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お花見の場所取りは違法?迷惑防止条令と不法占有について解説

『コトニ弁護士カフェ』2023年4月28日放送分

今年の桜前線は異例の速さで北上しており,札幌ではちょうどGWあたりにお花見が楽しめそうです。
新型コロナウイルス感染症の感染拡大から,およそ3年ぶりの本格的なお花見とのことで、GWを心待ちにしている人も多いでしょう。
この時期になると気になるのが,お花見客のマナー違反に関してのニュースです。
今回は「お花見の場所取りは違法になるのか」という疑問をはじめ,お花見のマナーについて詳しくお話しをしたいと思います。

お花見の場所取りはマナー違反?

お花見は日本の春の風物詩の一つであり,多くの人々が楽しみにしている行事です。
しかし,お花見の場所取りについては,地域によって罰則が存在することを知っておきましょう。
たとえばお花見の場所取りを,対価を支払って第三者に頼んだり,引き受けたりする行為は「迷惑防止条令」に違反する可能性があるのです。
迷惑防止条例とは,都道府県が定めた法令で,公衆に著しく迷惑をかける行為を防止することを目的としており,迷惑防止条例に違反すると,罰則が課せられるケースもあります。
過去には,お花見の場所取りによって逮捕された例もあるため,違法であると認識される行為を予め知り,避けることが大切です。

例として,北海道迷惑防止条例の該当する部分を紹介いたします。

北海道迷惑行為防止条例第7条(座席等の不当な供与行為(ショバヤ行為)の禁止)
何人も、公共の場所又は公共の乗物において、不特定の者に対し、座席、座席を占め るための列の順位又は駐車の場所(以下「座席等」という。)を占める便益を対価を得て供与 し 、又は座席等を占め、若しくは人に勧誘して座席等を占める便益を対価を得て供与しようとしてはならない。

北海道迷惑行為防止条例

要するに,場所取りをするためにお金などの対価をもらったりしたら,迷惑防止条例違反になるということですね。

お花見でマナー違反・違法となる行為

お花見や花火大会など,イベントでの場所取りは,日本では一般的であり,文化としても浸透しています。
しかし,行き過ぎた場所取りはマナー違反となり、場合によっては違法になることも。
過去のニュースを交えながら,どのような行為が罰せられるのかを解説しましょう。

■過度な場所取り行為

お花見で事前に場所を確保するのは一般的ですが,公共施設である公園や河川敷などにおいて,管理者の許容する範囲を大きく超えてスペースを確保する行為は,違反となる場合があります。
過去には,東京の企業がお花見のために1週間前から2カ所に大きなシートをガムテープで貼り付けて場所取りをしたことが,ネット上で炎上して話題になりました。
また,数日前から確保するだけでなく,必要以上に広いスペースを取るのも違反行為になります。

■カラースプレーを使用した場所取り

カラースプレーを使って芝に線を引いたり,名前を書いたりして場所取りをする行為は,「器物損壊罪」になってしまうケースがあります。

刑法第261条:器物損壊罪(きぶつそんかいざい)
他人の所有物または所有動物を損壊、傷害することを内容とする犯罪。

器物損壊罪は「3年以下の懲役または30万円以下の罰金もしくは科料」が課せられるので、注意しましょう。

■許可されていない場所での場所取り

有名なお花見スポットなどは,あらかじめお花見ができるエリアを管理者が決めている場合が多いでしょう。そのため,管理者が場所取りを許可していないところで場所取りをすると,「不法占有」という違法行為に該当します。

不法占有とは,法的な権利がない状態で土地や建物を占拠していることを指し,損害賠償を請求される可能性があります。

明らかなマナー違反でも、第三者は手出しできない

一方で,明らかな違反行為による場所取りであっても,第三者(他の利用者)の手で無断でシートを撤去することはできません。
勝手に撤去した場合は,民法709条の「不法行為」に該当してしまうケースがあります。

民法第709条:不法行為(ふほうこうい)
故意または過失によって他人の権利または法律上保護される利益を侵害した者は,これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

したがって,明らかに周りの人が迷惑している場合には,直ちに管理者に相談するのが得策でしょう。

お花見の場所取りで気を付けること

お花見の場所取りは,開催規模や開催場所の規則によって異なりますが,当日の朝もしくは前日の夜から行われる場合が多いです。
しかし,必要以上に広い範囲の場所を取らないこと,長期間の場所取りはしないことが基本です。
開催場所によっては,ブルーシートを敷くだけで場所取り完了とする場合もありますが,法的には無効となります。
お花見の場所取りに関しては,あらかじめ開催場所のルールを確認し,それに従うようにしましょう。

桜の枝を折る行為は違法になる!

綺麗な桜の花を,少しだけ記念に持ち帰って家に飾りたくなる方もいるでしょう。
桜の枝を折って持ち帰る行為も,実は違法となります。
桜の木にはそれぞれ所有者が定められており,その枝を勝手に折る行為は,他者の所有物を傷付けることになるので,器物損壊罪に該当してしまいます。

さらに,公園が国の設置する都市公園であった場合は,都市公園法第11条第2号で,花や枝を切った場合は処罰の対象となっています。
この場合は10万円以下の過料に処されることになります。

都市公園法
第11条(国の設置に係る都市公園における行為の禁止等) 
国の設置に係る都市公園においては、何人も、みだりに次に掲げる行為をしてはならない。
1 都市公園を損傷し、又は汚損すること。
2 竹木を伐採し、又は植物を採取すること。
3 土石、竹木等の物件を堆たい積すること。
4 前三号に掲げるもののほか、公衆の都市公園の利用に著しい支障を及ぼすおそれのある行為で政令で定めるもの

このような法律違反に関わらず,特に,ソメイヨシノという品種は,枝を切ってしまうと木が衰弱してしまう恐れがありますので,綺麗な桜を見るためにも,木の枝を切ったり折ったりする行為は避けましょう。

お花見はマナーを守って気持ちよく楽しもう

お花見は,家族連れの方も多く,子どもたちが悪気なく枝を折ってしまうことも珍しくありません。
場所取りに限らず,うっかり迷惑行為や違法行為をしてしまわないように,親御さんはお子さんにしっかりとマナーを伝えておきましょう。
まずは大人の私たちがマナーを守り,子どもたちにとってお手本となるように意識して行動しましょう。
皆さんが気持ちよくお花見ができるように、マナーを守って楽しんでいただきたいです。

ラジオ番組『コトニ弁護士カフェ』
毎週金曜日10時30分から三角山放送局で放送中!
隔週で長友隆典護士&アシスタントの加藤がお送りしています。
身近な法律のお話から国際問題・時事問題,環境や海洋のお話まで,様々なテーマで約15分間トークしています。
皆様からの身近なお悩み,ご相談などのリクエストもお待ちしております。
三角山放送局 reqest@sankakuyama.co.jp または当事務所のお問い合わせフォームでも受け付けております。

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