今年の冬は,例年以上に多くの雪が降りました。
冬と言えば大変なのが毎日の雪かき。
車で通勤する方ですと,毎朝車の雪おろし,まわりの雪かきから1日が始まる,という方もいらっしゃるかと思います。
昨年もこの時期に同じような内容でお話ししたのですが,改めて今回も身近に起こる除雪のトラブルについて,関係する法律をや対応について解説しましょう。
住宅街など家がたくさん並んでいるようなエリアでよくあるのが,誰かが雪かきした雪を自分の敷地に捨てていった,または,隣の家の屋根の雪が自分の敷地に落ちてきたといったケース。
以前、雪は空から降ってきたもので,法律用語では「無主物」になるとお話ししました。
雪自体は法律的には誰のものでもないし,その雪を所有したいと思えば所有権を持てる,ということになります。
自分の敷地内に雪を捨てられてしまった場合・・・・雪を捨てられてしまった土地の所有者が「妨害排除請求」することができます。
その場合,誰が捨てたのかというのがはっきりわかる必要があります。
隣の家の屋根から雪が落ちてきた場合・・・・隣人の方が屋根に積もった雪が他人の敷地に落ちて損害を与えないように気をつける義務があります。
これは民法717条1項で定められた法律上の義務です。
固まった雪が落ちてきて誰かにケガをさせてしまった場合・・・・損害賠償をしなければならなくなる可能性も。
その場合も,適切に除雪をしていなかったことが原因となるのです。
雪で車が通れなくなってしまった場合・・・・まずはその雪の出所、雪を道路にかきだした人に片付けてもらうように頼むのが最善です。
しかし,道路にかきだした雪のせいで大渋滞してしまっているのであれば,臨機応変にその場にいる人たちで道路の雪を片付けるしかありません。
以前お話しした上記の除雪については,こちらの記事で詳しく書いています。
除雪トラブルについて|民法717条1項について弁護士が解説
さらにまた複雑なのは,道路に積もった雪が原因で事故などが起きてしまった場合です。
雪山を避けようとして車が衝突してしまったり,最悪の場合が人身事故が起こる可能性もあります。
そういった場合,たとえば誰かの敷地からあふれたような雪であれば,その家の人の責任になるのか,それとも危険な状態を放置していた行政の責任になるのかについて気になるところでしょう。
まずは道路の除雪に関する法律を紹介します。
除雪については,道路法第42条で『道路管理者は、道路を常時良好な状態に保つように維持し,修繕し,もつて一般交通に支障を及ぼさないように努めなければならない。』と定められています。
道路を管理する管轄が行政であれば,その道路を良好に通行できる状態にしておく義務があることになります。
たとえば雪が積もって車が通れなかったり,歩道から雪が溢れて人が車道を歩かなければならない状態で事故が起きてしまったり…
そんな場合には,行政も一定の責任を追うことになるでしょう。
ただし,行政が責任を負う場合は,原則として行政側に過失があることが必要です。(国家賠償法第1条第1項)
国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によつて違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる。
国家賠償法第1条第1項
しかし,道路の管理に瑕疵があった場合の責任は無過失責任されています(国家賠償法第2条第1項)。
道路、河川その他の公の営造物の設置又は管理に瑕疵があつたために他人に損害を生じたときは、国又は公共団体は、これを賠償する責に任ずる。
国家賠償法第2条第1項
そのため,道路の除雪も営造物である道路の管理にあたりますから,その除雪作業の瑕疵により交通事故が発生した場合は行政が責任を負うことも想定されます。
ただし,この場合の管理に瑕疵があったとは「通常有すべき安全性を欠いている状態」であるとされてますので,通常の管理体制として除雪が行われており道路の安全性が確保されていたのであれば,交通事故の責任を行政に問うことは出来ません。
一方で,除雪が通常通り行われておらず,雪山が巨大になったため見通しが極端に悪くなったなど管理の瑕疵があり通常有すべき安全性を欠いていた結果,交通事故が発生した場合は行政が責任を負うこと想定されます。
そのような事情が無い場合は,雪道での事故はあくまで自己責任ですので,雪道での運転は十分に気を付けてくださいね。
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