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成人年齢が18歳に引き下げ!懸念点とメリットについて弁護士が解説

『コトニ弁護士カフェ』2022年4月22日放送分

2022年4月,明治時代から140年ぶりに成人年齢が変わりました。
これまで常識だった「ハタチで成人式」というのも、これからは18歳で成人ということになります。
成人年齢の引き下げによって何が変わるのか,また懸念される点とメリットについてお話しします。

成人年齢が18歳に引き下げることになった背景

近年,2016年の公職選挙法改定で選挙権の年齢が18歳になったり,国民投票の投票権も18歳になったりと,18歳から国の意思決定に関わるようになってきたことが背景にあります。
この頃から「18歳から大人として扱われるのであれば,成人年齢も18歳にしよう」という議論がされてきていました。
実際に外国を見ると,アメリカのほとんどの州や(州によっては19歳・20歳のところもあります),イギリス,フランス,ドイツなど主要な先進国では,成人年齢を18歳としているところが多くあります。

成人年齢引き下げで変わること

そもそも成人とはどのような状態を指すのでしょうか?
法律的には「一人で契約ができる」「父母の親権に服さなくなる」といった面が挙げられます。
これまでは,20歳未満である18歳も19歳も未成年ということで,親権者である親の同意を得ないで契約をした場合,親が契約を取り消すことが可能でした。(民法5条)
つまり,これまでは18・19歳でも事実上契約を締結する権利がなかったと言っても過言ではありません。
ところが,成人年齢が18歳になったことで,親の同意なく契約行為を行うことができるようになりました。
例えば,身近なものであればクレジットカードや携帯電話の契約が可能になります。

■唯一引き上げられた女性の婚姻年齢

そんな中,今回唯一引き上げになったのが「女性の婚姻可能な年齢」です。
これまで婚姻は男性が18歳から,女性が16歳からだったのですが,今回の成人年齢の引き下げと同時に,女性の婚姻年齢が16歳から18歳に変わりました
これまで男女で差があった点が,時代にそぐわないという判断だったのかもしれません。

成人年齢が引き下げになっても変わらないこと

一方で,勘違いしてはいけないのが,成人年齢が18歳に引き下げになったとしても,飲酒・喫煙・ギャンブルなどはこれからも変わらず「20歳になってから」です
大人でもつい間違えしまいそうなポイントなので,「18歳で成人だから」などど言って,お酒など勧めないよう充分に注意してください。
それから国民年金の納付も今までと同じく20歳からのままです。

成人年齢引き上げで懸念されること

成人年齢が引き下げられたことによって,さまざまな契約の場面で,本人がしっかりと判断できるのかという心配が残っています。
特に消費者庁では「定期購入」「美容医療」「もうけ話(情報商材、マルチ商法、暗号資産等)」に注意ということが啓発がされています。
高額商品や返品・返金ができないような商品やサービスについて,内容を確認しないで安易に契約を結ぶのは危険です。


そして,心配なのが「キャッシング」です。
クレジットカードがあると,手元に現金がなくてもお金を自由に使える・引き出せるような気がしてしまい,いつの間にか借金が膨れ上がっていたなどという事態になりかねません。

これは18歳に限らず大人にも言えることなのですが,特にまだ若い世代だとそういった危機意識が弱かったり,他者に強く勧められると断れなかったりするのではないかと心配されています。
例えば,携帯電話の契約ひとつでも,解約についての違約金の説明があったのかどうか,契約時のプランやオプションなどもしっかり確認したのかどうかなども,気を付けなければなりません。
そもそも18歳であればこれまでに「契約」という場面に遭遇したことがない方がほとんどでしょうし,何を確認すればいいのか,何に気をつけなければいけないのか?という点は,しっかりと知っておくべきでしょう。

成人年齢が引き下げられたことによるメリット

精神的に自立してどんどん自分で人生を切り拓いていきたい若者にとっては,親の同意なくいろいろなことができるというのは,良い面もあると私は思います。
そして,契約行為が自由にできることによる経済的なプラスの面は強調するべきだと考えています。
これまでは銀行から融資を受けたり,賃貸借契約を結んだりする場合,高校を卒業して働き始めていたとしても,なかなか難しかったのです。
これが可能になるのは経済的にとてもメリットがあると思います。

また,国家資格である公認会計士・司法書士・行政書士なども,今まで20歳以上でなければ登録できなかったのが,18歳から登録できるようになりました。
今までは「受験」自体は何歳でも受けることができたのですが,登録は20歳からだったのです。


そして実は弁護士の場合,受験資格も登録も年齢制限はもともとありません。
現行法でも,予備試験に合格するか,法科大学院を修了して受験資格さえ取得できれば,何歳でも司法試験を受験できますし,合格後に司法修習を終えたら,何歳でも弁護士として登録できるのです。
事実,近年は18歳で司法試験に合格した人もいます。
そのうち,20歳未満の弁護士が誕生するかもしれません。

最後に繰り返しですが,18歳が成人であっても,お酒やタバコは20歳からですので,くれぐれもご注意ください。

ラジオ番組『コトニ弁護士カフェ』
毎週金曜日10時30分から三角山放送局で放送中!
隔週で長友隆典護士&アシスタントの加藤がお送りしています。
身近な法律のお話から国際問題・時事問題,環境や海洋のお話まで,様々なテーマで約15分間トークしています。
皆様からの身近なお悩み,ご相談などのリクエストもお待ちしております。
三角山放送局 reqest@sankakuyama.co.jp または当事務所のお問い合わせフォームでも受け付けております。

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