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除雪トラブルについて|民法717条1項について弁護士が解説

『コトニ弁護士カフェ』2022年2月25日放送分

雪がたくさん積もるとやらなければならないのが雪かきです。
現在はロードヒーティングになっているところも増えましたが、それでも溶かしきれない雪は除雪機や人の手で除雪しなければなりません。
今回は,雪国で身近に起こる除雪のトラブルについて,関係する法律を紹介しながら解説します。
それぞれに該当する法律や対応について解説しましょう。

ケース①誰かが除雪した雪を自分の土地に捨てていった場合

雪が積もり,誰かが除雪した雪を自分の敷地内へ捨てていったとき。
この雪は誰が捨てていったのか,そもそも雪は誰のものなのか?というところが気になります。
雪とは,法的には誰のものでもなく、法律用語でいうと「無主物」という扱いとなります。

1.所有者のない動産は、所有の意思をもって占有することによって、その所有権を取得する。
2.所有者のない不動産は、国庫に帰属する。

民法第239条(無主物の帰属)

一般的に「不法投棄」を思い浮かべるかもしれませんが、雪は誰のものでもないので,不法投棄にはなりません。
このようなケースには、捨てられたほうの土地の所有者が「妨害排除請求」することができます。

雪に限らず、誰かが自分の土地にものを捨てて侵害・妨害したのであれば,捨てた人に対してそれを除去するように要求することができます。

捨てていった人が明らかで、現場を目撃した場合は,「私の土地だから捨てないで欲しい。捨てた雪を持って帰ってほしい」と声をかけるのが有効です。
しかし,声をかければ何をされるかわからないし,トラブルが怖いという方は,事前に写真や動画を撮影しておいて,警察や行政機関,弁護士に相談することが大切です。

ケース②隣の家の屋根から雪が落ちてきた場合

次に,隣の家の屋根に積もった雪が落ちてきたケースについて考えてみましょう。
住宅街など,家が密接して建ち並んでいるようなエリアで起こる可能性があります。

この場合、隣人の方は雪を自分で捨てたわけではないため「捨てないで」ということはできません。
しかし,屋根に積もった雪が他人の敷地に落ちて損害を与えないように気をつける義務があります。
これは民法717条1項で定められた法律上の義務です。


1.土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。
ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない。

2.前項の規定は、竹木の栽植又は支持に瑕疵がある場合について準用する。

3.前二項の場合において、損害の原因について他にその責任を負う者があるときは、占有者又は所有者は、その者に対して求償権を行使することができる。

民法第717条

また,落ちてきただけならまだいいのですが、たとえば固まった雪が落ちてきて人にぶつかってケガをさせてしてしまうというケースもあるでしょう。
その場合も,やはり適切に除雪をしていなかったことが原因になります。

家の所有者には屋根などに積もった雪が隣地や道路に落ちないように気をつける義務があるため,屋根の雪が歩行者の上に落ちて大怪我をさせてしまった場合は,その人に対して損害賠償をしなければならなくなる可能性もあるでしょう。

ケース③近所の人が雪を道路に捨てて、車が通れなくなった

中には,他人の敷地ではなく,道路に雪を捨ててしまう方もいます。
道路の場合、それが公道であれば、道路交通法や道路法が適用される可能性があります。

何人も、信号機若しくは道路標識等又はこれらに類似する工作物若しくは物件をみだりに設置してはならない。

道路交通法第76条

何人も道路に関し、左に掲げる行為をしてはならない。

道路法第43条第1項

車が通れないほど交通を阻害しているのであれば、雪を道路にかきだした人に片付けてもらうのが最善です。
しかし,道路にかきだした雪のせいで大渋滞してしまっているのであれば、臨機応変にその場にいる人たちで道路の雪を片付けるしかないでしょう。

どうしても収集がつかない場合は、警察に相談するのもひとつの手段です。
ただし,警察が駆けつけたからといって除雪してくれるわけではないので、その場の状況で判断するしかありません。

雪は無主物となり、ケースによって法的扱いが異なる

以上、除雪トラブルによる法律問題についてご紹介しました。
近隣の除雪に関することにお困りで対応の仕方が分からない場合は、弁護士にご相談ください。

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