ウィンターシーズン真っ最中の北海道。
世界中からスキーヤー・スノーボーダーが集まる北海道のスキー場では,残念ながら毎年事故が起きていることも事実です。
今年最初の「コトニ弁護士カフェ」では,スキー場で起きてしまったスキー・スノーボードの事故について,法的責任はどうなるかをお話しました。
― 先生はスノーボードが趣味で,休日にはよく滑りに行かれるんですよね?
長友隆典弁護士(以下略):先週も大雪山旭岳に行ってきました!
今年は雪が少ないこともあり,実は崖から落ちた時,木にぶつかって胸を強打してしまいました。
たぶん肋骨にヒビが入っているかもしれません。
― 大丈夫でしたか!?病院には行かれたのですか?
動けたので病院には行きませんでした!
今回の怪我はあくまでも私の自己責任でした。
―たしか旭岳には毎年滑りに行っているんですよね。
旭岳は自分の人生の「挑戦」のひとつだと思っています!
6年前に,最初はスキーで行ったのですが,全然上級者でもないのに滑りに行ってしまって,猛吹雪の中で遭難しかけたことがあります。
なんとか自力でロープウェイ乗り場まで這って辿り着いたのですが,そこで力尽きていた所を通りがかったスキーヤーに助けていただきました。あの時は本当に凍死するかと思いました。
雪山滑りは命懸けのスポーツということを再認識しました。
―スキー場での事故には,人と人が衝突したり,人が障害物に激突して怪我をしてしまったり色々なパターンがあると思います。
スキー場での事故に関して基準となる法律やルールはありますか?
スキー場の事故について専門の法律はありません。
スキー連盟などの規則,各スキー場の利用規約などを参照することになります。
そもそもスキーやスノーボードは,とても危険なスポーツ。
雪の斜面を,両足に板を固定して,ものすごいスピードで滑り降りるんですから・・・
その日の雪質,天候,ゲレンデの混雑状況など様々な要素が影響するので,本当に注意が必要なスポーツです。
まずはスキーヤーやスノーボーダー自身が「危険なスポーツ」であることをしっかりと自覚して,細心の注意を払うことが求められます。
アメリカでは「Assumpution of Risk=危険の引き受け」という考え方があります。
日本ではこういった言葉としてはあまり浸透していないかもしれません。
“スキーやダイビングなど危険が伴うスポーツをしている時の事故は,まずは自らがそれを自覚して責任を引き受けたとみなす“
という考えです。
―危険なスポーツということを自覚している以上,基本的には自己責任の部分が大きい,ということですね。
それでも事故によってはスキー場に責任が生じるケースもあるのでしょうか?
たとえばコースの整備に不備があった,コース案内の掲示が明らかに不十分だった,天候不良や積雪状況による危険性について適切な注意喚起が無かった・・・・
そういったスキー場の管理不足と,スキー場の利用者が事故に巻き込まれた/事故が起きた事実との因果関係がはっきりと立証できれば,スキー場側の責任と言えると思います。
―自己責任の部分が大きいスポーツではありますが,スキー場は当然,事故が起きないような管理を努めることが求められるということですね。
その通りですね。
スキー場には必ずゲレンデマップがあって「上級者向け」「初心者向け」など区分していますし,斜面の斜度,コブがあるエリアにはわかるように書いてあります。
実際のコースでも,コースとコース外との境目には必ず目立つ色のロープやネットが張ってありますよね。
それから,リフトを支えている鉄柱にはウレタンマットが巻き付けてあります。鉄柱の周辺はそもそも滑走禁止であることが多いのですが,それでも万が一利用者が侵入してぶつかってしまった時に,大きな怪我にならないための安全管理のひとつですね。
スキー場での事故やトラブルが起きた場合は,念のためにその時の周辺の状況を写真や動画で撮っておくといいかもしれません。
また,スキー場のチケットや案内板に記載されている内容を写真等で必ず記録しておくことも大事ですね。
―ありがとうございました。
次回 2020年1月 31日の放送では「スキー場での人と人との衝突事故」についてお話する予定です。
備考:このお話に登場した大雪山旭岳に行った時の動画です。
ラジオ番組『コトニ弁護士カフェ』
毎週金曜日10時30分から三角山放送局で放送中!
隔週で長友隆典護士&アシスタントの加藤がお送りしています。
身近な法律のお話から,国際問題・時事問題,地球やお魚の話まで,様々なテーマで約15分間トークしています。
皆様からの身近なお悩み,ご相談などのリクエストもお待ちしております。
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