前回のブログでは,パワハラの定義について解釈させていただきました!
リンク:2017年10月24日記事「どんな言動がパワハラになる?」
では,もしも実際にパワハラ被害に遭ってしまったら・・・
どうすればパワハラとして認定されるのか?どうすればいいのか?ということをお話したいと思います。
パワハラと認められた裁判例を元に,パワハラは6類型に分類されます。
このように,パワハラとひとことで言っても,それぞれケースごとに特徴が大きく異なりますし,その対策についても個別に考えていかなえればなりませんが,ある程度共通した対策というものを考えたいと思います。
これはパワハラだけでなく,一般的な家事事件,民事事件などすべての事件について該当することですが,まずはしっかりとした証拠を残すことが大切です。
たとえばパワハラについて,職場の人事部やコンプライアンス部などに直接相談する,公共の相談窓口に相談する,弁護士に相談する,将来的に裁判を起こす・・・どんな対策を取るにしても,証拠は必ず必要になってきます。
大切なのは「パワハラの事実」「損害の発生」そして両者の間の「因果関係」です。
まずは,パワハラの事実を日記やメモに残すこと。「いつ,どこで,誰に,どのようなことを言われた・された,それによって自分はどうなった(精神状態/怪我をした等の身体的な状態)」ということをしっかり残しておきます。メールのやり取りがあるならメールを保管しておく,会話をボイスレコーダー等で録音しておくことも有効です。
単に「辛かった」「傷ついた」「落ち込んだ」という気持ちの変化だけでは,損害と言うことは難しくなってしまいます。もちろんそのような感情要因も慰謝料の算定根拠として考慮されますが,「病院に行ったので医療費がかかった」「うつ病になって仕事を休んでしまった」「営業成績が下がって給料が減額された」など,具体的な損害が生じていることを示す必要があります。身体的・精神的に苦痛を受けた結果,病院を受診したのであれば,診断書を取っておくことです。その際は,その診断結果がパワハラと因果関係がある旨の診断書としてもらうことが重要です。診断結果によりPTSDなどの後遺障害が残った場合は,損害賠償として将来の逸失利益を請求できる可能性もでてきますので,後遺障害の有無も必ず診断してもらうようにしてください。
そして,「パワハラの事実」と「損害の発生」との間に,因果関係が必要です。
“パワハラがあったから損害が生じた“という関係性が,第三者からみても明らかに認められなければなりません。たとえばパワハラと思われる行為を受ける前の入社当初から仕事を休みがちであった,営業成績も変化がない・・・それではパワハラが原因による損害と主張するのは難しいかもしれません。「3.損害の発生」でもお話しましたが,病院で診断を受ける場合に,発症している病気・ケガがパワハラによるものであると診断書に記載してもらうこと,後遺障害が残った場合も,その後遺障害がパワハラが原因であると診断してもらうことが重要です。
大きな企業の場合,人事部やコンプライアンス部門などでパワハラなどの相談をすることができます。事実関係を調査した上で,パワハラ加害者である社員を注意する,もしくはそれ以上の処分を与えることもあるかもしれませんし,異動させて同じ社内でも業務上関係のない部署に離してもらうこともできるかもしれません。
会社に相談しても何もしてくれない・改善が見られない,社内では相談しづらいといった場合は,外部の相談窓口に相談することになります。例えば,労働基準局の相談窓口,各都道府県や市町村の労働局の相談コーナーや,法務省管轄の人権相談ダイヤルなどもあります。将来損害賠償の請求なども考えられている方は,弁護士に相談していただければ迅速・一貫して対応が可能です。
以上,パワハラかな?と思ったときの対応の要点ですが,対策をとるときに忘れてはいけないのが,被害を受けたご自身がこれから仕事とどのように付き合っていきたいかというご自身のお気持ちです。
「職場環境が改善されればそのまま仕事を続けたい」
「もう退職したいがパワハラ加害者である上司に損害賠償を請求したい」
「パワハラの事実を人事部に訴えたのに何もしてくれなかった会社の責任を追及したい」
パワハラ被害者の方の今後の意向によって,解決方法も異なってきます。
まずご自身がどうしたいかということを一番に考えましょう。
「これってパワハラ?該当するのかはっきり分からない」
そんな時も問題が大きくなる前に一度ご相談いただくといいかもしれません。
当事務所では労働問題についても専門の弁護士と相談することができます。