ブログ

振り込め詐欺,もしも振り込んでしまったら?救済措置について弁護士が解説

『コトニ弁護士カフェ』2023年11月3日放送分

振り込め詐欺は,さまざまな手口で私たちの日常生活でいつでも起こりうる身近な犯罪のひとつです。
前回のブログでは,絶対に「すぐに振り込まない」「1人で判断しないで相談する」ということをお伝えしたのですが,それでも巧妙な手口に誘導されて振り込んでしまうケースが後を断ちません。
万が一,振り込んでしまった場合どのように対処したらいいのでしょうか?

もしかして振り込め詐欺?まずは冷静な対処を

実際に振り込め詐欺の被害に遭うと,多くの人はパニックになってしまうことでしょう。
振り込んでしまったらもう泣き寝入りするしかないのだろうか,と思う方も多いかと思いますが,「振り込め詐欺救済法(犯罪利用預金口座等に係る資金による被害回復分配金の支払等に関する法律)」という法律で定められた救済措置を受けられる可能性があります。

そこで,もしも振り込んでしまったあとに振り込め詐欺だと気付いた場合は,次の対応をとることで被害を回復できるかもしれません。すぐに諦めず,冷静かつ早急に対処しましょう。

  1. まずはただちに最寄りの警察署に被害届を出してください。
  2. そして警察に被害届を出したあと,振込先銀行にも届け出をして,振り込んだ預金口座等の取引の停止・凍結を依頼しましょう。届け出をする際には,必ず身分証明書や振り込んでしまったことが証明できる書類なども持参してください。

そうすることで,被害に遭ったことを届け出た銀行で,被害金支払いの申請手続きが開始されます。
その後,銀行が振り込み先に指定された口座について調べ,犯罪に使われた可能性があると判断された場合,その口座は凍結され,お金を取り戻す手続きに入ることができます。
このような回復手続を可能にする根拠が「振り込め詐欺救済法」という法律です。

振り込め詐欺救済法とは

振り込め詐欺救済法とは,正式名称を「犯罪利用預金口座等に係る資金による被害回復分配金の支払等に関する法律」といいます。

振り込め詐欺救済法の目的は,「振り込め詐欺等の犯罪行為による被害者に対する被害回復分配金の支払等のため,預金等に係る債権の消滅手続及び被害回復分配金の支払手続等を定め,もって被害者の財産的被害の迅速な回復等に資する。」(振り込め詐欺救済法第1条)と規定されていますが,端的には振り込め詐欺等の被害者に対する被害回復分配金の支払手続等を定める法律です。 

対象者としては,振り込め詐欺などの詐欺その他の人の財産を害する罪の犯罪行為であって、財産を得る方法として振込みが利用されたものにより被害を受けた方が、振り込め詐欺救済法の救済の対象者となります。

振り込め詐欺措置は時間との勝負

振り込め詐欺救済法に基く救済措置では,その凍結した銀行口座内の資金から,“被害回復”を受けられるようになっています。
注意してほしいのが,犯人が預金口座等からお金を引き出してしまうと,この救済は受けられなくなってしまうということです。

つまり,時間との勝負になります。

この措置の存在というのはもちろん相手の犯人も知っていると思いますが,現実問題,被害者が振り込んだ直後に犯人がお金を引き出すことは少し難しい可能性もあります。
金融機関の処理状況によっては,時間がかかる場合もあるため,口座の凍結要請が早ければ早いほど,お金がまだ口座に残っている場合が多くなるということになります。

“被害回復”とは全額返金を保証するものではない

被害回復とは,振り込んだ先の口座を凍結した時点でお金がどのくらい残っているのかによって,返金額が決まります。

被害額が全額残っていれば,すべて返金可能です。
しかし,一部がすでに引き出されていて,残金が少ない場合は,被害総額の一部返還となってしまうこともあります。

また,被害者が複数いた場合には,被害者それぞれの被害額と振込先口座の残高に応じて分配されるため,全額返金はしてもらえない可能性もあるのです。
そのため,振り込め詐欺だと気付いたらできるだけ早く対応することが大事です。

返金支払いを受け取るまでの流れ

救済が認められた場合,振り込んでしまったお金を実際に受け取るまでに,少なくとも半年以上かかるのが一般的と言われています。
すぐに返金されるわけではないことを覚えておきましょう。
「振り込め詐欺救済法」の流れは以下の通りです。

1.まず振込先である銀行口座を凍結します。
2.犯罪に利用された預金口座の権利を消滅させる「債権消滅手続き開始公告」と「債権消滅公告」を行い,失権させます。
3.返金の申請の手続きを進めます。預金保険機構が,被害者に対する資金の分配を行う「支払手続き開始公告」を行うので,被害者は振込先の銀行などの金融機関に被害回復分配金の申請をしてください。
4.被害回復分配金の支払申請後,数か月して被害者へ金融機関から「決定書」が届きます。

ここまでの流れを経て,被害回復分配金の支払いがされるということになります。
このように,取り戻すためにはこれらの手続きを踏まなければならないため,どうしても時間がかかってしまうのです。

救済措置を装った振り込め詐欺にも注意!

新しい制度や時代に合わせて振り込め詐欺の手口が増えているのが実情ですが,驚くことにこの救済制度を利用した詐欺も発生しています。
「振り込め詐欺救済法」に基づいた返金制度であるかのように装い,「返金制度で詐欺にあったお金が戻ってきます」という言葉で,返金処理のために手数料が必要などといって,お金を払わせようとするものです。

本来,「振り込め詐欺救済法」に基づく返金制度において,公的機関や金融機関が手数料や保証料の振り込みを依頼したり,返金を受けるためにATMの操作を依頼したりすることは「絶対に」ありえませんので,もしそのような指示があった場合には,詐欺であることを疑うようにしましょう。

基本の対策は「振り込まないこと」

振り込み詐欺救済法によって返金の可能性はあるものの,場合によっては全額返金されないこともありますし,何より時間と手間もかかります。
繰り返しになりますが,何らかの振り込みを求められたときは,まずは誰かに相談する,一人で決めない,すぐに振り込まないことを徹底してください。

【関連サイト】
振り込め詐欺救済法の施行について(金融庁)
振り込め詐欺救済法とは(全国銀行協会)
振り込め詐欺救済法に基づく公告(預金保険機構)
特殊詐欺対策ページ(警察庁)

ラジオ番組『コトニ弁護士カフェ』
毎週金曜日10時30分から三角山放送局で放送中!
隔週で長友隆典護士&アシスタントの加藤がお送りしています。
身近な法律のお話から国際問題・時事問題,環境や海洋のお話まで,様々なテーマで約15分間トークしています。
皆様からの身近なお悩み,ご相談などのリクエストもお待ちしております。
三角山放送局 reqest@sankakuyama.co.jp または当事務所のお問い合わせフォームでも受け付けております。

関連記事

  1. もしも遺言書がなかったら?遺産分割協議と起こりうるトラブル
  2. いま,緊急事態宣言が再発令されない理由
  3. 台風19号を振り返る
  4. パワハラの定義と対処法〜証拠保全と因果関係の立証が大事
  5. 盗まれた自転車を取り返すには?
  6. 中田翔選手の暴力事件について弁護士が解説!「暴行」と「傷害」の違…
  7. ワクチンパスポートの申請受付開始、国内での活用はどうなる?
  8. 民法の共有制度はどう変わった?改正後の共有制度について解説
PAGE TOP