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セルフレジに注意!万引きの増加と対策|弁護士が解説

『コトニ弁護士カフェ』2022年11月4日放送分

近年,スーパーやコンビニで「セルフレジ」の普及が進んでいます。
セルフレジの台数が多い大手スーパーなどでは,待ち時間が短くなったり,お店にとっても人件費の削減につながったりと,多くのメリットを持ちます。
また,コロナが流行して非対面・非接触という点でも,ここ数年でセルフレジの普及率はかなり上がったようです。
しかし,便利な反面,万引きのような犯罪の温床にもなっているのが現状です。

今回は,そんな便利なセルフレジに潜むデメリットと,万引きに関係する法律についてご紹介します。

便利なセルフレジが悪用されてしまうケース

使ったことがある方はわかると思いますが,セルフレジを利用する場合,購入する商品をひとつずつ,全て自分でスキャンする必要があります。
セルフレジにエコバッグまたは購入したレジ袋をセットして,購入するものをスキャンして入れます。
スキャン前とスキャン後で重量を量って,スキャン漏れを防いでいるんだと思いますが,それでも商品をスキャンせずにそのままマイバッグに入れてしまう,つまり「万引き」の温床になっているのです。
万引きはそもそも会計前の商品をこっそりと自分の鞄などに入れて盗む行為,つまり窃盗というれっきとした犯罪行為です。
セルフレジの場合,店員さんは近くにいても,何台もあるセルフレジを見ているため,目が届かないケースもあります。
スキャンするふりをして,そのままマイバッグに入れる,ということが,簡単にできてしまうわけなんです。

セルフレジによる万引きは判断が難しい

セルフレジでは,全てのお客さんがきちんと全商品をスキャンしているかどうかまではチェックできないでしょう。
レジの機械自体にカメラがついている機種もあり,防犯カメラの映像などで発覚することがあるのですが,そこで問題なのがスキャン漏れが,故意によるものなのか,過失なのか,判断が難しいという点です。
これは万引きの罪(窃盗罪)が成立するためには,窃盗とする故意が必要だからです。
通常の万引きであれば,会計前にこっそり自分のバッグなどに入れていれば「会計をし忘れた」という言い訳はなかなか通用しません。
しかし,セルフレジの場合は「うっかりスキャンを忘れました」と言われると,お店側として万引きと判断するのは難しいと思います。
例えば、バーコードがついてない商品,生果(生の野菜)のバラ売りや,パンや惣菜などの場合は,スキャンではなく,タッチパネルを操作して,該当する商品を自分で探して,商品を追加しなければなりません。
入力の仕方がわからなくて後回しにしたところ,そのまま忘れて持ち帰ってしまった,というケースもあるようです。
慣れていない人の場合,バーコードがあるのかわからなかったり,バーコードがない商品もありますし,手間取ってしまう場合があります。
さらに混んでいる時間帯で後ろに行列があったりすると,早くしなきゃという焦った気持ちも生じてしまい,ミスをしてもおかしくない状況になってしまいます。
そのため,故意による万引きなのか,単なるスキャンのミスなのかは,お店側の判断によって決まるのです。

■うっかりミスで逮捕→裁判になったケースも

本当にうっかりミスだとしても,お店側が「万引きだ」と判断した場合は,現行犯で逮捕されてしまいます。
それで裁判となり,窃盗罪に問われたものの,裁判では「精算を忘れても不自然ではない状態だった」という判断で,無罪になったケースもあります。
本当にただのミスでも,窃盗罪に問われて裁判にまで発展することがあるのです。

セルフレジによる「万引き」に関する法律

万引きとは,つまり「窃盗罪」です。刑法上の窃盗罪(刑法第235条)に該当する行為にあたります。

第235条(窃盗)
 他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

その場でお店側に商品代金を支払うなどして示談になるケースもあるとは思いますが,お店が万引きと判断して警察を呼んでしまうと,そのまま取り調べを受けることになります。
実際には初犯であったり,あまり悪質ではないと判断されは場合は起訴猶予になることもあるとは思いますが,うっかりミスでこのような事態になるのは避けたいところ。

また,お店側が気がつかなかったものの,スキャンをし忘れた商品をうっかり自宅に持ち帰ってしまい,あとから気がついた,というケースもあるかもしれません。
レシートを確認すれば,精算されていないものはわかりますよね。
実はこのとき「ラッキー」といってそのままもらってしまうのも犯罪になる可能性があるんです。
「占有離脱物横領罪」といいまして,簡単に説明すると,他人のものを自分のものにしてしまう,という罪ですね。
本来はお店の所有物であり,対価であるお金を払わずにそれを占有すると,そういった罪に問われる可能性もありますので,気をつけてください。

刑法254条(遺失物等横領)
遺失物、漂流物など占有者の意思に反して占有を離れた物品を横領する罪。1年以下の懲役または10万円以下の罰金もしくは科料(1000円以上1万円未満の金員の支払)に処する。

セルフレジによる「うっかり万引き」を防ぐための対策

まず万引きを防ぐためには,お店側がスタッフの配置を増やすとか,防犯カメラがあることをしっかり張り紙して伝えておくとか,できることがあると思います。
あとは,購入する商品の数が少なければいいですが,数が多いとミスも増えやすくなると思いますので,たとえば買い物カゴ1個分を超える量の買い物をする人は,有人のレジにするなど,購入する量や金額によってお客様を分けて誘導することも有効かもしれません。


私たち買い物する側が気をつける点としては,たとえばスキャンしたかどうかわからなくなったとか,バーコードがなくて商品が追加できないとか,ちょっとでも不安になったときは,すぐに店員さんに確認するようにしましょう。
店員さんが忙しそうだからとか,はやく買い物を済ませて帰りたいとか,いろいろと事情があると思いますが,万引きに間違われて警察沙汰になるよりは,ちょっと時間を要しても,ミスのない会計を心がけるようにするのが得策です。

最近では,カートに決済用のタブレットやスマホを設置して,カートに商品を入れると自動的に決済するようなシステムもあるようです。
このような自動システムはどんどん進化していくでしょう。
しかし,どんなことにもデメリットはつきものです。
サービスを提供するお店側も,買い物で使う側も,予期しない犯罪に巻き込まれないような万全のシステムを構築して欲しいと思います。

ラジオ番組『コトニ弁護士カフェ』
毎週金曜日10時30分から三角山放送局で放送中!
隔週で長友隆典護士&アシスタントの加藤がお送りしています。
身近な法律のお話から国際問題・時事問題,環境や海洋のお話まで,様々なテーマで約15分間トークしています。
皆様からの身近なお悩み,ご相談などのリクエストもお待ちしております。
三角山放送局 reqest@sankakuyama.co.jp または当事務所のお問い合わせフォームでも受け付けております。

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