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ロシアの行動と国際法について国際弁護士が解説|パリ不戦条約違反になるのか

『コトニ弁護士カフェ』2022年3月25日放送分

現在問題となっているロシアとウクライナについて,未だ収束が見通せない状況に,多くの人が胸を痛めているでしょう。
ロシアの行動は「国際法違反」といわれていますが,実際にはどのような国際法があるのかなど今回はさらに法律的な視点から,国際法に詳しい長友弁護士が解説します。

現在のロシア情勢は?

現在のロシア情勢についてですが,表向きは両国間で停戦交渉が続いているようです。

しかし,ロシアはウクライナに対して「非武装化」や「中立化」,そして2014年に占領したクリミア半島の領有の承認や親ロシア派の東部の地域の領有といった「絶対に飲めない条件」を主張しています。
これに対してウクライナは徹底抗戦を掲げた上で,ウクライナからの即時撤退を求めているという状況です。
そのため,現在まで停戦協議が幾度となく行われていますが,まだ合意していません。

さらに,日本やアメリカ,EUなどのいわゆる西側諸国が経済制裁などをする一方で,中国がロシアに対して事実上の支援を表明していたり,インドが限定的にロシアから石油を輸入することを検討したり,国際社会でも混沌とした状態となっています。

戦争放棄に関する「パリ不戦条約」

かつての第一次世界大戦に対する反省から,二度とこのような過ちは犯さないという表明として,1921年に国際連盟が作られました。
その後,1928年に戦争放棄に関する「不戦条約」が制定。
フランスのパリで調印されたことから「パリ不戦条約」とも呼ばれ、制定して100年近く経ちます。

この不戦条約の1条と2条には,「締約国は、国際紛争解決のために戦争に訴えることを非難し,かつ,その相互の関係において国家政策の手段として戦争を放棄する」「相互間に発生する紛争又は衝突の処理又は解決を,その性質または原因の如何を問わず,平和的手段以外で求めないことを約束する。」と記載されています。

実は,憲法9条と同じような内容になっているのです。要するに,戦争放棄です。

不戦条約では,紛争解決のために武力を用いないということを国際社会で決められています。

ロシアによるウクライナ侵攻は、パリ不戦条約違反?

答えはもちろん,不戦条約違反といえます。
ウクライナとの国際紛争を武力で解決しようとしている時点で条約に違反しています。
国連憲章でも第2次世界大戦の反省を踏まえ,2条4項で武力による国際紛争の解決を明確に禁止していますね。

すべての加盟国は、その国際関係において、武力による威嚇又は武力の行使を、いかなる国の領土保全又は政治的独立に対するものも、また、国際連合の目的と両立しない他のいかなる方法によるものも慎まなければならない。

国際連合憲章

ただ,違反した際の制裁も盛り込まれましたが,個別的自衛権や集団的自衛権の行使は禁じられておらず,現実にはそのような名目で各地で戦争が起きています。
また,核兵器の使用を禁止した核兵器禁止条約もありますが,アメリカやロシアなど核保有国が参加しておらず,実効性を疑問視する声もあります。

法的に正しい手段でロシアを止める手立てはあるのか

プーチンの違法行為に対して国際世論一致団結して抗議をするということがまず必要です。
それに加えて,昨今話題になっている「経済制裁」などを効果的に実施することでプーチン政権に対して圧力を加えること。

武力による参入を叫ぶ人もいますが,武力をもって支援することで戦闘が拡大し,民間人にさらに被害が及ぶことが懸念されています。
ウクライナを支援しても,ロシアに対抗するために武器などの購入に使われるのであれば,それは戦いをさらに激化させることになり,もっと多くのウクライナ市民,ウクライナ兵,ロシア兵の命を奪うことにもつながってしまうのです。

そのため,現状では「国際世論が一致団結して抗議し,経済制裁などを効果的に実施することでプーチン政権に対して圧力を加える」ことが一番有効なのかもしれません。

国家を憎んで人を憎まず

アメリカやヨーロッパ,日本企業なども,各企業でロシアでの経済的な活動をストップするところが増えてきました。
ここからは個人の考えになりますが「国家を憎んで人を憎まず」だと思っています。
現在,日本に住んでいるロシア人への差別的な態度なども少しずつ問題になってきてしまっていますが、それはやっぱり許されることではないと思っています。
ロシアという国がウクライナを攻撃しているというのは,ロシア国民全員の想いを反映させているわけではありません。
そういった意味では,ロシア国民もある意味被害者といえます。

いまロシア国内でも物流が途絶えたりお金が下ろせなかったり,正しい情報が手に入らなかったり,混沌としていると思います。
亡くなったロシア兵もいるでしょうし,好きで戦っている兵士なんていないかもしれません。
だからといって,ロシアは悪いけどロシア国民は悪くないからロシア国民も支援しよう,という態度をとると,企業や国家としては誤解を招く可能性があるでしょう。

もちろん,罪のないウクライナ国民の多くが犠牲になっていることは許されることではありません。

ロシアによる対抗措置も問題に

過度な経済制裁をすることでロシア側も対抗策を検討しています。

驚くことに,ロシアも建前上は民主主義国で,土地などの不動産を個人や外国人が所有することも保証されていたはずなのですが,経済制裁に対抗して,ロシアから撤退する外国企業の財産を国有化する法律を制定することを検討しています。
日本企業のトヨタやニッサンも工場を持っていますが,撤退するとロシア政府に没収される恐れがあります。
しかし,日本とロシアの間には日露投資協定というのがあり,お互いの企業の財産を没収することは禁止されており、国際協定違反禁止で損害賠償請求の対象になるのです。

今、国連ができることは

本来は,このような戦争や侵略行為に対する対抗措置は国連の安全保障理事会で決定します。
その際,国連軍などによる武力による制裁も可能なのですが,ロシアが常任理事国として拒否権を有しているため,国連は事実上何も出来ないというのが現実です。
国連の機能不全や欠陥が炙り出される瞬間です。

いろいろな国際法的な問題もありますが,まずは国際世論/国際社会が一丸となって戦争終結に向けて力を合わせていければと思います。

ラジオ番組『コトニ弁護士カフェ』
毎週金曜日10時30分から三角山放送局で放送中!
隔週で長友隆典護士&アシスタントの加藤がお送りしています。
身近な法律のお話から国際問題・時事問題,環境や海洋のお話まで,様々なテーマで約15分間トークしています。
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三角山放送局 reqest@sankakuyama.co.jp または当事務所のお問い合わせフォームでも受け付けております。

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