「検察庁法改正」について,著名人たちの発言やSNSでの拡散などにより大きな問題となりました。
元国家公務員の弁護士長友隆典が解説します。
まずは「検察庁法改正」という言葉だけが独り歩きしているような印象を受けています。
そもそもこれは検察官を含む国家公務員全体の定年延長問題を解決するために提案された法案です。
一般的な公務員の定年は公務員法によって規定されていますが,検察官の定年は検察庁法という別の法律で規定されているため,公務員法と合わせて検察庁法も改正しなければならない…という話なのですが,なぜか「検察庁法改正」という部分だけがクローズアップされてしまいました。
そもそもこの公務員の定年延長の話は今に始まったことではなく, 民主党政権化の平成23年に既に人事院総裁から当時の野田総理に対して要請書が提出されています。
当然,要請書が形として提出される前から既に議論は始まっているはずなので,遅くとも平成23年には政府の中で議論がされていたことは間違いありません。
その後,平成30年にも安倍総理に対して要請が出されて,この件が今国会の主要課題になるということは,コロナ問題が発生する前の昨年12月には予定されていました。
平成25年に年金受給年齢が60歳から65歳に引き上げられて,60歳以降も働こうという社会の流れの中,一般企業でも定年が延長されたり再雇用制度を導入したりしています。
この公務員の定年延長もその頃からずっと継続して問題になってきていることなのです。
まるで突然降って湧いた問題のように議論されていますが,新型コロナが問題になる前からずっと継続して問題になってきたことで,それが予定通り重要案件として話合われているということです。
―公務員全体の定年延長というよりも,安倍総理が個人的に黒川氏を検事総長として置きたかっただけでは・・みたいなことを言われていますよね。
そもそも検事総長は内閣に任命権限があり,これは別に安倍総理の特権でもなく法律で決まっていることです。
1月の閣議決定で黒川検事長の定年延長が決まったんですが,それも何か規定を破っているわけではありません。
いずれにしても安倍総理が黒川氏を検事総長にしようとしたのは私も間違いないとは思いますが,それは内閣に与えられた権限なので,そこを何か安倍総理が勝手にやっているみたいな言い方はちょっと的外れだと思ってしまいます。
公務員である検察官を私たちが交代させたり退職させたりすることはできないので,もしも検事総長を変えたいのであれば,検事総長を任命する内閣を変える,そのためには内閣を構成する国会議員を変えるしかありません。
私たちには選挙権がありますから,今の政権に不満があるのであれば,積極的に選挙に参加して政権交代させるしかないです。
いくら安倍総理を批判しても,自民党を選挙で選んだのは私たち国民であるということを忘れないで欲しいです。
―ありがとうございました。
『コトニ弁護士カフェ』次回の長友隆典弁護士の担当回は, 2020年6月5日放送です!
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