きちんとした形で準備しておくことが大切です。
今回は遺言書の大切さについて,基本的なことを説明しましょう。
遺言書とはつまり,残された家族の方々に自分の財産の処分の方法について意思を伝えるものです。
遺言書が無い場合,人が亡くなったあと,相続人が被相続人すなわち亡くなった方の遺産を相続することになります。
たとえば,「遺産が現金1000万円」といったようなわかりやすい場合には,法律の相続分にしたがって相続人で分割するだけなので,大きなトラブルは起こらないでしょう。
しかし実際の遺産相続では,家や土地などの不動産があったり,宝飾品や車など価値のある物があったり,家族も知らなかった通帳や財産が見つかったりすることが多く,簡単に分けられないのが現実です。
さらに,たとえば被相続人の子どもが二人いた場合に,一人はほとんど音信不通状態,そしてもう一人は同居をしてずっと介護をしていた,といったようなケースがあるとします。
そこで相続の際に「兄弟なんだから遺産は半分ずつ分けよう」となれば,ずっと介護をして面倒を見てきた子どもからすれば,不公平に感じるでしょう。
亡くなられた被相続人としても,できれば世話になった子どもにたくさん財産を残したいと思うかもしれません。
しかし,遺言書の準備をする前に亡くなってしまった場合,法定相続分通り分割することになってしまうのです。
そこで,遺産の処分方法についての意思を伝えるのが,遺言書の存在です。
たとえば,遺言書に,ずっとお世話をしてくれた子どもに財産を多く残すような内容の記述があれば,遺留分などの法的に問題がない範囲で,その通りに手続きを進められるでしょう。
遺言書にはルールがあり,書き方に不備があると無効になってしまいます。
正しい形式で効力のある遺言書を準備することで,財産の残し方を生前に決めておくことができるのです。
遺言書にはよく使われるものとして「公正証書遺言」と「自筆証書遺言」の二種類があります。
「公正証書遺言」は,公正証書という形で残される遺言書であり,作成時は公証人が関与します。
遺言内容を公証人に口頭で伝え,公証人はそれを筆記して文章にする形で作るため,偽造や変造の恐れがありません。
また,法律の専門家が作成に関与しますので,法律上問題がある内容の遺言書の作成を防ぐことにも役に立ちます。
「自筆証書遺言」は,本人の自書による遺言書を言います。
公証役場に行く必要もないため,気軽に作成できますが,正しく作成しなければ無効になってしまうこともあります。
たとえば,「自筆」ということからもわかる通り,財産目録を除く全てを自筆する必要があります。
自筆でない場合は無効となります。
また,あまりに偏ったような内容であった場合,後に相続人同士でトラブルになってしまう可能性もあります。
たとえば,遺言書に「財産のすべてを○○に相続させる」というような内容であった場合,相続人同士で争いが起きてしまうでしょう。
よくドラマなどでこのような展開があるかもしれませんが,実はこれは無理のある内容なのです。
法定相続人のうち配偶者や子などには法律上「遺留分」というのが認められていて,遺言書の内容にかかわらず,最低限の財産を相続する権利があります。
このように「財産のすべてを一人に相続させる」といった内容の遺言書が出てきてしまうと,相続人同士で遺留分を争う裁判に発展する可能性があるのです。
ご自身で作成されるにしても,まずはきちんと効力のある正しい書き方であるか,家族をトラブルに巻き込むような内容ではないか,弁護士などの専門家に一度相談することをおすすめします。
関連記事:相続の基本は遺言書を遺すこと
相続のいろは第5回 「遺留分」を請求する方法
遺言者がこっそり遺言書を準備していた場合,死後に家族が見つけてくれなかったり,最初に見つけた人が,仮にその人にとって都合の悪い内容であった場合,偽造されたり紛失されてしまったりという危険性もあります。
そういったことを防ぐために,先述の「公正証書遺言」という制度があるのですが,近年法律が改正され,自筆証書遺言であっても法務局に預けることができる「自筆証書遺言書保管制度」というのがあります。
法務局に遺言書を預けると,遺言書原本は死後50年,画像データは死後150年まで保管が可能です。
法務局で安全に保管してもらえるというメリットに加え,自筆証書遺言において原則として必要となる家庭裁判所の「遺言書の検認」という手続きが不要になります。
また,遺言書のご本人が亡くなった際に,一人の相続人を指定して通知がいくようにすることができるので,遺言書の存在をきちんと知らせることができます。
さらに,一人の相続人が遺言書を閲覧したり証明書の交付を受けたとき,他の相続人にも通知が届くようになっています。
そのため,遺言書が保管されていることを全員が知ることができるのです。
長友国際法律事務所では,定期的に「遺言書の書き方セミナー」を開催しています。
このように相続についてお悩みの方はぜひセミナーにお越しください。
昨年の12月に引き続き「遺言書の書き方セミナー」を札幌市西区役所で開催します。
次回の開催日時は令和6年2月19日(月)午後2時からです。
ぜひ西区近隣の皆さんに限らず,遺言書について聞きたい,自分で書いてみたいという方は参加してくださるとうれしいです。
「遺言書の書き方」という名前のセミナーですが,その場で全員に書かせるとかそういうわけではないのでご安心ください。
「遺言書って必要なのかな?」「どんなタイミングで準備するべきなのかな?」など,そういった疑問がある方なども,気軽に参加していただけるセミナーです。
詳しくはこちら▶2月19日開催 遺言書の書き方セミナーのご案内
ラジオ番組『コトニ弁護士カフェ』
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