2024年11月5日、アメリカ大統領選挙の一般投票が行われました。民主党のカマラ・ハリス氏、共和党のドナルド・トランプ氏が立候補し、同月9日に各州の結果が出そろい、ドナルド・トランプ氏が圧勝で当選しました。
予想以上に早い段階でトランプ氏の勝利は確定していたのですが、トランプ氏が勝利を収めたことで、すでにアメリカ国内では新たな政策への期待や、今後の動きについて多くの議論が行われているようです。
日本ではハリス氏を支持する報道が多く、まるで彼女が当選するかのような印象を与える報道もありましたので、トランプ氏勝利の報道が出てからは、日本の報道はあまり盛り上がっていない印象です。
今回は、なぜトランプ氏が勝利したのか、その理由と今後の展望について解説します。
トランプ氏が勝利した大きな要因として、スイング・ステートでの選挙活動の成功が挙げられます。スイング・ステートとは、アメリカ合衆国大統領選挙の勝者総取り方式において、共和党・民主党の支持率が拮抗し選挙の度に勝利政党が変動する州を指し、「注目州」「揺れる州」「激戦州」「パープル・ステート」とも呼ばれることもあります。
このスイング・ステートのうち前回の選挙でバイデン氏が勝利したペンシルベニア、ウィスコンシン、ミシガン、ジョージア、ネバダ、アリゾナなどでトランプ氏が軒並み勝利を収めました。前回のバイデン氏が勝利した際は、これらの州を抑えていたことが決め手でしたが、今回はトランプ氏がこれを取り戻しました。
また、勝利した理由については、主に以下の3つがあると言われています。
経済問題において、ハリス氏の経済政策の訴求力が十分ではなく、トランプ氏のほうが「経済成長」と「物価安定」を担保できるという印象を多くの有権者に与えました。今回の選挙では、経済問題が有権者の最大の関心事であり、トランプ氏がその分野で優位に立ちました。
特に有権者の間では、バイデン政権の最初の3年間の物価上昇の印象が根強く、ハリス氏のメッセージはなかなか浸透しなかったようです。
トランプ氏はバイデン・ハリス政権の経済政策を批判し、自らがより信頼できるリーダーであると訴えました。データ提供会社エジソン・リサーチの出口調査でも、「経済が最重要」と答えた有権者の79%がトランプ氏に投票しています。
移民問題に対するトランプ氏の強硬姿勢が、特に保守的な地域や有権者層に強く支持されました。選挙活動では不法移民の大量強制送還を公約に掲げ、国内での取り締まりを強調していたのも印象的でした。
再選後は、1期目の国境政策復活とバイデン政権の移民政策の転換を最優先課題としています。
トランプ氏と支持メディアは、ハリス氏やバイデン政権を批判する情報を効果的に活用しました。誤情報とも言われていますが「災害支援金が不法移民に使われている」「バイデン政権が死者数を隠蔽している」といった情報が広がり、民主党への不信感が増幅されたとも言われています。
有権者が抱く「政権への不信」を自らの支持に転換したのです。
▼参考
ロイター|焦点:歴史的選挙戦戦ったハリス氏、なぜ敗北したのか
一般社団法人平和政策研究所|トランプ2.0の衝撃 ―トランプ大統領選勝利の背景と新政権の政策&世界への影響―
ところで,日本でなぜハリス氏が優勢だと報道がされていたのかも気になるところでしたが,今回の大統領選挙に限らず,伝統的にカリフォルニアやニューヨーク,ワシントンDCなどの大都会がある州は伝統的に民主党が強い傾向がありました。
今回の選挙でもワシントンDCでは90%がハリス氏に投票しています。
一方で,ほとんどの州は人口も少なく保守的な地盤が強いため,伝統的に共和党が強い状況となっています。
日本のマスメディアが主としてカリフォルニアやニューヨークなどの大都市から情報を入手していたのかもしれません。
私はウィスコンシンやノースカロライナなどのスイング・ステートに暮らしていましたが,このような州から情報を得ていたらトランプ氏が優位ということも早い段階でわかっていたかもしれません。
トランプ氏は政権復帰後、メキシコ国境の管理強化や、石油掘削許可の拡大でエネルギー政策の転換を図る構えです。7月の党大会では「就任初日に電気自動車(EV)の義務化を終わらせる」と表明しています。
新政権はトランプ氏の意向に忠実な人材だけを集めるとみられ、独善的な政権運営に陥るリスクも指摘されています。副大統領となるJ・D・バンス上院議員は初当選から2年と政治経験が浅く、政権内はトランプ氏の顔色をうかがう側近ばかりになる懸念もあります。
トランプ氏が大統領となった場合の日本との関係も、今後注目したいところです。
トランプ氏は安倍元総理と大親友でしたが、石破総理との関係はまだ不明確で、初めての電話会話はわずか5分程度にとどまったそうです。
2人の関係を通じて日米関係が今後どうなるのか、展開が気になるところです。
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