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自然との共生を考える①

『コトニ弁護士カフェ』2020年7月3日放送分

長友隆典弁護士は,弁護士になる前は農林水産省・水産庁の職員として魚や環境を守る業務や,国際的な漁業交渉や捕鯨問題に関わってきた経験があります。→長友隆典弁護士のプロフィール詳細はこちら
長友国際法律事務所では弁護士として主に国際案件に注力しておりますが,実は自身がライフワークとして取り組んでいるのは,環境問題。TwitterYouTubeでも環境に対する想いを発信しています。

天草での美しい海との出会い

私は熊本県出身です。
母方の祖父家が田舎の山の中で農家をしていて,小さい頃からそこへ行くと山で遊んだり川釣りしたりして,とにかく自然の中で遊ぶのが大好きでした。
子供の頃は親の転勤で県内を何度も引っ越して,小学校6年間で6回も転校しました。
小学生時代の最後,6年生の時に引っ越したのが現在の上天草市(旧:大矢野町)です。
その時住んでいた家が,目の前が海,すぐ後ろが山という環境でした。
もともと釣りは好きだったのですが,それが天草で開花して,毎週末になると朝から晩まで釣りばかりするようになりました。
アジやタイを釣っては家に持ち帰って,そしたら母親が喜んでくれて,刺身や煮つけにしてくれたのも良い思い出です。
釣りだけではなく,目の前の砂浜では潮が引くと貝を掘ったり,エビやカニやタコなどが手掴みで撮れるので,いつも海にいた記憶しかありません。
時間があれば平日でも放課後に海に行ったり,近くの魚市場に行くようになると,自然と近所の漁師さんと仲良くなりました。
漁に使う網を見せてもらったり,一緒に漁船に乗せてもらって海や漁について教えてもらったりして,とにかく将来は漁師になりたいと思っていました。
魚が大好きになって,綺麗な海や川への想いが芽生えたのはこの頃だと思います。

上天草市に住む前は熊本市内に住んでたのですが,当時はまだ今のように環境保護に対する意識が低い時代だったので,川も汚くて匂いがしたり,そんな川で魚を釣って食べても美味しくなかったりして,子供ながらに悲しい想いをしていました。
上天草市のまったく汚染されていないありのままの自然環境の素晴らしさ,その印象がとても強くて,上天草での体験は今でも私の原点だと思っています。

玉名で過ごした高校時代~環境への想いが次第に強くなる

そんな素晴らしい上天草での生活も1年と少しで別れを告げ,また親の転勤で今度は玉名市へ引っ越しました。
そのまま高校時代まで玉名で過ごすことになります。
玉名は近くに工業地帯があって,大きな造船所がありました。
大好きな釣りは続けていましたが,工業地帯の海は匂うし,魚も美味しくない。
天草の美しい海との違いに愕然として,汚染された海を見るのが辛くなってしまい,だんだん海に足を運ばなくなってしまいました。
同じ海なのにどうしてここまで違うのだろう,どうにかならないのだろうかと,真剣に考えるようになりました。

海に行かなくなった分,湧き水が出ている池や川を近所で探して行くようになりました。
同じ川でも,綺麗な川とそうではない川,同じ川でも上流と下流で住んでいる魚の種類や食べてみると味が違うことに気がつきました。
その経験が,大学で淡水魚のヤマメの研究をしたいと思ったきっかけでもありました。

私はこうして少年時代からずっと,ありのままの綺麗な海や川,そして汚染された海や川もたくさん見てきたからこそ,ただ単純に「釣りが好き」「海が好き」で終わらず,「美しい環境を残したい」という気持ちが強くなったのだと思います。
綺麗な自然しか知らなかったからその価値はあまりわからないと思うので,汚染された海や川を身近に見たことは,当時は悲しい想いでしたが,きっと私にとって必要な体験だったのだと今は思っています。

九州大学で渓流魚の研究に明け暮れる日々

もともと中学生の頃から漁師になりたかったのですが,まずは高校進学時に水産高校に行くことを親に反対されてしまって,「漁師になりたいなら大学で魚の研究をしてからでも遅くはない」と説得されました。そこで,泣く泣く普通高校に入り,九州大学の農学部に進学することにしました。
特に大学院に進んでからは渓流魚の研究に打ち込み,主にヤマメの生態の研究に力を入れていました。
とにかく魚と向き合う毎日で,朝から日が沈むまで,川の中に潜って身を潜め,ヤマメが何を食べているかを観察したり,川を流れてくる昆虫や生き物を調べてヤマメの胃袋の中身との相関関係を調べたりするなど,魚の生態を通して地球環境のことを真剣に考えるようになりました。
魚や動植物を含む自然環境と人間が,どうしたらうまく共生できるのか,そのために自分に何ができるのか。この問いかけは,今でもずっと続いています。

魚も植物も,自然環境はすべて繋がっている

魚はとてもデリケートな生き物で,水温が1度上がったり下がったりしただけで生きていけなくなる種類もあります。
どんな餌を食べているかによって,健康状態ももちろん変わってきます。
海よりも池や沼のような閉鎖的な環境下では,魚はその環境の変化を直に受けやすくなります。
さらに,私たち人間の生活が変化することによって,地球温暖化による海水温の上昇や,海中のマイクロプラスチックなど,これまでになかった問題で魚や生き物たちの生活に影響を与え続けています。

「魚を守る」ということは,つまり魚を含めてその魚が生きていく環境も丸ごと守ることで,海や川を綺麗に保つことは不可欠です。
そして,人間も海や川の幸を利用しながら生活をしていて,人間自身も海や川の環境とつながっています。
美しい海や川,豊富な魚たちを未来に残すために私たち一人ひとりに何をすることができるか。
海にゴミを捨てない,小さな魚は放流する,釣っても必要な分だけしか持って帰らない,食べ残しをしないなど,ちょっとしたことでも海や川を守ることは出来ると思います。
私も一つひとつ小さなことからでも始めてみたいと思います。

―ありがとうございました。

『コトニ弁護士カフェ』次回の長友隆典弁護士の担当回は, 2020年7月17日放送です!

ラジオ番組『コトニ弁護士カフェ』
毎週金曜日10時30分から三角山放送局で放送中!
隔週で長友隆典護士&アシスタントの加藤がお送りしています。
身近な法律のお話から国際問題・時事問題,環境や海洋のお話まで,様々なテーマで約15分間トークしています。
皆様からの身近なお悩み,ご相談などのリクエストもお待ちしております。
三角山放送局 reqest@sankakuyama.co.jp または当事務所のお問い合わせフォームでも受け付けております。

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