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バックカントリーでの事故,責任の所在は?

『コトニ弁護士カフェ』2024年3月1日放送分

3月に入りましたが,まだまだ寒い日が続いています。
バックカントリーとは,そのまま日本語に訳すと「裏山」という意味で,限りない自然の中を滑るアクティビティです。
しかし,管理された場所ではないため,大きな危険を伴うこともあり,毎年事故が起きています。
衝突事故や滑落,悪天候や雪崩に巻き込まれることもあり,最悪の場合は行方不明になって亡くなることもあります。


つい先日もバックカントリーによる痛ましい事故がありました。

バックカントリー中に雪崩に…外国人とみられる男女2人が死亡するなど3人死傷 6人パーティで入山し巻き込まれたか 北海道羊蹄山」(2024年3月11日 UHBニュース)

今回は,そんなバックカントリーでの事故と,その責任についてお話しします。

今年も起こったバックカントリーでの事故

2024年に入ってからも,バックカントリーでの事故が発生しています。
北海道では,ニセコの羊蹄山や,清水町のペケレペケ岳での事故が報告されており,どちらもバックカントリーでスキーをしていた方々が雪崩に巻き込まれ,行方不明になっています。

北海道だけでなく,長野県や栃木県など,全国各地のスキー場でもバックカントリーによる事故が毎年発生しています。

また,日本のパウダースノーは外国人にも人気があるため,スキーやスノーボードをしに日本を訪れた外国人観光客の死亡事故も報告されています。

▼参考サイト

バックカントリーがファンを魅了し続ける理由

行方不明者や死亡事故が起きているにも関わらず,バックカントリーに挑戦し続ける方々は多くいます。
バックカントリーでは,まだ誰も滑走していない手付かずの雪の上を,まるで雪の中を潜るかのように雪けむりを巻きながら滑ります。
さらに,壮大な自然の風景を眺めたり感じたりしながら滑ることができるのが,バックカントリーの最大の魅力です。
スキー場では味わえないような,崖などを滑り降りるスリルと気持ちよさが,多くのバックカントリー愛好者を魅了していると考えられます。

バックカントリーは「無理をしない」判断が重要

多くの愛好者がいるバックカントリーですが,私は過去に遭難して危険な状況に置かれた経験もあり,天候や気温などには十分に気を配っています。
防寒具や非常食,飲み物なども,遭難時の備えとしてリュックに携帯しています。
また,観光客などが遠方から訪れる場合,天候が多少悪くても「今日しかチャンスがないから行こう」という考えを持つ方もいるかもしれません。
しかし,スキーやスノーボードの上級者でもバックカントリーは非常に危険です。
命を守るためには,天候や気温などを考慮し,「無理をしない」という判断が重要です。

バックカントリーの規制・事故発生時の責任について

バックカントリーはスキー場の管理区域外であるので,原則として事故が起こっても自己責任です。
バックカントリーの愛好者は,そのことを理解した上で挑戦し楽しんでいることでしょう。
しかし,自己責任とはいえ,実際に遭難事故などが起こってしまった場合,捜索や救助に多くの人が関与することになります。

警察や消防などの公的機関による救助は原則として費用はかかりませんが,地元の民間救助団体などが出動した場合,費用が発生する可能性もあります。
バックカントリーとはスキー場の管理区域外のことを指しますので,バックカントリーで事故が起こった際,報道で現場近くのスキー場名が報じられることがありますが,多くの場合,実際に事故が発生したのはスキー場ではなく自然の雪山の中です。

したがって,名前が報道されても隣接するスキー場には原則として責任は無いと考えます。
スキー場には責任がないとはいえ,「立ち入り禁止規制があれば事故は減らせるのではないか」という考えもあります。

たしかに,私有地などでは法的手段で規制が可能ですが,山などの私有地では強制力が限られてしまいますが,釣りの禁止区域のように,条例で罰則や罰金を設定することは可能です。

たとえば,ニセコエリアでは「ニセコルール」という決まりで禁止区域を厳しく定めており,禁止区域に入った場合にはリフト券の販売が制限されるなどの措置がとられています。
バックカントリーでの雪崩による死亡事故も発生していることやニセコエリアでは自然の中で滑走することが魅力でもあり,ニセコでは安全を第一に考えてこれらのルールを策定しています。

▼参考

ニセコルール/NISEKO RULES 2023-2024

ただし,バックカントリー愛好者の中には安全を重視して真剣に活動している方々も多く,すべてを規制することも考えものです。

バックカントリーをする際の安全対策

バックカントリーに挑戦する際は,安全対策をしっかりと行いましょう。
ヘルメットやビーコン,非常食などの安全装備は必須です。
特に初心者の方は,ガイドをつけることも重要です。
場所によっては,登山届を提出する必要がある場合もあります。
私自身も,バックカントリーを楽しむ際には,ヘルメットをかぶり,リュックには遭難時のための非常食や飲み物,防寒着,そして救助を待つ間の防寒具としてアルミシートを携帯し,さらに雪道でも歩けるようにスノーシューを持ち歩いています。

「安全第一」で無理をしないことが大切

バックカントリーは,最終的には自己責任です。
そのため,一人一人がその危険性を十分に理解しておかなければなりません。
スキーやスノーボードの延長ではなく,「冬山登山」と同様の意識と準備が必要です。
以下の「全国スキー安全対策協議会」のページにもバックカントリーでの注意事項などが日本語や英語,中国語で紹介されていますので,ぜひご確認して安全なバックカントリースキーやスノーボードを楽しんでください。
安全を第一に考え,無理をしないこと,そして必要な時には救助費用を負担する覚悟も持つことが大切です。

▼参考サイト

ラジオ番組『コトニ弁護士カフェ』
毎週金曜日10時30分から三角山放送局で放送中!
隔週で長友隆典護士&アシスタントの加藤がお送りしています。
身近な法律のお話から国際問題・時事問題,環境や海洋のお話まで,様々なテーマで約15分間トークしています。
皆様からの身近なお悩み,ご相談などのリクエストもお待ちしております。
三角山放送局 reqest@sankakuyama.co.jp または当事務所のお問い合わせフォームでも受け付けております。

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