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東京2020オリンピック開催,無観客開催の影響は?

『コトニ弁護士カフェ』2021年7月16日放送分

2021年7月21日からついに開催される東京2020オリンピック。
コロナ禍で1年の延期を経て,オリンピック開催自体についても慎重に議論されてきましたが、予定通り開催が決まり、すでに各国から選手たちが続々と入国しています。
ここにきて,東京をはじめ各場所での無観客開催が決定しています。

7月21日からスタートする東京2020オリンピック

まずは、オリンピックのスケジュールについて簡単に説明します。
21日から競技が始まり,1日目はソフトボールとサッカーが開催され,開会式は23日金曜日,国立競技場でおこなわれます。
今回は,野球・ソフトボール,空手,スケートボード,スポーツクライミング,サーフィンの5競技が追加され,33競技が各場所で実施される予定です。
ご存じの通り札幌でも一部競技が実施され,7月21日と24日サッカー,そして8月5日から8日の間に,男女のマラソンと競歩がおこなわれる予定です。

札幌開催のマラソンと競歩も無観客が決定

札幌で開催予定のマラソンのコースは,すでに発表されています。
大通り公園からスタートして,テレビ塔を背にまず南に向かい,すすきの,長島公園,豊平川を越え,南平岸の近くまで行き,ぐるっと回って学園前のあたりから創成川沿いを抜け,北へ向かいます。
北区役所で折り返して,北海道大学の中を通り抜け,北海道庁の前を通るコースです。
一方,競歩のコースは,札幌駅からすすきのまでのメイン通りを周回するコースです。
いまのところ,公式ホームページを見ても沿道での観戦は自粛をお願いするのでテレビなどでの観戦をしてくださいということになっていますが,特にマラソンは広範囲を走りますので,お仕事中でもビルの窓から見れるとうれしいですね。
せっかく札幌でオリンピックの競技をやってるのに見に行けないのは本当に残念だと思ってしまうところですが,このような状況ですので、仕方がありません。

東京202020オリンピック・パラリンピック:札幌開催競技の詳細
https://www.city.sapporo.jp/sports/tokyo2020/index.html

マラソン・競歩のコース紹介
https://www.city.sapporo.jp/sports/tokyo2020/marathonracewalk/index.html

誰のための、何のためのオリンピックなのか?

東京で開催される競技でも,コロナ対策の観点から,観客を動員していいのかどうかという議論がかなりなされていました。
東京,神奈川,千葉,埼玉は無観客が決定し,その後,仙台のサッカー,札幌のサッカー,福島の野球とソフトボールと,首都圏以外の開催地でも続々と無観客とすることが決定しています。
このような重要な施策や方針は,最終的なゴールや目的は一体何なのかということを,まずは明確にしないと手段を決めることができません。
一体何を守ろうとして無観客を決定したのか?それが明確にならないと国民も選手も納得しないのではないでしょうか。

まず,端的に私の意見ですが,無観客は反対です。
反対の大きな理由は5つあって,まず1つはプロ野球,サッカー,コンサートなど大規模イベントが既に有観客で実施されていることとの整合性がないということです。
夏の甲子園もまだ未定らしいですが無観客でやるとは今のところいわれていません。
なぜオリンピックだけ無観客なのか合理的な説明がありませんよね。

2つ目に,政府,行政だけでなく国民全体がオリンピックの開催に合わせてワクチン接種を実施してきた結果,既にワクチン接種を終えられた方が増えてきたことを考慮すると(補足:7月11日時点で全回数摂取は17.9%),ワクチン接種を終えた方には観戦を認めるという方法もあったと思います。

3つ目は,既に疲弊している飲食店,旅行関係者,その他多くの人々にこれ以上の負担を強いることが出来ないという経済的な観点です。無観客にすることで,これらの業種が経済的利益を得る大きな機会を損失します。

そして4つ目には,オリンピックが日本で行われるのはもうしばらく無いことを考えると,世界最高のアスリートの競技を間近に見ること,その感動を直接体験する機会を逃すことになるからです。特にこれから未来を背負っていく子供たちにとってこの観戦の機会を奪うことは良いとはいえません。

最後に5つ目として,無観客の決定や飲食店に対する営業自粛などについて法的根拠や決定プロセスがはっきりしないことです。
たとえば,これこれこういう条件になったら無観客にする,飲食店の営業自粛をするとはっきり明示されていたらまだしも,そのような基準もはっきりせず法的根拠もありません。

誰がどういう基準で決めたのかはっきりわからないから,私たち国民の納得できないのだと思います。
いずれにせよ,東京オリンピックが延期されることが決まったのはもう1年以上も前のことですから,その後,どのようなオリンピックを開催するか,そのためにはどうしたらいいのかを具体的に検討そして手段を実行することが可能だったはずです。
一体なんのためのオリンピックなのか,誰のためのオリンピックなのか?
それこそが,私たち国民全員が感じている疑問ではないでしょうか。

オリンピック無観客の経済的損失は甚大

飲食業界や旅行業界の経済的損失だけでなく,観戦チケットの収入,スポンサー収入など,経済的な損失も計り知れません。
無観客にした場合,観戦チケットの収入がなくなったことだけでまず900億円の損失と言われています。
さらに,実際にはチケット代だけでなく,交通や移動,宿泊の消費,飲食の消費などが見込めるわけです。
そして,海外からの観戦客の受け入れ中止で約1500億円の損失ともいわれています。

あまりお金の話ばかりをすると,コロナ感染対策より経済が大事なのかと思われてしまうかもしれませんが,ずっと私が言い続けている通り,どちらも同じぐらい大事なのです。
無観客にして,感染拡大は防げたとして,1000億円を超える経済損失があった場合と,観客を入れて経済効果を得ることで感染者数が増えて緊急事態宣言などの平常の自粛生活がさらに続く場合と,いったいどちらが結果的に良いのか?はっきりいって判断するのは難しいです。
「経済なのか命なのか」という単純な比較ではなく,たとえコロナ感染は避けられても,日本全体の経済が死んでしまったら?仕事を失い,日々の生活に困るようになったら?
そう考えると,結果的にどちらが命を守ることにつながるのか,簡単には比べられないと私は思います。

オリンピックだけが無観客という違和感

K東京はまた緊急事態宣言になっておりますが,こちらも先ほど先生も指摘されたように感染対策を万全にして,通常通り開催しているイベントも数多くあります。
たとえばプロ野球の観戦は通常通りおこなわれていますし,コンサートなども席を一席ずつ空けるとか,場合によっては特に空けないで開催しているケースもたくさんあります。映画館などもそうです。

飲食やおしゃべりを禁止にする,換気を万全にするというのを徹底すれば,今回のオリンピックもすべて無観客にする必要はなかったのではないでしょうか。
もちろん記念すべきオリンピックの競技を目の前で見て,盛り上がって歓声を上げてしまうおそれもありますが,ひとりひとりが,会場で見られること自体を貴重な機会だと理解して,徹底して押し黙るように気をつけるしかないです。
無観客にしてしまったことで,逆に,熱心なスポーツファンの皆さんが,「もう見に行けないならみんなで一緒に見て盛り上がろう!」と,たとえばスポーツバーだとか,個人の自宅だとか,大勢で集まってわいわい観戦するようなことが起こってしまうのではないかと心配しています。
会場であれば飲食禁止,もちろんお酒は禁止,大声や歓声も禁止と,厳しくルールづけることができますが,たとえば10人とか20人という小規模の団体がどこかのスペースを貸し切って,お酒飲みながら観戦するほうが,よっぽどあぶない気もします。

ワクチン接種を速やかに

ちなみに,先日ロンドンで開催されたウィンブルドンテニス大会ですが,イギリスでは毎日3万人の新規感染があるものの,満員の観客を入れて開催されていました。(補足:放送日時点でイギリスのワクチン接種率は約52%)
日本も速やかにワクチン接種を進めて,大規模なイベントを今まで通り開催できるようになることを願います。

『コトニ弁護士カフェ』今回の放送はこちらから視聴することができます!

『コトニ弁護士カフェ』次回の長友隆典弁護士の担当回は, 2021年7月30日放送です!

ラジオ番組『コトニ弁護士カフェ』
毎週金曜日10時30分から三角山放送局で放送中!
隔週で長友隆典護士&アシスタントの加藤がお送りしています。
身近な法律のお話から国際問題・時事問題,環境や海洋のお話まで,様々なテーマで約15分間トークしています。
皆様からの身近なお悩み,ご相談などのリクエストもお待ちしております。
三角山放送局 reqest@sankakuyama.co.jp または当事務所のお問い合わせフォームでも受け付けております。

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