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相続のいろは第9回|こんな時は弁護士に相談しよう③

「相続のいろは」シリーズでは,遺言書から裁判手続きまで,相続に関わる法律の紹介や,弁護士がお手伝いできることなど,相続に関するお役立ち情報をお届けしています。
今回も前々回から引き続き,相続に関するさまざまなご相談を紹介してきました。
実際のご相談内容と解決事例を聞いていただくことで、より相続を身近に感じていただけるかなと思います。
では今回も2つの解決事例を紹介していきたいと思います。

ケース① 代々住み続けた家の土地が見知らぬ人物の所有地だった事例
ケース② 父から相続した「山」が他人の登記名義だった事例

ケース①代々住み続けた家の土地が見知らぬ人物の所有地だった事例

相談前
現在住んでいる家は,もともと祖父が住んでいた家を50年前に父親が新しい家に建て替え、同じ土地で3世代に渡って住んでいます。しかし,登記情報を調べたところ,登記上の所有者が聞いたこともない知らない人物であることが発覚。祖父の代から100年以上住み続けた土地ですが,登記上の所有者に返さなければならないのかわからなかったため,弁護士さんに相談しました。

相談後
祖父がその土地に住み始めてから既に100年以上経過していること,占有を開始した時期や,占有している間も固定資産税を納付するなど所有者として当然の義務を果たしていたことから「取得時効による所有権移転登記」を求める訴訟をすることを弁護士さんから提案いただきました。いつからどのような経緯で現在の場所に住み始めたのかを調べていただき,無事に登記上も自分が所有者として登記をすることができました。

※取得時効・・・他人の土地や不動産を一定期間占有していた場合,所有権を取得できるという制度

一つ目のケースは,代々住み続けていた土地に関するトラブルです。
このケースは相続問題とは少し違うのですが,相続でも土地や建物の登記を相続人に変更する手続きが発生することが多いので,今回は関連した事例ということで紹介いたします。
実はけっこう昔だと時々あることで,口約束のような,きちんと契約や登記をせずに,個人間で物をやり取りしたり,今回のように不動産をやり取りしたり,地域や文化によってそういったことが行われていたこともあるのでしょう。
また,家屋が入り組んでいるような地域では,きちんと境界の測量がされていないなど,隣人との境界が曖昧なままというケースもあります。

そのような時はぜひ弁護士に相談していただきたいのです。
取得時効の期間や要件はケースによって異なりますし,裁判手続が必要になる場合もありますので,このような問題が起きた場合は、弁護士にご相談ください。

ケース②父から相続した「山」が他人の登記名義だった事例

相談前
父から相続した「山」で林業をしていましたが,歳をとって林業を続けることが出来なくなりました。そこで他人に山を売却しようとしたら,実は他人の登記名義で売却ができませんでした。どうしたらいいかわからず,弁護士さんに相談しました。

相談後
弁護士さんに登記上の所有者の戸籍を調査していただき,その相続人に対して時効取得の裁判を行なって登記を変更してもらうという手続きを取ってくださいました。さらに「取得時効による所有権移転登記」を求める訴訟をすることを弁護士さんから提案いただき,他人名義の相続人が何人もいたため少し大変でしたが,結果として手間をかけて手続きを取ることができました。

こちらのケースでも、さきほどと同じように「取得時効」を主張することになります。
このときは,他人名義の相続人が何人もいましたので,かなり苦労した覚えがあります。
それとは反対に,すでに亡くなっている夫名義の土地に他人が占有している場合もありました。
この場合は,もうその土地は相続人である奥様ご本人は使わないということで,事実上の譲渡代金として解決金をいただいて,登記名義を占有者に移転する手続きをしたのですが,これも一旦,亡くなった夫から奥様へ相続をして譲渡する必要があります。

不動産の相続は原則として「登記の名義」をもとにして行いますので,ご自身がお住まいになっていたり、占有している土地の登記上の名義を確認することはとても大切なことです。
特に,ご両親の代から使っていた土地や建物が,本当にご両親の名義になっているのか?ご両親や配偶者の名義になっている土地はどれだけあるのか?ということを,ご両親や配偶者の生前に確認されることをお勧めいたします。
もし,他人名義の土地や建物にご両親がお住まいだったり,ご両親名義の土地が誰かに占有されていた場合は,ご両親がご健在のうちに,その土地や建物を取得した経緯や,売買契約書があればそれを確認し,その相手方に対して移転登記手続きを求めることが得策です。
仮に,ご健在のうちに手続きが間に合わなく,お亡くなりになった場合でも,そのような経緯や売買契約書があれば,登記上の名義者に対して移転登記手続きや時効取得を主張する場合の重要な証拠となります。

土地の相続の疑問は専門家に相談しましょう

自分が生まれ育った家であれば,当然両親の名義なんだろうと漠然とは思っているものの,何か機会がなければ登記簿を見ることなんてないかもしれません。
登記簿謄本は法務局で管理されています。
その土地建物が所属するエリアの法務局か,現在ではオンラインでも請求することができます。
また,自分名義の不動産がいったいいくつあるのか,どこにあるのか分からなくなっても,市役所や町役場にいけば登録してあることが原則なので確認できます。
いずれにせよ,登記名義が実際の占有状態と違う,亡くなった父の登記上の土地を他人が占有しているというように「登記情報と現実が違う」ということがわかった時点で,それは迷わず弁護士にご相談することをお勧めいたします。

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