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台湾の法制度|台湾法の歴史、大陸法と英米法の違い

『コトニ弁護士カフェ』2023年7月7日放送分

日本では5月8日以降,感染症法における新型コロナウイルス感染症が5類に移行されたことで,マスクを着用しない生活が戻りつつあり,海外へ出かける方も増えています。
今回は,日本からの距離も近い「台湾」の法制度についてお話しします。

先日,約3年半ぶりの海外出張で台湾へ訪れました。
弁護士になってから,国際会議,国際交流や国際案件の対応などで,毎年何回かロシアやアメリカなどへ行っていたので,このように何年もの間,海外に行かなかったのは本当に久しぶりでした。
私が所属している日本弁護士連合会(通称:日弁連)の国際交流委員会では,定期的に海外の弁護士会との交流を重ねており,今回がコロナ明け初めての国際交流となりました。
公式な行事に加え,台湾の弁護士会会長がとても温かく迎えてくださり,あらためて台湾と日本の友好的な関係を嬉しく感じました。

台湾と日本の共通点と相違点

台湾は,日本語が通じたり,日本語のメニューが提供されたりするお店が多く,日本人が旅行しやすい国のひとつです。
台湾の食べ物は何を食べても本当に美味しく,個人的な意見ですが,中国や韓国よりも,日本人の舌に合っているような印象も受けます。
旅行先としても人気のある台湾,日本との共通点と相違点について紹介します。

日本企業が多く、街並みが似ている

現在,台湾には多くの日本企業が進出しています。
セブンイレブンやファミリーマートなど,日本の大手コンビニエンスストアは台湾国内でトップのシェアを持つほど多く,日本の人気牛丼チェーン店なども展開されています。
そのため,台湾の街並みはどこか日本と近いものを感じさせます。
また,台湾には日本製の新幹線も運行されていることも有名です。

台湾の義務教育

台湾の義務教育は,日本と同様,小学校6年・中学校3年の合計9年間とされています。
さらに,高校も3年間・大学は4年制が一般的なようです。
また,台湾は日本と同様に漢字文化圏ですので,文字も「漢字」を使うという点も共通してます。

相違点・外食文化と交通ルール

台湾は日本よりも外食文化が盛んで,1日3食を外食で済ませてしまう人も多いそうです。
飲食店は早朝6時から深夜2時頃までの営業しているお店が多くあります。
また,日本の飲食店では水やおしぼりの提供がありますが,台湾ではほとんどのお店で提供されないというのも日本と違う点です。
そのほか,交通ルールでは,台湾の車は右側通行のため,左ハンドルが基本となっています。

台湾の法制度は日本と同じ【大陸法】である

では,法律についてはどうでしょうか。
台湾の法律は,日本と同じく「大陸法」と呼ばれる法体系を採用しています。
大陸法(別名:Civil law)とは,古代ローマ法を起源とし,ドイツやフランス,ロシアなどのいわゆる大陸側の国で採用されている法体系です。
日本が大陸法を取り入れたのは,民法の制定時や大日本帝国憲法の制定時,フランスやドイツ,特にドイツの民法やプロイセン憲法の影響を受けたことが関連しています。
一方,英米法(別名:Common law)は,イギリスが発祥とされ,最高裁判所の判例が法となる判例法として発展しました。
英米法はイギリスを中心にイギリスの旧支配地であったアメリカ,カナダ,オーストラリア,ニュージーランド,インドなどに広がっています。
大陸法と英米法の大きな違いは,大陸法では成文法が重視されるのに対し,英米法では最高裁判所の判例に基づいて法的判断が行われる点です。
これらの法体系の採用は,国々の歴史や世界大戦時の関係性によって影響を受けています。
台湾が日本と同じ大陸法を採用しているのも,過去の歴史的な経緯に関係しているのです。

台湾の法制度の歴史

台湾の歴史を振り返ると,17世紀のオランダ統治時代から鄭成功政権,清王朝,そして日本統治へと続き,1945年の日本敗戦後に中華民国政府が台湾を統治することになりました。
その結果,台湾では中華民国法が基盤となっています。
中華民国法は,中華民国が採用していた法体系であり,清国末期に先進諸国の立法例を参考にして西欧の近代法をモデルに導入されたものです。
そして,当時アジア諸国の中でもヨーロッパ諸国に追いつこうとしていて比較的早く法整備を行っていた日本へ留学する学生は多く,日本の岡田朝太郎や松岡義正ら学者や実務家などの協力と努力により,清国そして中華民国でも20世紀初頭に各法典の制定が進められました。
このように台湾では,西欧の流れを受け継ぎながらも日本法の影響を強く受けて法制度が構築されているため,法律用語に関しても共通する点が多いのです。

台湾は日本から距離が近く,文化や慣習も似ている所が多い国です。
台湾を訪れた際には,さまざまな共通点を見つけながら観光を楽しんでみてはいかがでしょうか。

ラジオ番組『コトニ弁護士カフェ』
毎週金曜日10時30分から三角山放送局で放送中!
隔週で長友隆典護士&アシスタントの加藤がお送りしています。
身近な法律のお話から国際問題・時事問題,環境や海洋のお話まで,様々なテーマで約15分間トークしています。
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三角山放送局 reqest@sankakuyama.co.jp または当事務所のお問い合わせフォームでも受け付けております。

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