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トランプ氏、大統領復活の可能性は?|弁護士が解説

『コトニ弁護士カフェ』2022年12月2日放送分

本日は,海の向こうのアメリカのお話しです。
2022年11月はアメリカにとって,とても大切な月でした。
ご存知の方も多いかと思いますが,アメリカでは大統領選挙のちょうど中間に,下院の全員と上院の約3分の1を改選する「中間選挙」というものがあります。
アメリカの今後の政策を決定する重要な選挙というだけではなく,今の大統領の働きを評価して,次の大統領選の行く末を占うという点で非常に重要な選挙。
特に,昨年の中間選挙は,トランプ氏が次回の大統領選挙でまた出馬するために復権をねらっているとし,世界の注目を浴びていました。
今回は,トランプ氏の大統領復活の可能性についてお話ししていきます。

トランプ氏,前回の大統領選後の動向について

トランプ氏は前回の大統領選挙で負けたことで,もう表舞台から去ったと思っていませんでしたか?
前回の選挙のあとも,いつまでも「不正選挙だ」と叫び続けたり,支持者に議会を占拠させるような発言があったり。
特定のメディアをフェイクニュースとレッテルを貼るわりには,自身の発言がフェイクだということでTwitterなどのSNSでアカウントを凍結されてしまうなど,その評判は最盛期とは比べものにならない状態でした。
特に,今年の7月,連邦議会乱入事件を調査する下院特別委員会による公聴会で,証人に対して脅迫的な発言をするなどの問題が見られました。
この公聴会は全米で約2000万人もの国民が視聴したといわれているのですが,やはり支持率の低下につながったと捉えられるでしょう。

トランプ氏が復権しつつある理由

そんなトランプ氏が、なぜ今になって復権しつつあるかといいますと,やはりトランプ氏の発信力が強いことが理由のひとつです
2022年8月にFBIから強制捜査をされた際には,メディアの影響力を味方につけて,バイデン政権の批判をするにとどまらず,同じ共和党内でトランプ氏の弾劾に賛成した議員に対して対抗馬を擁立しました。


詳しく説明すると,トランプ氏の弾劾に賛成票を投じた共和党下院議員10人について,この中間選挙のための共和党の候補を決める予備選挙で対抗馬を送り込みました。
その結果,10人のうち8人が予備選挙で落選したことで,トランプ派の人を候補にすることに成功し,再び勢いを増すきっかけとなりました。
この中間選挙の予備選挙の中でトランプ氏は,いわゆるアメリカの伝統的な政治家系であるブッシュ家,クリントン家,チェイニー家といった現代のアメリカ政治の貴族のような方々の勢力を抑えるようなかたちになったのです。
この流れをみて,これまで反トランプ派に傾いていたFOXニュースなどの保守的なメディアも,トランプ氏に好意的な報道を始めました。
そうなると,共和党内にトランプ氏に歯向かう方はいなくなってしまったのです。
そこで,この中間選挙は事実上,共和党はトランプ氏が仕切るようになりました。
しかも,今年の中間選挙は当初から共和党が優勢といわれており,この頃はトランプ氏の頭の中は次の大統領となることを夢見ていたのかもしれません。
各種メディアなども,選挙で共和党が勝ったら,トランプ氏は完全復権と報道していました。

中間選挙,結果やいかに

ところが蓋を開けてみると,上院では共和党は最終的な結果で負けが確定し,下院でも思ったように勝てませんでした。
トランプ派といわれる共和党の候補者が次々と負けていったのです。
上院と下院で接戦となっている選挙区のトランプ派の候補は、1勝7敗とほとんどが負け越してしまいました。
ジョージア州の上院議員選挙も,トランプ派の候補者と民主党の候補者で決着がつかず,決選投票では共和党候補が結局敗北しました。
また,同時に行われた知事選についても、勝てると思われていたトランプ派の候補が負けてしまいましたし、アリゾナ州の知事選挙でも、トランプ派の候補が当選間違いなしとの下馬評だったのですが,ここでも僅差で負けてしまったのです。
この負けた理由の一つに,中間選挙の選挙戦の間に,自身が大統領選挙に出馬する予定であるようなことを匂わせていたことも理由にあげられました。
そのため,共和党内でもトランプ氏に対する批判もあり,影響力も落ちたのではないかといわれています。

トランプ氏,次回の大統領選挙へ出馬を表明。追い風となるか

そんな中,トランプ氏は11月15日,次回大統領選挙に出馬すると表明しました。
このときの演説でトランプ氏は「米国を再び偉大で輝かしい国にするため大統領選に立候補する」“Make America Great Again”と言って,聴衆の歓声を浴びたのですが,この“Make America Great Again”という言葉が大流行し,帽子などのグッズなども売られています。


この出馬表明には理由があるといわれています。
先ほど,接戦となっている選挙区では1勝7敗と大きく負け越しているとお話しましたが,実は,全ての選挙区でみますと,トランプ氏は上院と下院で合計177人に対して推薦をして,合計163名が当選していたんです。
選挙区全体では推薦候補は9割以上の勝率です。


そして,相変わらずトランプ氏にはコアなファン(岩盤支持層)がいますので,トランプ氏はそういった人たちに支えられて出馬を決意したと言われています。
また,Twitterのオーナーがイーロンマスク氏に代わったことで,それまで凍結されていたトランプ氏のアカウントが復活するなど,トランプ氏にとっても追い風だと思われています。

トランプ氏,再びアメリカ大統領になれるのか?

では,トランプ氏は再びアメリカ大統領になれるのでしょうか?
現状ではなかなか難しい局面ともいえるでしょう。
まず,大統領選は2年後ですが,事実上,共和党の候補者選びのためレースは始まっています。
そして,トランプ氏の最大のライバルは,こちらも「ミニトランプ」といわれるフロリダ州知事のデサンティス氏と言われていますが,既に大統領選に立候補を予定し,トランプ氏と距離を置くなどしています。
そして,トランプ氏は岩盤支持層からの支持は強いのですが,大統領選挙は共和党支持者の中から選ばれるのではなく,アメリカ全部の有権者から選挙で選ばれるわけですから,民主党の支持者からは当然支持を得ないでしょう。
今回の中間選挙の結果がこれを物語っています。
一方で,トランプ氏の娘のイヴァンカ氏も協力しないと表明するなど,家族の中でも亀裂が入っている様子です。
このように,トランプさんが次の大統領になるかどうは,まだまだ予断を許さないのですが,今後の動きに注目したいと思います。

ラジオ番組『コトニ弁護士カフェ』
毎週金曜日10時30分から三角山放送局で放送中!
隔週で長友隆典護士&アシスタントの加藤がお送りしています。
身近な法律のお話から国際問題・時事問題,環境や海洋のお話まで,様々なテーマで約15分間トークしています。
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三角山放送局 reqest@sankakuyama.co.jp または当事務所のお問い合わせフォームでも受け付けております。

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