4の放送では「緊急事態宣言の法的根拠」についてお話をしました。
現在,全国的にまた感染者数が増加していることから,「3月の緊急事態宣言は何だったのか?」「今はどうして緊急事態宣言が出ないのか?」と,再び多くの方々が緊急事態宣言について関心を持っているのかもしれません。
緊急事態宣言が解除されてから2ヶ月経過しました。
7月に入ってから全国的に感染者数が増加して,東京都では1日の感染者数が400名を超えるなど過去最多記録を更新しています。
一方でGo Toキャンペーンの開催や大型イベントの緩和など,人の移動や消費を推進する流れもあって,感染が徐々に広がる中で感染を防止しながら経済を回すという,私たち国民にとっても難しい局面です。
私はGo Toキャンペーンの内容自体は良いと思っています。
国内旅行で旅行代金が最大半額補助されるなんて,旅行が好きな人はまず嬉しいし,普段あまり旅行をしない人も「それならどこかに行こうかな」という気持ちになるでしょう。
Go Toイート,Go Toイベント,Go To商店街など,旅行だけでなく地方での消費を促すキャンペーンも順次予定されています。
とはいえ,キャンペーンを始めるタイミングが最適だったとは言えません。
感染者数が全国的に増えていく中での旅行のキャンペーンというのは,旅行する方も旅行者を受け入れる観光地や施設にも不安がありますよね。
キャンペーンのが決まった後から東京を除外するなど,不公平感も拭えません。また,東京の人でも複数で旅行するときに代表者を別の人にすれば旅行できてしまうみたいだし,だからといってホテルで宿泊者全員の身分証明書を確認するといっても,どこまで管理できるかわかりません。
万が一旅先で旅行者の感染者が発生した場合,その方がどこからどのようなルートで来て,どのぐらいの人と接触したのか?その後の受け入れ先などはどうなるのか?そういった心配もあります。感染者の多くは無症状という情報もありますし,そうなると自覚症状の無い感染者が様々な場所を旅行して,知らずに感染を拡大する可能性も大いにあります。
GoToキャンペーンの開催は,もう少し旅行者や受け入れ先が困らないような施策をきちんと取ってから決行すべきだったのかもしれません。感染者がほとんど出ていない地域にとっては,ある程度感染拡大している都市部から人がたくさん来るのは,やめてほしいと思ってしまう気持ちもすごくわかります。
4月の放送では,緊急事態宣言がどのような法律に基づいて発令されたのか,ということを説明しました。
平成24年に施行された「新型インフルエンザ等特別対策措置法」という法律を根拠として,さらに3月に新型インフルエンザ特措法に新型コロナウイルス感染症も含めるという法改正をして,4の緊急事態宣言の発令が可能となりました。
いま再び感染拡大する中で緊急事態宣言の再発令を求める声もありますが,安倍首相は7月24日には「高い緊張感を持って注視しているが,再び今,緊急事態宣言を出す状況にはない」とコメントしました。
たしかに感染者数だけを見ると3月や4月を超える状況であり,どうしてまた緊急事態宣言にならないのか?と疑問になるかもしれません。
いま再び緊急事態宣言が発令されないのは,感染者数そのものは増えていますが,重症者数や死亡者数が著しく増加しているわけではないからだと言えます。
新型インフルエンザ特措法の緊急事態宣言の主な要件は2つあります。
一つ目は「通常のインフルエンザと比較して重症症例が相当多くみられる場合」という要件。
つまり,普通のインフルエンザと比べて,明らかに重症化する確率や致死率が高い,ということです。
そして二つ目の要件として「①報告された患者等が誰から感染したか不明 ②報告された患者等が誰から感染したかは判明しているが,感染の更なる拡大の可能性が否 定できないと判断された場合」という要件があります。
月の時点では,まだ新型コロナウイルス感染症が登場したばかりで,一つ目の要件,つまり日本国内の重症化率や致死率についてはまだ不明な状況でした。
そして二つ目の要件の感染経路が不明,または経路はわかるが更なる可能性が否定できないと判断された場合,というのに該当したのだと思います。
しかし現在は,要件1について,新型コロナウイルス感染症については,基礎疾患がある方や高齢者の方が重症化する確率が高いことがわかっていますが,全体としての重症化率は一般的なインフルエンザと比較して,そこまで高いわけではないことがわかってきました。
そこが,今回は緊急事態宣言が発令されない理由だと私は考えます
この数ヶ月で倒産・廃業になった事業の数を見ても日本国内の経済的なダメージは明らかです。
もちろん感染を予防して健康を守ることが一番大切ですが,でもこれ以上経済が停滞してしまうと本当に困る人もどんどん増えていってしまいます。
政府としては,感染者数の数だけでなく国全体の利益を考えた上で合理的な判断をしなければならないですし,すべての国民が納得するような施策も難しい状況だと推測します。
そんな中で私たち一人一人にできることは,感染を予防しながらも,過度な自粛はせずに,できるだけ地元のお店で買い物するとか,あとはせっかく色々な助成金がありますので,特に経営者の皆さんはうまく利用してこの危機を乗り越えていければと思っています!
―ありがとうございました。
次回の『コトニ弁護士カフェ』長友弁護士担当は8月21日放送です!
よろしくお願いいたします。
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