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相続のいろは第5回 「遺留分」を請求する方法

前回の「相続のいろは」では,遺言書の内容に納得がいかない場合,特定の相続人の方には「遺留分(いりゅうぶん)」というものがあり,その遺留分について侵害があるときには「遺留分侵害請求」(旧:遺留分減殺請求)ができるというお話しをしました。
今回は,具体的な遺留分侵害請求の手続きについてお話しいたします。

遺留分とは?

遺留分とは,民法1042条に定められており、相続財産の一定割合について兄弟姉妹を除く法定相続人(配偶者,子,直系尊属)に対して相続財産の取り分を保障する制度です。
その取り分の割合は法定相続分の2分の1ですが,相続人が直系尊属(父親や母親)のみの場合は3分の1となります。一方で,兄弟姉妹にはありません。

遺留分侵害請求の流れ

以下,手続きの流れを簡単に説明いたします。

(1)ご自身に遺留分が存在するかを確認しましょう

相続をすることができる人(相続人)全員に遺留分があるわけではありません。

遺留分があるのは,兄弟姉妹以外の相続人,すなわち「配偶者」,「子」及び「直系尊属」だけです(民法1042条)。その割合は,直系尊属の方は法定相続分の3分の1,それ以外の方は法定相続分の2分の1です。(詳しくは前回の相続のいろはでご確認ください。)

(2)相続財産の価額を確認しましょう

遺留分請求の範囲は,遺言書に記載されている財産です。
しかし,遺言書を作成した以降に財産を使ってしまったり,地価の上昇などで価値が高くなっていたり、遺言書作成時とは価額か変わっていることがあります。
被相続人が取引していた銀行の取引明細を取得する,不動産会社や鑑定会社に問い合わせるなどして,まずは被相続人名義の相続財産の価額を確認しましょう。

相続財産が金員でない場合,例えば不動産や宝飾品の場合は,その価値がいくらであるか金額に換算することも忘れないようにしてください。

(3)遺留分額を確認しましょう

被相続人の相続財産を確認したら,次はご自身の遺留分額を確認しましょう。
算定の方法は民法の規定に従うことになりますが,相続財産の総額をご自身の遺留分割合でかけた額がご自身の遺留分額になります。

(4)遺留分額侵害額を計算しましょう

ご自身の遺留分額を確認したあとは,ご自身の遺留分侵害額を計算します。
算定方法は民法1046条第2項に記載されていますが,ご自身の慰留分と遺言書に記載されている額を比較することで算出できます。
その結果,ご自身の遺留分額の方が大きければ,ご自身の遺留分が侵害されたとして遺留分侵害請求をすることができます。

(5)遺留分侵害額の支払いを請求します

遺留分が侵害されていることがわかったら,遺留分を侵害している方(受遺者又は受贈者)に対して,侵害されている分の請求をします。
請求は話し合いで解決を目指すことも可能ですが、どうしても解決しない場合は裁判手続きで請求することになります。

遺留分侵害請求の事例

父親が遺言書を残して死去しました。
子供は3人(長男,次男,三男),母親は既に他界しています。

遺言書には,長男に父親名義の土地と建物を相続させ,次男と三男には父親名義の預金口座を折半して相続させると記載がありました。
遺言書を記載した当時は,自宅の土地と建物の時価は5000万円,預金口座には1億円あったため,その相続割合が妥当であると父親は考えたのです。

一方で,父親が遺言書を作成したのは十数年前のこと。
それから周辺開発により地価が高騰し土地建物の時価は8000万円になっており、そして父親の医療費が予想外にかかってしまったことで,父親が死去したときには預金口座の残高が2000万円になっていました。

そのため,遺言書通りだと長男が8000万円,次男と三男が1000万円ずつを相続することになります。

しかし,法定相続分で計算すると,総額1億円の3分の1ですから,本来はそれぞれ3300万円ほどを受け取る計算になります。

そのため,次男と三男の遺留分は約1650万円となり,ここから1000万円を差し引いた650万円を遺留分侵害額として,長男に請求できることになります。

遺留分について疑問があるときは専門家に相談を

遺留分侵害請求の手続き自体はむずかしいものではありませんが,親族間の金銭問題では感情がもつれることもあり,とても心苦しい場合があります。
また,遺留分侵害請求の相手方が親族ではない第三者の場合,そもそも話し合いの場を持てないこともあります。
遺言書の内容に不満がある,ひょっとしたら遺留分を請求できるかもしれないと感じる場合は,遠慮なく弁護士などの専門家に相談されることをおすすめします。

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