新型コロナウイルス感染症に関して,新型インフルエンザ特別措置法に基づいた緊急事態宣言が全国に発令されたのが4月16日。
当初は5月6日までの期限だったのが,5月4日には延長が決定。
その後,首都圏及び北海道を除く地域の緊急事態宣言は解除されましたが,ようやく5月25日に全国的に緊急事態宣言が解除されました。
この緊急事態宣言の間,法的には強制力や拘束力のない「自粛要請」というものでしたが,多くの皆さんが生命と健康を守るために苦しい中でも宣言の趣旨に従って生活されていました。
また,政府からは持続化給付金,雇用調整助成金,特別定額給付金などの各種助成金,マスクの配布などがありました。
私たちがこの苦境を乗り越えるために一丸となって努力をしてきた結果,我が国では欧米諸国のような爆発的感染(Overshoot)は発生せず,徐々に新規感染者数も減少して,全国の新規感染者数も1日あたり50人を切るようになり,一時は1万人以上いた入院患者も2千人を切るようになりました。
緊急事態宣言の発令は昨今改正された「新型インフルエンザ等特別対策措置法」という法律を根拠としています。
緊急事態宣言を発令するにあたっては法的な根拠と基準があったわけです。
そのため,解除にあたっても,首相が自分の判断で解除を決定したのではなく,法に則った手続きを経て,慎重に協議された上で解除されました。
この解除の条件は,①感染の状況(疫学的状況),②医療提供体制,③監視体制(検査体制の構築)―で,これらを総合的に勘案するとしましたが,具体的には次のとおりと言われています。
① 新たに確認される感染者の数が,1週間で人口10万人あたり0.5人未満程度であり,直近1週間の新規感染者数の合計がその前の1週間の数を下回っていること。
② 重症者が減少傾向にあり,医療体制が逼迫していないこと。
③ PCR検査のシステムが確立されていて,検査件数が極端に少なくなっていないこと。
この中で最も重視されていたのが,①でしたが今回,東京,千葉,埼玉ではこの基準をクリアしていました。
神奈川と北海道ではクリアできませんでしたが,総合的に勘案された結果,解除となりました。
緊急事態宣言が解除されたからといって,全ての活動が以前のように自由になるというものではありません。
もちろん強制ではありませんが,政府としては感染拡大を予防する「新しい生活様式」を定着させることや,事業者が業種ごとに策定する感染拡大予防のガイドラインを実践することを前提に,段階的に社会経済の活動レベルを引き上げていくとしています。
具体的には下記のような取り組みです。
このように,各都道府県がおおむね3週間ごとに地域の感染状況や感染拡大のリスクなどを評価して,外出の自粛やイベントの開催制限,それに休業要請などについて段階的に緩和するとしています。
イベントの主催者に対しては,クラスター発生を防ぐために「三つの密」が発生しない座席の配置などの対策や,参加者名簿を作成して連絡先を把握することを働きかけ,リスクへの対応が整わない場合には中止や延期など慎重な対応を取るよう求めています。
緊急事態宣言が解除されたとしても,しばらくは健康と生命を守るために慎重に行動しつつ,経済を回していくことが求められています。
専門家は新型コロナウイルス感染症が消えてしまったわけではないとし,西村康稔経済再生担当相も「第二波は必ず起こる」と指摘したうえで,緊急事態宣言の再発令については「大きな流行にならないよう厳しい目で判断していく」と述べ、最初の発令時より感染拡大が限定的でも踏み切る考えを示しています。
そして,第二波に備えつつ,PCR検査や抗原検査による検査体制の充実や,特効薬やワクチンの開発を推し進めることとしています。
また,政府だけではなく多くの民間会社がマスクや消毒用アルコールの増産などに取り組んでいます。
一方で,海外への自由な渡航はまだ先になるでしょう。
2020年5月22日の時点でアメリカでは100万人以上,ブラジル,ロシアでも数十万人もの感染者が出ており,死者数はアメリカだけで9万人を超えている状況です。
ヨーロッパ各国でも感染者は数十万を超え,中国や韓国などのアジア各国も依然として新規感染者が発生しています。
このような状況で多くの人が自由に国境を越えて往来すれば,再び感染拡大を招く恐れがあることは容易に想像できます。
各国がそれぞれ独立した基準を設けるのではなく,世界全体で感染拡大を防ぐために,新たな国家間の協調が求められています。
最後になりますが,緊急事態宣言が解除されたとしても,まだまだ油断はできません。
収束傾向にある中でいかにして経済を回していくか,生命を守る手段と経済を活性化していくことの両立が重要なところです。
来年は延期されたオリンピックが開催される予定でもあり,今後も私たち国民が協力してこの苦難を乗り越えるべく頑張っていきましょう。