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憧れのロシアを見つめて28年<ボストーク47号より>

私は札幌市内で長友国際法律事務所という法律事務所を経営しています。日本弁護士会の国際交流委員会でロシアグループに所属し,2017年には日露法律家協会という組織を立ち上げ活動しています。

北海道では北海道弁護士会連合会の北方圏交流委員会の委員として,ロシアとの交流事業にも力を入れています。私が弁護士としてロシアに深く関わっている話をすると,「どうしてロシアなの?」と多くの方々から不思議がって聞かれることがあります。

私は九州出身で,雪もほとんど降らず広い平野もない土地で生まれ育ちました。もちろん九州は大好きですが,広大な大地が真っ白な雪で包まれる,そんな風景のロシアや北海道に対して,心のどこかでずっと憧れを覚えていました。

 

初めての海外旅行でシベリア鉄道へ

1992年の夏,九州大学の大学院に通っていた私は,翌年の卒業旅行の行き先を考えていました。そこで最初に頭に浮かんだのが,ずっと憧れていたロシアという国。当時のロシアはソ連崩壊直後で,まだまだ情報が少ない時代でした。

ソ連時代は「悪の帝国」と呼ばれていたこともあり,何となくイメージが悪い未知の国でした。

未知の国,広大な大地,どこまでも真っ白な世界。私にとって見たことも経験したこともない世界をどうしても見たい。その気持ちを抑えられず,私は大学生協の旅行会社に向かいました。

「一人でシベリア鉄道に乗ってパリまで行きたい。どうしたらいいのか?」と尋ねました。旅行会社の方もびっくりして「ロシア語はしゃべれるのか?」などと聞かれましたが,もちろんロシア語は全くしゃべることはできない。知り合いもいない。人生初の海外旅行。

私はシベリア鉄道を含む2週間のツアーに参加することにしました。
そしてついに,初めてのロシアへ。1993年2月,当時の新潟空港からハバロフスクへ飛び立ちました。

 

気さくで親切,ロシア人のあたたかさに触れる

初めてのロシアは感激することばかりでした。シベリア鉄道の中で,言葉もわからないのにロシア人とウォッカを飲み交わしたり,持ち込んだタバコやデジタル時計とロシアの革製品や雑貨の物々交換をしたり。

ツアー途中で立ち寄ったキエフでは,夜間に一人で歩いていると警察に追いかけられて警察署まで連れて行かれるという貴重な経験をしました。

世界といえば日本とアメリカとヨーロッパくらいしか感じていなかった私にとって,どことも異なるロシアという独自の世界があることに驚きを隠せませんでした。何よりも感銘を受けたのは,ロシアの人たちの気さくさと親切さです。

サンクトペテルブルグでホテルまでの道がわからず,夜にバス停の前で路頭に迷っていた時のこと。ロシア人男性が近寄ってきて,私が泊まっていたインツーリストホテルの近くまでバスを乗り継いで連れて行ってくれたことがありました。

片言のロシア語と英語でどうしてもお礼をしたいと伝えても,「何もいらない」と言ってお礼を受け取ろうとしなかったので,記念に日本のコインを少し渡しました。モスクワでも似たようなことがあり,市内で道に迷っていると,やはり男性が声をかけてきて目的地まで連れて行ってくれました。

かつて「悪の帝国」と呼ばれていた国の人たちが,実はとても親切であたたかい人たちだったことに気が付かされ,「これからもロシアと繋がっていこう」と心に決めたきっかけになりました。


変わりゆくロシア,変わらない憧れ

あれから28年の月日が経ちました。仕事やプライベートの理由から,2001年以降は年に何度もロシアに行くようになりました。西はサンクトペテルブルグから,東はチュクチやサハリンまで,広いロシアの東西を駆け回りました。

初めてロシアに行った頃は,街の中を走っている車はボルガやジグリーくらいでしたが,今ではほとんどが輸入車となり,人々の生活も豊かになったように感じます。

経済や社会情勢の変化はあっても,私の心に芽生えたロシアへの憧れは変わることなく,むしろ知るほどに大好きになっています。弁護士として,そして一人の国際人として,日露友好と発展のために,これからもお役に立てることを切に願っています。

※本記事は、NPOロシア極東研が発行する機関誌『ボストーク』47号に掲載された長友隆典弁護士のコラムを、発行者の使用許可のもと転載しております。

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