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成年後見制度が26年ぶりに抜本改正-何が変わるのか

『コトニ弁護士カフェ』2026年7月24日放送分

判断能力が十分でなくなった方の生活を、法律の面から支える「成年後見制度」。

この制度を見直す法律が、2026年6月17日に成立しました。実に26年ぶりとなる抜本的な改正で、大きな話題を呼んでいます。

今回は、改正の背景と現行制度の仕組みについて解説します。

成年後見制度が26年ぶりに抜本改正

成年後見制度を見直す「民法等の一部を改正する法律」は、2026年6月17日に参議院本会議で可決・成立し、6月24日に公布されました。

成年後見制度は2000年にスタートした制度ですが、今回の改正はそれ以来、実に26年ぶりの抜本的な見直しということで、大きな注目を集めています。

今回の改正は、成年後見に関する部分については公布から2年6か月以内に施行するとされており、実際に新しい制度が使えるようになるのは、早くても2028年頃になる見込みです。

財産管理と身上保護を支える2つの仕組み

成年後見制度とは、認知症や知的障害、精神障害などによって判断能力が十分でなくなった方を、法律の面から支援する制度です。

預貯金の管理や不動産の売却、介護施設への入居契約など、本人だけでは判断が難しい場面で、家庭裁判所が選んだ後見人が本人に代わって、あるいは本人を支えながら手続きを行います。

後見人の役割は、大きく2つに分かれます。

・財産管理:預貯金の管理や不動産の処分など
・身上保護:介護サービスの契約や施設への入所手続きなど


実際の介護や食事の世話そのものは後見人の仕事ではなく、あくまで契約や手続きの面でサポートする点がポイントです。

法定後見と任意後見という2つの制度

成年後見制度は、大きく分けると次の2つの制度に分かれます。

  • 法定後見制度:すでに判断能力が不十分になった方について、家庭裁判所が後見人などを選ぶ制度
  • 任意後見制度:本人がまだ元気で判断能力があるうちに、将来に備えてあらかじめ自分で後見人を選んでおく制度

旧法(現在)の法定後見制度は、すでに判断能力が不十分になった方について、家庭裁判所が後見人などを選ぶもので、本人の判断能力の程度に応じて「後見」「保佐」「補助」という3つの類型に分かれています。

  • 後見:判断能力をほとんど欠く状態の方が対象。後見人が本人に代わって財産管理などを幅広く行う
  • 保佐:判断能力が著しく不十分な方が対象
  • 補助:判断能力が不十分ではあるものの、一定程度残っている方が対象

「後見」が最も支援の範囲(代理行為)が広く、「補助」が最も限定的な支援になり、本人に与えられる同意権や代理権の範囲が段階的に狭くなっていきます。

この振り分けは家庭裁判所が独自に判断するのではなく、申立ての際に提出される医師の診断書が大きな基準になります。

  • 「自己の財産を管理・処分することができない」→ 後見相当
  • 「常に援助が必要」→ 保佐相当
  • 「援助が必要な場合がある」→ 補助相当

家庭裁判所はこれをもとに、必要に応じて詳しい鑑定も行いながら、最終的にどの類型にあたるかを判断していきます。

「登記事項証明書」が後見人の証明になる

法定後見の場合は、家庭裁判所の審判が確定したあと、法務局でその内容が登記され、後見人はこの登記内容を記載した「登記事項証明書」を取得することで、銀行や役所などの窓口で自分が後見人であることを証明します。

任意後見の場合は、まず判断能力があるうちに公証役場で「公正証書」によって任意後見契約を結んでおき、実際に本人の判断能力が低下した段階で、家庭裁判所に任意後見監督人の選任を申し立てます。

この任意後見監督人が選任されて初めて契約の効力が生まれる仕組みになっており、こちらも法務局で登記され、同じように登記事項証明書によって証明することになります。

任意後見監督人には、任意後見人が契約内容通りに適正に業務を行っているかを監督する役割があり、たとえば本人と任意後見人の利益が相反するようなことがあった場合には、本人の代理人を務めることになります。

利用率わずか2%、広がらなかった成年後見制度

今回の改正が実現した背景には、これまで以上に多くの方に成年後見制度を役立てていただきたいという狙いがあります。

2026年に発表された政府推計によると、65歳以上の認知症の方は2025年時点で471万6000人、2040年には584万2000人と、65歳以上のおよそ7人に1人にのぼると見込まれています。

軽度認知障害、いわゆるMCIの方も合わせると、65歳以上の方のおよそ3人に1人が何らかの認知機能の低下に関わる状態になるとされています。

一方、判断能力が不十分とみられる方は全国に1300万人ほどいると推計されるのに対し、成年後見制度の利用者は約25万人ほどにとどまっており、より多くの方にとって使いやすい制度へと見直していくことが求められていました。

制度をより使いやすいものにしていくうえでは、いくつかの見直しが期待されてきました。

特に、事実上「一度始めると原則として本人が亡くなるまで続く」終身制の仕組みや、親族が後見人に選ばれる割合が制度開始当初の9割ほどから近年は2割未満まで減っている担い手確保の面、弁護士や司法書士などの専門家が後見人となった場合は報酬支払いの負担が続く、などが、これまで見直しの視点として挙げられてきました。

加えて、国連の障害者権利条約に関する委員会からも、本人に代わって決定する「代行決定」から、本人の意思決定を支える「意思決定支援」への転換を促す声が寄せられており、今回の改正の背景には、こうした国内外からの声がありました。

改正で目指す「オーダーメイド型」の制度へ

今回の改正で具体的にどこが変わるのかは、方向性だけご紹介します。
大きなポイントは2つあります。

1つ目は、これまでの「後見」「保佐」「補助」という3つの類型を「補助」に一本化して、本人に必要な支援だけを選んで利用できる、いわば「オーダーメイド型」の制度に変わるという点です。

2つ目は、今まで終身制だったものが、制度の利用が必要なくなったと家庭裁判所が判断すれば、途中で終了できるようになるという点です。

ほかにも、後見人を交代しやすくする仕組みや、報酬の考え方の見直しなども盛り込まれており、制度全体がより柔軟なものになっていく予定です。

ただし、実際に施行されるのはまだ先の話ですので、今後の動きにも注目していく必要があります。

成年後見制度は、ご本人だけでなくご家族にとっても関わりの深い制度です。ご自身やご家族の将来に備えて制度の利用を検討したい方、すでに利用している中で悩みを抱えている方は、お気軽に当事務所へご相談ください。

▼参考
成年後見制度の見直し等について|厚生労働省
成年後見制度における鑑定書作成の手引|最高裁判所

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