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内側から見たロシア〜戦争の影響と変わらない日常

『コトニ弁護士カフェ』2025年10月10日放送分

2025年9月、個人旅行でロシアを訪問しました。

以前は日弁連や日露法律家協会などの活動などの活動で、ロシアへは年に2回くらい行っていたのですが、コロナ禍の影響やウクライナとの戦争もあり、なかなか行けない状況が続き、今回は5年ぶりのロシア訪問になりました。

今回はモスクワの中心部、ちょうどクレムリンの近くに滞在しました。
正直、戦争中ということでどのぐらい緊張感があるのか不安もあったのですが、実際の街や人々の生活の様子は、非常に落ち着いた雰囲気でした。

戦争の影は?ロシアの日常風景

実際に歩いてみると、街は整然としており、公共事業やビル建設など工事現場も動いています。
若い男性はみんな戦争に駆り出されて人影がない…なんてことはまったくなくて、年頃の男性たちも普通にたくさん街を歩いています。
スーパーには普通に商品が並んでいるし、皆さん仕事や学校に通って、変わらない日常を送っていました。


一方で、やはり観光客の数は極端に少なくて、ほとんど見かけることがありませんでした。国際的な交流が制限されているのだと感じます。

ロシアで一番の観光地でもある赤の広場やクレムリン周辺も、新型コロナの前は観光客が大勢集まる場所だったのに、新型コロナが過ぎても戦争が始まった影響か今回は本当に閑散としていました。

中国人のツアーの団体と、地元のロシア人が少しいる程度で、ヨーロッパ諸国や日本の観光客はゼロに近かったように思います。

以前の賑わいを知っているだけに、静まり返った赤の広場は、国際的に孤立した現在のロシアを象徴しているように見えました。

各国からの経済制裁が及ぼす影響

各国がロシアに対して経済制裁を実施しているものの、写真のようにスーパーにも物が食品も生活品も溢れていて,物が無くて困っている様子はあまり見られませんでした。

ただ,今回私が訪問したのはモスクワという大都市ですが、物流があまりよくない地方の小さな町などだと、また状況は違うのかもしれません。

ロシアへの経済制裁は、金融制裁、貿易規制など、いくつかの種類があります。

特に金融面では、主要なロシアの銀行が国際送金システムから排除されていて、日本からも原則として送金などができないなど、国を越える資金のやり取りが難しくなっています。

また、欧米を中心にロシア産の原油や石炭の輸入が禁止されていて、これはロシアにとって最大の外貨収入源なので、財政基盤に直結する大きな打撃になっているはずです。

航空機の部品や産業用の高度な機械、いわゆるデュアルユース品と呼ばれる製品の輸出入も禁止されています。


そしてもうひとつ大きな影響は、渡航に関する措置です。
各国の国際便はロシア上空を飛ぶことができませんし、ロシア便の航空機もまた多くの国の領空を飛べなくなっています。

そして身近な制裁措置としては、郵便や小口の配達も禁止されていて、日本からロシアには普通郵便もEMSも小包も一切送付することができなくなっています。

また、行サイトなどで日本や欧米の旅行サイトからロシア国内のホテルや飛行機を予約することも現在は出来ません(ただし、サイトによっては言語をロシア語にすると予約できるサイトもあります。)

そのため、今回の旅行でもホテルはロシア語のサイトから予約しました。

物価の上昇傾向〜マトリョーシカが3倍以上の値段に


高級デパートや空港の免税店に行っても、海外ブランドのお店が普通に営業していました。
ただ、やはり客足は少なく、ほとんど静まり返っていました。
商品は豊富にあるけれど、値段は以前よりも高くなっていました。

たとえばクレムリンの近くにある有名な「グム」という高級デパートには、キャビアや海外ブランドの商品がずらりと並んでおり、価格は以前よりも上がっている印象でした。
キャビアなんかは「さすがロシア」と思うくらい豪華に並んでいて、手を出すにはかなり高かったです。


そして、ロシアのお土産といえば有名なのが「マトリョーシカ」です。
以前ロシアを訪れたときには1,000円から2,000円くらいで買えた記憶があるのですが、今回は3〜4倍といった価格帯になっていて正直驚きました。
これも制裁や為替の影響で物価がじわじわ上がっている証拠だと思います。

国外発行のクレジットカードは使えず、支払いは現金のみ


今回の滞在で、一番不便を感じたのは「支払い」です。
現在ロシアでは、国際的な金融制裁の影響を受け、ロシア国外で発行されたJCBやVISA、MasterCardといったクレジットカードがまったく使えないのです。
(ロシア国内で発行されたクレジットカードは使用できるようです)

空港や街中で何度か試したのですが、どこでもカードは使えませんでした。
現金をルーブルに両替しておかないと、タクシーにも乗れないし、電車の切符すら買えません。

百貨店の有名ハイブランドのお店にも、たくさんの品物が並んでいるのに、いざ支払いとなると外国人は「現金しか使えない」という状況です。

戦争前までは、ロシアに来ても日本で発行したクレジットカードで全部決済できましたし,現金も日本のクレジットカードを使ってロシア国内のATMからルーブルを引出せたので両替の必要はほとんどなかったのですが、今は逆に現金がないと何もできません。

高級品が並ぶデパートや物がたくさんあるスーパーなどの「豊かな一面」と、それらを買うには現金か国内で発行されたクレジットカードしか使えないという、「国際社会から孤立した一面」のギャップがとても印象的でした。

現金決済の不便さはあるものの、たとえばモスクワの地下鉄は本当に清潔で、電車も時間通りに来ますし、みなさん通勤や通学で多くの人が利用していて、普段どおりです。
車内ではスマホを見たり読書をしたり、日本と変わらない雰囲気です。

特にモスクワは世界でもトップクラスに利用者が多い地下鉄で、ラッシュの時間帯はやはり混雑していましたが、治安の悪さを感じることはなく、むしろ整然としていました。

空港から市内への移動は空港快速を使ったのですが、こちらも時間通りで快適でした。
ただ、やはり支払いはカードが使えず、券売機でルーブルの現金を投入しなければなりませんでした。

報道で見るロシアと現実の大きなギャップ


表面的には見えにくい経済制裁の影響がどこにどう出ているのか、現地に行って初めて実感できる部分が大きかったと思います。これはロシアに限ったことではないですが、やはりマスメディアを通じた報道と現地の実情は違います。

また、帰りの飛行機が滑走路上で突然離陸できなくなって、結局一晩空港で過ごしたのですが離陸できなかった理由がはっきりとわからず、その前の日もウクライナからの攻撃がモスクワ周辺にあったという日本の報道もあったので、ひょっとしたら戦争の影響で飛行機が離陸できなかったのかもしれません。

とはいえ、なんとか帰国できました。


ロシアの人々は戦争前とかわらず相変わらず親切で、日本からの旅行者とわかっても文句を言われたり嫌がられたりすることなく、普通に過ごすことが出来ました。

戦争のために多くの方が犠牲になったり、経済制裁の影響があるのをみると、ロシアの一般市民の方々も戦争の被害者だと感じます。戦争が早く終結して平和が戻ることを切に願います。


ロシアでの様子はYouTubeにもアップしています。
ご興味がある方は、ぜひ視聴してみてください。

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