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2020年アメリカ大統領選挙と今後の行方

『コトニ弁護士カフェ』2020年11月11日放送分

11月3日に投票が行われたアメリカ大統領選挙。
今回はアメリカ大統領選挙の仕組みと今後の流れを解説します。

投票の結果,バイデン氏が勝利

まずは,今回の大統領選挙を振り返ってみましょう。

今回の大統領選挙は選挙キャンペーンが始まった頃から話題が尽きませんでした。
トランプ大統領が再選されるのか,民主党のバイデン氏が奪還するのか?
事実上は,トランプ派か反トランプ派という争いでした。
投票前の下馬評では,バイデン氏,つまり反トランプ陣営の支持率が高く,圧倒的にバイデン氏が優勢という報道が多く出ていました。
しかし,ジリジリとトランプ大統領の支持率も上がってきて,投票直前にはどちらが勝つか予測ができないぐらいの接戦になり,世界的に大きな注目を集めました。

投票の結果は皆さんもご存知の通り,バイデン氏が勝利。
しかし,結果の判明する前からトランプ大統領が不正を指摘して開票を止めるように訴えるなど,勝利宣言をしたバイデン氏に対して,複数の州について選挙の不正を今も訴え続けています。

アメリカ大統領選挙の仕組み

アメリカの大統領選挙は各州で行われます。
各州の勝者が人口などに応じて州ごとに設定された「選挙人」の人数を獲得する仕組みです。

例えばカルフォルニア州の選挙人は55人なので,カルフォルニア州で勝利した候補者は「55人」の票を獲得できます。
各州で獲得した選挙人を合計して過半数に達した候補者が勝者となります。

ロイター通信によると,11月11日現在の獲得した選挙人はバイデン氏が279人,トランプ大統領が214人で,バイデン氏が過半数の270人を超えました。
しかし,トランプ大統領も選挙戦で鍵となったフロリダやオハイオで勝利するなど,本当に接戦で最後まで目が離せない戦いでした。

大統領選挙開票後の流れ

アメリカ大統領選挙では,勝敗が決まると通常は勝者は「勝利宣言」を,敗者が「敗北宣言」をして実質的に終了となります。
この敗北宣言は憲法や法律などで法的に定められているものではなく,120年以上続く慣習のようなものです。
1896年の大統領選で民主党のブライアン候補が共和党のマッキンリー候補に敗北を認める書簡を送付して以来,この伝統が続いてきました。
これは選挙後の政権移譲を平和裏に終わらせて,選挙制度の正当性を守るための民主主義的な紳士的な協定のようなものです。
敗者がしっかり負けを認めることで勝敗が決定するということです。

今回の大統領選挙では,現時点でトランプ大統領はまだ敗北宣言をしていません。
負けを認めていないということは,伝統に従うと選挙戦は終わっていないということを意味しますが,今後どうなるのでしょうか?

最高裁まで争ったブッシュ氏vsゴア氏の法廷闘争

実は過去に似たような事例がありました。
2000年にブッシュ氏とゴア氏が争った大統領選挙です。

フロリダ州の集計をめぐって訴訟となり,1ヶ月以上かけて連邦最高裁まで争いました。
この争いは,最高裁の判断を受けてゴア氏が敗北を宣言したことで幕を閉じます。
裁判の結果で大統領選挙の結果が決まったのではなく,最高裁の判断を受けて最終的に敗北を認めたことで決着がついたのです。

トランプ大統領とバイデン氏による今回の大統領選挙では,すでにトランプ陣営はペンシルベニア州の連邦地裁に対してバイデン氏の勝利認定を差し止めの提訴をしています。
ジョージア州,ミシガン州,ネバダ州ではすでに訴えが却下されたようですが,ウィスコンシン州でも再集計を求めるなど,トランプ大統領はとにかく「選挙の結果を認めない!」という主張を各州で継続しています。
2000年の大統領選挙では決着まで1ヶ月以上かかったように,トランプ陣営は最高裁まで争う姿勢を見せていますので,この争いはまだまだ続くと思われます。

トランプ陣営の中でも,選挙の結果を潔く受け入れるべきだという意見もあるようです。
しかし,トランプ大統領は「不正な選挙が行われた」という主張を引っ込めることも出来ないでしょうし,裁判所で判断されるまで徹底的にやるのではないでしょうか。
州ごとの選挙人を決定する最終期限が12月8日ですので,遅くてもその日までには何らかの具体的な動きがあるでしょう。

今後も敗北宣言がなかったら

12月8日までに裁判所の決定もなく,トランプ大統領が敗北宣言もしなかったらどうなるのでしょうか。
規定では各州の下院議員による投票でアメリカ大統領を決定します。
各州に1票ずつ割り当てられますが,現在の下院では共和党が過半数を持っているので,その場合はトランプ大統領が再選になるかとも言われています。
下院までもつれ込んだケースは1824年までさかのぼり,20世紀以降にはこのようなことはありませんでした。

私の個人的意見では,下院で決めるのではなく,仮に不正があったとしたら,その不正の分だけ取り除けるのであれば取り除いた結果で決めた方がいいと考えます。
アメリカ国民が「私たちのリーダーはこの人だ」と自分たちの意志で投票した結果なので,その結果を尊重して欲しいものです。

苦境の中で善戦したトランプ大統領

今回の選挙でも前回の選挙と同様に,トランプ大統領はマスコミに人気が無かったように見えましたが,トランプか反トランプかという雰囲気の中で重圧を跳ねのけて,前回は当選,今回も予想以上に善戦しています。

トランプ大統領の人種差別的な発言やアメリカ優先的な発言や行動に,私は全く共感はしていません。
しかし彼は重圧の中でも,国民に対して常にパッションで熱い想いを伝えて,人々共感させるというリーダーとしての才能があると思います。
トランプ大統領の精神力の強さには感動しています。

今回,あれだけ反トランプ運動があっても7100万票という過去最多の得票を得た事実は大きいです。
それだけトランプ大統領は絶大な人気があった,人々の共感を得ることができた証明と言えるでしょう。
リーダーシップや精神力などの部分においては,良い意味でトランプ大統領を見習って頑張りたいと思える姿を見せていただきました。

『コトニ弁護士カフェ』次回の長友隆典弁護士の担当回は, 2020年11月27日放送です!

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