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国際的な家族の問題①国際結婚と子供の国籍

こんにちは!弁護士の長友隆典です。

私がパーソナリティを務めるラジオ番組『コトニ弁護士カフェ』では,10月から「国際的な家族」をテーマにお話しています。
人もモノも国境を越え,ビジネスだけでなく,家族の関係も今はインターナショナルになってきています。
皆さんのご家族や友人の中にも,仕事や留学で海外に住んでいる方,国際結婚をして海外で家庭を築いている方など,周囲に何人かいらっしゃるのではないでしょうか?
国際結婚も,その後に続く国際的な家族関係も,もはや私たちにとっては身近な出来事になりました。

国際結婚の現状

はじめに国際結婚事情について少しご紹介します。
日本全体の婚姻件数が減少傾向にある中で,国際化が進んでいるといっても,実は国際結婚の割合というのはここ20年で大きな変化はなく,約3%前後を推移しています。
国際結婚の7割は日本人男性と外国人女性のカップルであり,さらにそのうち8割が中国,フィリピン,韓国などのアジア人女性との結婚ということです。(参考資料:厚生労働省「人口動態調査」より)

国際結婚の手続き

※ここでいう国際結婚とは,日本国籍を持つ日本人と,外国籍を持つ外国人が,日本国内で結婚するというケースに限らせていただきます。

日本人同士が結婚する場合,戸籍謄本と婚姻届けを役所に提出して受理されることで,婚姻が成立します。

では,結婚する相手が外国人の場合はどのような手続きが必要になるのでしょうか?

まずは,戸籍謄本と婚姻届という書類は同じですが,外国人の場合,パスポートなど国籍や身分を証明する公的な証明書と,婚姻要件具備証明書という書類が必要です。これは,その外国人の方が「独身であること」「本国で結婚年齢に達していること」など,日本で結婚することができるという証明をするものです。これは領事館や大使館で発行してもらい,それを日本語に翻訳したものが必要になります。たとえばアメリカなどは戸籍という制度がないので,独身であることを領事の前で宣誓して,独身宣誓書を発行することになります。婚姻届,日本人の戸籍謄本,お相手の外国人のパスポート婚姻要件具備証明書とその翻訳書,これらの書類を役所に提出して受理されることで,日本国内で婚姻が成立します。

これだけだと日本国内だけの婚姻になりますので,通常は相手国でも婚姻の手続きが必要となります。そこで,原則的な手続きとしては,まずは役所で「婚姻届受理証明書」という書類をもらい,それを相手国の言語に翻訳し,それを大使館や領事館に提出します。ただし,婚姻の条件や手続きは国によって異なりますので,事前に調べておく,領事館や大使館などに問い合わせておくとよいと思います。

国際結婚 子供の国籍はどうなる?

国籍に関することは,各国の国籍法で定められているのですが,国籍が付与される条件というのは国によって異なりますが,大きく2種類に分かれます。

血統主義:出生する場所に左右されず,親の国籍がある国の国籍を取得することができます。
日本は血統主義ですので,父母のどちらかが日本人であれば,日本で生まれても,外国で生まれても,その子供は日本の国籍を取得することができます。

生地主義:両親の国籍に関わらず,その国で出生した子供には国籍が付与される制度です。
アメリカ,カナダ,ブラジルなどは生地主義を採用しています。たとえば両親が日本人でも,アメリカで子供が生まれれば,その子供はアメリカの国籍を取得することができます。

また,イギリスやオーストラリアのように,血統主義ですが条件付きで生地主義を認めている国もあります。

多重国籍から国籍の選択へ

日本では多重国籍を認めていませんが,たとえば日本人の両親がアメリカで子供を産んだ場合,血統主義によって日本国籍を取得することができますし,生地主義によってアメリカの国籍も取得することができます。その子供は日本とアメリカの両方の国籍を持つ,つまり多重国籍の状態になります。
このように条件によって自動的に複数の国籍が付与された場合に限って,日本では多重国籍の状態が一時的に認められることになり,22歳までにどちらかの国籍を選択しなければなりません。日本の国籍法第11条には,「自己の志望によって外国の国籍を取得した時は,日本国籍を失う」とありますので,22歳より前でも自らの意思でどちらかの国籍を選択した場合,日本国籍は失うことになります。
また,例えばロシアとの関係では,ロシアでは国際結婚の場合自動的に国籍が付与されるのではなく,あくまで申請することによってロシア国籍が付与されることになっています。したがってロシア国のパスポートを取得した場合は,原則として自己の意思により他国の国籍を選んだことになり,日本の国籍を失うことになります。
「自己の志望」といっても,たとえば赤ちゃんのうちに親が手続きをして外国籍を取得した場合でも,実際にそれは自らの意思とは言えないかもしれませんが,その手続きは有効ですので,注意が必要です。

国籍法をよく確認しておきましょう

相手の国がどのような国籍法であるのか,国籍が付与される条件については出生地も関わってきますので,出産する前からよく調べて考えておくことが大切です。場合によっては,今後の生活や子供の国籍のことを考えて,出産する場所を選ぶというケースもあるかもしれません。また,日本では多重国籍の状態でも22歳になるまで選択の余地がありますので,赤ちゃんのうちに両親が国籍を選ぶよりも,本人の意思を尊重するために,将来本人が選べるように選択肢を残しておいてあげるというのも良いかもしれません。

トランプ大統領の生地主義の見直しを検討するという発言も注目されていますので,もしかしてアメリカの生地主義も今後は変わる可能性もあります。
各国の国籍法は改訂されることもありますので,領事館や大使館などで最新の情報を確認しておきましょう。

さて,明日のラジオでは,国際結婚,子供の国籍のお話に続いて,「国際離婚」をテーマにお話する予定です!
興味のある方はぜひラジオを聴いてみてくださいね。

『コトニ弁護士カフェ』
放送日時:毎週金曜日 10時30分~(再放送21時30分)
三角山放送局 FM76.2MHz

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