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相続のいろは第6回 特別の寄与|寄与分が認められる要件とは

「相続のいろは」シリーズでは、相続に関するお役立ち情報をお届けしています。
これまでは「遺言書」「遺留分」そして「遺留分侵害請求」についてご紹介してきました。
今回は「寄与分」といって、被相続人の財産の維持や増加に貢献した場合、相続分が増える制度について解説します。
令和元年に法律が変わり、寄与分が認められる範囲が広がりました。

これまでの制度(寄与分:民法904条の2)について

これまで,被相続人の財産の維持・増加について貢献した相続人は,「寄与分」といって,相続分に寄与分を加えた額をその相続人の相続分とする規定がありました(民法904条の2)。

「共同相続人中に,被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付,被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした者があるときは(中略)寄与分を控除したものを相続財産とみなし(中略)算定した相続分に寄与分を加えた額をもってその者の相続分とする。」

民法904条の2第1項

次のような場合,寄与分が認められる可能性があります。

事例A
被相続人の長男が,家業の食堂を30年ほどずっと手伝い続け,収益を増加させてきた場合。長男に寄与分が認められる。

事例B
寝たきりの被相続人の介護を次女がほとんど毎日行ったことで,介護費用を節約した場合。次女に寄与分が認められる。

寄与分が認められるためにはいくつかの要件がありますので,解説していきます。

寄与分の条件①財産の増加又は維持

まずは,「被相続人の財産の維持又は増加」が要件です。

財産の大幅な減少は食い止めた(減少傾向をやわらげた)ものの,結果として財産が減ってしまった場合は,原則として認められません。上記Aの例ですと,もともと赤字経営の食堂の赤字幅が小さくなっただけでは,寄与分は認められないでしょう。

寄与分の条件②特別の寄与

次に,「特別の寄与」であることです。

「特別」とは,通常の貢献ではなく真に「特別」である必要があります。
被相続人の事業をたまに手伝ったり,被相続人の身の回りの世話を月に数回行ったりしていただけでは「特別」とは認められません。
上記Bの例ですと,次女が週に一度だけ被相続人の自宅に来て身の回りの世話をしていたのでは,原則として「特別」とは認められないでしょう。

寄与分の条件③相続人であること

これまでの制度で問題となっていたのが「共同相続人中」という要件です。
すなわち,寄与分を主張するためには相続人でなければなりませんでした。

そのため,Aの例で長男が亡くなったあとに長男の妻が家業を毎日手伝っていた場合,Bの例で介護したのが次女ではなく被相続人の姪であった場合などは,これまでは寄与分として認められなかったのです。
これでは,現実とは合わないということで,今回以下のように新しい制度に変わりました。

新しい制度(特別の寄与:民法1050条)

この「共同相続人中」という要件を見直した新しい法律が,令和元年7月1日に施行されました。
これが「特別の寄与」(民法1050条)です。

「被相続人に対して無償で療養看護その他の労務の提供をしたことにより被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした被相続人の親族(中略)は,相続の開始後,相続人に対し,特別寄与者の寄与に応じた額の金銭(以下この条において「特別寄与料」という。)の支払を請求することができる。」

民法1050条第1項

これまでの制度で「共同相続人中」となっていたものに加えて,「被相続人の親族」も寄与分を主張できるようになりました。
「親族」とは民法725条に規定された者で「六親等内の血族」「配偶者」「三親等内の姻族」のことを指します。

Aの例では長男の妻は被相続人からみると法律上親族になりますので,長男の妻は寄与分を請求することができます。Bの例でも,被相続人の姪に寄与分が認められます。

ただし,新しい法律においても,従業員や親しい友人が特別な寄与に大きく貢献したとしても,民法725条で規定する「親族」に該当しない限り寄与分は認められません。
親族ではない方に相続分を残したい場合は,遺言書を作成することになります。

特別寄与料の請求について

法律にも記載されているとおり,特別寄与料を主張する場合は,「相続の開始後」に「相続人に対して」支払いを請求することになります。
相続人との話し合いで支払額についてまとまれば問題はありませんが,まとまらないときは裁判所で手続きをすることになります。
その場合,相続を知ったときから6カ月又は相続開始日から1年以内という期間制限がありますので注意が必要です。

相続の疑問は専門家に相談しましょう

以上のように,これまでの寄与分に加えて特別の寄与についても,法律上の権利が明記されました。
しかし,相続に関してはトラブルが多いのも事実です。
複雑な事情がある場合や相続人同士が疎遠な場合など,なかなかスムーズに話し合いが進まない場合もあるでしょう。

揉めごとが起こりそうなときは,はやめに弁護士などの専門家に相談することをお勧めします。
弁護士にご相談いただいた場合は,状況に応じて調停などの裁判手続きにも対応いたします。

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