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ロシア・ウクライナ問題|戦争の理由と背景は

『コトニ弁護士カフェ』2022年3月11日放送分

現在問題となっているロシアとウクライナについて,日々状況が刻々と変化する中,報道でも連日のように痛ましいニュースが報道されています。

今回はロシアとウクライナの問題が起こってしまった経緯,過去の歴史的な関係など,長年ロシアとの深い関わりがある長友弁護士が解説します。

ウクライナという国について

ウクライナが建国されたのは1991年12月。
ソ連が解体されて誕生した「ウクライナ」は,まだ建国して30年の新しい国家のひとつです。
私がはじめてロシアを訪問したのも,旧ソ連が解体してからすぐの1993年でした。

ウクライナの背景からすると「やっとソ連から解放されて,独り立ちできる」という気持ちだったと思います。
元々ロシアはウクライナのキエフが発祥の地ということから,ロシアとは違うという気持ちが強かったでしょう。

ウクライナ独立後は積極的に民主化を進め,西側に近づいてきていました。
その後の出来事を時系列でお話しすると以下の通りです。

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1994年 ウクライナを含めた旧東側諸国はNATOとの連携を深めるために「平和のためのパートナーシップ」を創設。
    その後,この組織からNATOへの加盟国が増えることとなります。
2003年 ジョージアでバラ革命,2004年ウクライナでオレンジ革命,選挙結果への抗議運動
2008年 ウクライナとジョージアがNATO加盟に向けて動き出す。
    ウクライナはEUとの協議を開始
2014年 キエフの独立広場で、EUとの協議を先送りにしたことで抗議デモ、100名以上が死亡。
    ロシア派のヤヌコビッチ大統領はロシアに亡命。
2014年 3月,ウクライナ東部の広大な地域をロシアが占領し,クリミア半島はロシアに併合される。
    ※今回と同じく,冬季オリンピックの直後

今回の戦争と共通している点として、ロシアのソチオリンピックの機会を狙ってやっていることがわかります。

2014年 4月,ウクライナ東部のドネツク州とルガンスク州の一部をロシア派性両区が選挙
2015年 停戦協定「ミンクス合意」が成立。
    戦争は鎮静化したものの、2021年末までに計1万3000人が犠牲になっている。
2019年〜2020年 ウクライナはNATOとEUへの加盟を目指す憲法改正案を可決。

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上記のことから,独立後もウクライナはずっとロシアの影響から逃れ,本当の意味での独立国家を目指してきたのが分かります。

ロシアから見た「辺境:ウクライナ」

ロシアはウクライナを「州のひとつ」のような感覚で捉えてきました。
日本でいうと,ウクライナのキエフは京都や奈良のような感覚で,モスクワは東京のような感覚に近いです。

まず,「ウクライナ」という言葉を日本語に訳すと「辺境」や「果て」という意味になります。
ロシアから見ると、辺境の場所という位置づけなのです。

たとえばロシア語では,「日本へ行く」は「Я еду в Японию.」,「アメリカへ行く」は「Я еду в США.」というのですが,ウクライナに行くは「Я еду на Украину.」と言います。

この違いは,日本やアメリカの場合は「国境」を表すBという前置詞がつくのに対し,ウクライナの場合は「方角」を表すHAを使うという点。
このことから,ロシアがウクライナを国として認めていないことが暗に感じられます。

元々ロシアとウクライナは同じ民族でした。
しかし,モンゴルのチンギスハンが侵攻した時にロシア帝国の元となったキエフ大公国が滅亡してしまったという歴史は有名な話です。

ウクライナにとってロシアの存在とは

一方ウクライナ側は,ロシア語のオリジナルはウクライナというような気持ちがあり,文化的な優越感があるようです。
また,ウクライナは民主化運動がかなり進んだため,プーチンが独裁しているロシアより,もっと民主的なヨーロッパ寄りとの気持ちが強くあります。

私が最初にアメリカに留学していた際,いつもロシア人グループと一緒にいたのですが,その中にはウクライナ人もいました。
今は少し違うかもしれませんが,そのときもやはり「俺はロシア人とは違う」という雰囲気が出ていました。

しかし,旧ソ連の国のカザフスタン,アゼルバイジャンなどからも留学生がいましたが,みんなロシア語で会話していたのが印象に残っています。
そしてほとんどのロシア人以外の国の人が「旧ソ連に戻りたくない」というような雰囲気でした。

一方でロシア人はやはり旧共産国の盟主だったという感覚があるようですが,ロシアの経済は弱かったため政治も混乱していて,当時はそのギャップが悲しそうにも見えました。

NATO加入を阻止したいロシアの思惑

ロシアの目的として、このような文化的・歴史的な背景の他に,地理的・軍事的な要因が出てきます。

ウクライナがNATOに入ると,ロシアの黒海の艦隊が全部アメリカに筒抜けになります。
ロシアはこれを軍事的に大きな問題ととらえているようです。

北国であるロシアは,冬になるとほとんどの港が凍ってしまいます。
数少ない凍らない港が黒海のソチあたりにあり,黒海沿岸の多くがウクライナに面していることも要因として考えられます。

かつてアメリカで起こったキューバ危機を思い出してみてください。

ソ連がアメリカのすぐ裏庭にあたるキューバに核ミサイルを配置するという動きをみせたところ,アメリカのケネディ大統領は核戦争も辞さないという強い姿勢を見せました。
いわゆるキューバ危機ですが,このときは核戦争寸前にまでいったと言われています。

今回の件と似たような事案と言えるでしょう。そのためにロシアは8年前にクリミア半島をとったと言われています。

一刻も早い平和的解決を願う

どんな理由があろうとも,戦争は悲しい事実です。
一日も早い終結を心から願っています。

ラジオ番組『コトニ弁護士カフェ』
毎週金曜日10時30分から三角山放送局で放送中!
隔週で長友隆典護士&アシスタントの加藤がお送りしています。
身近な法律のお話から国際問題・時事問題,環境や海洋のお話まで,様々なテーマで約15分間トークしています。
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