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秋サケの歴史的不漁ーこれからの漁業のあり方

『コトニ弁護士カフェ』2026年1月23日放送分

毎年秋になると、北海道を中心に水揚げされ、私たちの食卓にも並ぶ「秋サケ」(正式名称:シロサケ、Chum Salmon)。
しかし今、その秋サケが、これまでにないほどの深刻な不漁に直面しています。

これは一時的な不作ではなく、「歴史的な不漁」とも言われる状況です。
その影響は漁業者だけでなく、加工業者、流通、そして私たち消費者にまで広がり始めています。

今回は、秋サケ不漁の実態と背景、そして今後の漁業のあり方について考えていきます。

漁獲量は昨年比3分の1、食卓への影響も


北海道庁が発表したデータによると、2025年10月20日時点の秋サケの漁獲量は、およそ560万尾。2024年の同じ時期は1,560万尾だったので、昨年に比べるとおよそ3分の1まで減っており、平成以降で最も少なくなる見込みとされています。

国内で獲れるサケの約9割は北海道産ですが、根室やオホーツク海沿岸など、これまでサケ漁の中心だった地域で、大きく漁獲量が落ち込んでいます。

定置網にほとんどサケがかからない日もあり、報道では「30年漁師をやってきて、こんな不漁は初めてだ」と漁師の方々が嘆く声も聞こえているようです。

実際にオホーツク方面の漁師さんと話す機会があったのですが、秋サケだけでなく、かつては大量に獲れたカラフトマスもほとんど獲れなくなったとのことで、深刻な事態だと嘆かれていました。

不良の影響を受け、秋サケの卸売価格は、例年の約3倍にまで上がっており、年末にはお正月用の新巻鮭が作れない加工業者もあったようです。

そして、秋サケが獲れないということは、イクラも獲れないことです。

2025年12月の北海道産のイクラは、1kg20,000円〜30,000円以上で、これは過去最高値と言われるほどでした。
道の関係者や専門家はこの不漁について、「来年以降も続く可能性がある」と見ています。

▼参考
Yahoo!ニュース|秋サケが記録的不漁 漁獲量が去年の3分の1に
テレ朝NEWS|サケ歴史的不漁 北海道は前年の4割 地球温暖化の影響か…対策も
カラフトマス(日本系)レポート(水産研究・教育機構)

温暖化に伴う複合的な環境変化が要因か


秋サケ不漁の原因としてまず考えられるのが、地球温暖化による海水温の上昇です。

サケの仲間はもともと冷たい海を好む魚で、暑さに弱いため、海水温が高くなると、秋サケが本来通るはずだった日本近海を避けて、カムチャツカなどの北の海へ行ってしまうことがあります。
さらに海の中では、海流の流れ、プランクトンの量、そしてそのプランクトンを食べる秋サケのエサとなる小魚の分布など、さまざまな要因が複合的に影響していると思われます。
サケは、エサが少ない海ではうまく成長できませんし、体力が落ちた状態で日本に戻ろうとしても、途中で力尽きてしまうこともあります。

また、せっかく日本の海まで戻ってきても、川に戻る直前に問題が起こるケースもあります。
近年、青潮と呼ばれる、海や川の中の酸素が少なくなる現象が起きています。
この影響で、川を遡上する途中の秋サケが酸欠で大量に死んでしまうケースも確認されています。

つまり温暖化に伴い、水温の変化だけでなく、海の環境が全体的に大きく変化しているのです。
特に、先ほどお話ししたカラフトマスは秋サケよりももっと冷水を好みますので、温暖化の影響はかなり大きいといえます。

余談ですが、サケマス類にとって日本は世界でも南限の生息地で、日本のような南の地域でサケマス類が生息しているのは台湾の高山地帯に生息しているヤマメの仲間のサラマオマス(台湾マス)以外にないのです。

昔は九州の遠賀川にもシロサケが戻ってきていた記録があり、私も行ったことがあるのですが、「鮭神社」(サケ神社)という神社があり、シロサケを祭ってあります。

以前、私自身も九州の山奥でヤマメの研究をしていました。
海に下って戻ってくるサケ類が生息するのは日本が最南端ですので、温暖化の影響はカナダやロシアなどに比べて日本が受けやすいといえるでしょう。

▼参考
台湾の国魚、サラマオマスを調べる(水産研究・教育機構)
サケ(シロサケ)(MARUHA NICHIRO)
鮭神社を訪ねて(MARUHA NICHIRO)

長期的な不漁と漁業を取り巻く厳しい現実


秋サケという生き物は、生まれてからまたその川に戻るまでが4〜5年のサイクルなので、秋サケの不漁は、数年単位の積み重ねの結果だということがわかります。

秋サケに限らず、たとえば函館ではスルメイカがたくさん獲れていましたが、今はほとんど獲れなくなりましたし、オホーツクでも毛ガニが極端に少なくなってしまいました。

このように、今当たり前に食べている魚介類が、数年後には食べられなくなるかもしれません。

漁獲量の減少は、漁業者の収入減少に直結し、漁業が基幹産業の地域では、地域経済そのものの衰退にもつながってしまいます。
さらに最近は燃料費などの高騰により、燃料を使って漁場が沖に出ていっても思うように魚が獲れないとなると、状況はさらに厳しくなっています。

引用:水産庁|漁業就業構造等の変化

さらに、漁業者の減少と高齢化も課題になっています。
漁業就業者数は長年減少傾向にあり、1961年には約70万人いましたが、2019年には約14万5千人と約5分の1まで減少し、今後もさらに減少していくと予測されています。

また、水産庁のデータによると、2018年の漁業就労者の平均年齢が56.9歳、65歳以上の割合が約38%と、高齢化も顕著に見られます。

▼参考
e-stat|漁業構造動態調査 漁業就業動向調査 確報 平成29年漁業就業動向調査報告書
水産庁|漁業就業構造等の変化

これからの漁業の在り方を考える


魚が獲れない上に、人も減っているということで、これまでと同じやり方を続けるのは難しい状況です。
「たくさん獲って、たくさん売る」という時代は、終わりに近づいています。

秋サケ不漁を受けて、伝統的な新巻き鮭を、ニジマスなどの養殖サーモンで作る取り組みも出てきています。
材料を安定して確保できるという強みを活かし、味付けや製法を工夫して、新しい価値を生み出そうとしています。

これからの漁業は、漁獲量ではなく、「どう価値をつけて、どう生き残るか」が問われる時代です。
たとえば、ブランドの名前や表示、取引のルール、契約のあり方。せっかく価値を高めても、それが正しく伝わらなかったり、不利な条件で取引されてしまえば、意味がなくなってしまいます。

私自身、水産業に関わる現場の声を聞く中で、法務やブランディングの視点からお役に立てることがまだまだあると感じています。
そこで、水産業のこれからをテーマにしたセミナーや相談会を、定期的に開催しています。

不漁の原因や環境の変化には、一人で向き合うのではなく、考える視点を少し変えるだけで、次の一歩が見えてくることもあります。

水産業が、これからも地域と食卓を支え続けられるように。一緒に考えていきましょう。

水産業に関するセミナー講師のご依頼やご相談は、下記リンクよりお気軽にお問い合わせください。


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