
こんにちは、長友国際法律事務所の弁護士、長友隆典です。
これまで「コトニ弁護士カフェ」では、お年寄りを狙った振り込め詐欺や、不動産を無理やり買い取ろうとする押し買いなど、特殊詐欺に関するテーマを取り上げてきました。
今回は、悪質な事件の報道が相次いでいる「国際ロマンス詐欺」について、その手口や被害状況、身を守るための注意点を解説します。

国際ロマンス詐欺のニュースは、ここ数年とても多く目にするようになりました。
高額被害となった事件として、2024年9月、神奈川県相模原市の50代の女性が、海外の著名ピアニストをかたる人物からSNSでダイレクトメッセージを受け取ったケースがあります。
相手は「一緒に暮らしたい」などと女性に恋愛感情を抱かせた後、「日本で活動するため荷物を預かってほしい」と持ちかけ、配送料や税金の名目で約8000万円を振り込ませました。
さらに、海外の銀行職員をかたる別の人物が「口座がマネーロンダリングに使われていないと証明する必要がある」として約2700万円を追加で支払わせ、被害は計約1億700万円にのぼるとのことです。
また最近では、香川大学名誉教授で法学者の高倉良一氏が、2024年にロマンス詐欺の被害に遭い、計925万円をだまし取られていたことを明かしています。
法律の専門家でも被害に遭うという点で広く報道されましたが、高倉氏自らが実名で発信し、警戒を呼びかけている姿は特に印象的でした。

「自分なら見抜ける」と思っていても、相手は人の心理を突いて計画的に近づいてきます。
生成AIの普及で、その手口は以前よりも見分けにくくなりました。
被害を防ぐために、まずは詐欺師がどのように近づき、送金させるのかを知っておきましょう。
ロマンス詐欺とは、SNSやマッチングアプリなどを通じて知り合った相手に恋愛感情や親近感を抱かせ、信頼関係を築いた上で金銭や個人情報をだまし取る詐欺の総称です。
「会いに行きたい」「将来一緒に暮らしたい」といった言葉を繰り返して相手の感情を揺さぶり、親密性が高く断りにくい状況を意図的に作り出すのが特徴です。
その中でも「国際ロマンス詐欺」は、「海外在住の外国人」という立場を偽っている点に特徴があります。
「国連職員」「医師」「弁護士」「外資系企業の役員」「投資家」など、信頼感のある職業を装い、外国語まじりの文章や片言の日本語で接触してくるのです。
知らない外国人から突然SNSでメッセージが届けば、客観的には怪しいと感じるはずです。
しかし実際には、詐欺の手口は年々巧妙化しており、実在する外国人の写真を盗用するだけでなく、最近は生成AIでプロフィール画像を作っているケースもあります。
さらに最近では、テキストメッセージだけでなく、AIで生成した映像を使ってビデオ通話までできてしまうため、詐欺だと見破ることがますます難しくなっています。
典型的な流れとしては、まず毎日のように優しい言葉でメッセージを送り続け、親近感と信頼を少しずつ積み上げていくというものです。
そして「会いに行きたい」「もうすぐ日本に行けるかもしれない」と期待を持たせながら、「仕事の都合で行けなくなった」などと理由をつけて、決して会おうとはしません。
ロマンス詐欺では、関係が深まったと見計らったところで、相手はさまざまな理由でお金を要求してきます。
「日本に行くための渡航費」「税関で荷物が止まっているので手数料が必要」といったもが古典的な手口です。
そして「日本に行ったら必ず返す」など、会えることを期待させながら返済を約束して安心させるのです。
最近ではこれに加えて、投資詐欺と組み合わさったケースも急増しています。
「FXや暗号資産で大きな利益が出たから一緒に投資しないか」と勧誘し、偽の投資サイトに送金させ、最初は利益が出ているように見せかけ、出金しようとすると「手数料が必要」「税金が必要」とさらなる送金を求め、最終的には連絡が途絶えるという流れです。

警察庁が2026年5月に公表した統計によると、2025年のSNS型ロマンス詐欺の被害額は約546億円で、前年から約145億円(36.3%)増加し、過去最悪を記録しました。
SNS型投資詐欺と合わせたSNS型投資・ロマンス詐欺全体の被害額は、約1834億円にのぼります。
被害者は件数・被害額ともに男性が約6割を占めますが、女性の被害も年々増加。
年齢層は20代から60代まで幅広いものの、認知件数の約4分の3を占めるのは40代から60代です。
経済的に余裕があり、判断力もある大人が被害に遭っているということであり、「騙されるのは特別な人だけ」という思い込みは改めなければなりません。
なお、最初の接触経路として最も多いのはマッチングアプリで、2025年のSNS型ロマンス詐欺全体の32.7%を占めました。次いでInstagram、FacebookなどのSNSが続いています。
誰もが被害者になり得ることを大前提とした上で、特に狙われやすいのは、孤独感や寂しさを抱えている方です。
離別・死別後で精神的に孤立している方、子育てが一段落して空虚感を抱えている方、長期の単身赴任中の方などは、優しい言葉をかけてくる相手に強く引きつけられやすいと言われています。
また、家族と同居していても、詐欺師から「二人だけの秘密にしてほしい」などと言われ、意図的に孤立した状態へ誘導されるケースもあります。
毎日のやりとりで情が移り、相手を信じ込んでしまうと、周囲の指摘も耳に入らなくなってしまうのです。
さらに注意したいのが、「私は大丈夫、騙されるわけがない」という過信。こうした思い込みがあると、実際に詐欺に遭い始めても気づきにくくなります。

国際ロマンス詐欺から身を守るために、次の4つのポイントを押さえておきましょう。
1.会ったことのない人には絶対にお金を送らない
最も大切なのは、一度も会ったことのない人には絶対にお金を送らないことです。
どれだけオンラインで親しくなったと感じていても、直接会っていない相手は「他人」であり、実在するかどうかさえ疑うくらいでちょうどよいと思います。
そうした相手からの金銭的な依頼は、理由を問わず断ってください。
2.完璧すぎる相手を疑う
外見が魅力的で、高収入の職業に就いていて、しかも自分にとても興味を持ってくれる。
そんな相手が突然SNSに現れたら、まずは疑う姿勢が必要です。
プロフィール写真を画像検索すると、著名人の写真が無断で使われていたり、他のサイトで使い回されていたりする事実を確認できることがありますので、試してみてください。
3.ビデオ通話を求めてみる
相手がビデオ通話を頑なに断る場合や、映像が不自然な場合(加工が過剰、動きがぎこちない、音声と口の動きがずれているなど)は、AIによる合成映像の可能性があります。
ただし最近は、本物と見分けがつかないような映像をAIでリアルタイムに生成する「ディープフェイク」技術を使い、ビデオ通話ができてしまうケースもあるため、それでも判断が難しいのが実情です。
4.少しでも不審に思ったら第三者に相談する
詐欺師は「誰にも話さないで」と言い、判断力を失わせるために周囲との関係を切り離そうとします。
少しでも不安を感じたり、不審に思ったりしたら、家族や友人、消費生活センターや警察の相談窓口に必ず相談してください。

「もしかして詐欺かもしれない」と思っても、相手を信じたい気持ちや、騙されていると認めることへの恥ずかしさから、誰にも言えずにいる方もいるかもしれません。
個人的な感情が関わることなので、家族や近しい友人には話しづらい場合もあるでしょう。
そのようなときこそ、消費生活センターや警察の相談窓口を利用していただきたいと思います。
もちろん、弁護士などの専門家にもご相談ください。
他の特殊詐欺と同様に、被害に遭ってしまった場合は、早ければ早いほど被害回復の可能性が高まります。
すでにお金を振り込んでしまった場合でも、できるだけ早く警察や弁護士に相談してください。
参考
令和7年における特殊詐欺及びSNS型投資・ロマンス詐欺の認知・検挙状況等について(確定値)
独立行政法人国民生活センター|愛のギフトを受け取ってほしい!?それってもしかして「国際ロマンス詐欺」?
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