
3月といえば春からの新生活に向けて、引っ越しシーズンのピークです。国土交通省が実施した年間引っ越し件数の調査によると、3月〜4月は引っ越し件数が跳ね上がり、今年も通常月の約2倍にもなっているようです。
最近は引っ越し費用が高くなっているという報道も目立ちます。報道でも引っ越し先が車で15分ほどの距離でも、見積もりで100万円以上を提示されたというケースもありました。
そこで今回は、引っ越し費用が高騰している原因や背景についてお話しします。
▼参考
引越時期の分散に御協力をお願いします!|国土交通省
引っ越し代「117万円」 車で15分の距離なのに…|Yahoo!ニュース
ガソリン代や人件費の高騰、人手不足、労働時間の制限などが要因で、引っ越し費用の相場は右肩上がりを続けています。また、「引っ越し日」と「搬入時間の制限」がある場合も高く見積もられてしまう傾向があります。
特に「3月31日」は、1年でもっとも引っ越し代が高い時期で、100万円を支払ってでも引っ越しをしたい方も少なくありません。繁忙期では1件あたりの作業時間をなるべく短縮する必要があり、作業員を通常よりも増員しなければならないなどの事情で、人件費が通常月の2.5倍にも及ぶこともあります。
▼参考
引っ越し費用が117万円! 相場の5倍超になった原因とは|Yahoo!ニュース
国土交通省からは「引っ越し時期の分散呼びかけ」がされており、3月12日おこなわれた会見では「トラックドライバーの労働負荷の軽減やスムーズな引っ越しのためにも混雑時期をできるだけ避け、引っ越し時期の分散に向けてご検討、ご協力をお願いいたします」と呼びかけています。
しかし、進学や就職、転勤などの事情で引っ越す場合は、それに合わせて日にちを決めることになるので、柔軟に引っ越し時期をずらすことは難しいのが現実です。4月からの新生活のためにどうしても3月に引っ越さなければならない方がほとんどですから、実際には分散引っ越しは”現実的ではない”という声もあるようです。
国土交通省や業界団体は、引っ越しのピークを分散させるための施策を進めていますが、企業の異動時期や進学などのスケジュールがある以上、すべての人がオフシーズンに引っ越しできるわけではありません。
国土交通省では、引っ越し時期の分散に向けて、経済団体を通じ、民間企業の異動時期分散化の検討要請をおこない、国土交通省職員の異動に関しても、4月期の人事異動に伴う引っ越しをおこなう職員のいわゆる「赴任期間」の活用などを実施するとのことです。全国の地方運輸局における引っ越しのトラブル等に関する情報提供窓口の設置もおこなうこととしています。
今年は昨年の「2024年問題」でトラックドライバーの時間外労働が原則年間960時間に規制されてから、初めて迎える年度末であるため、ドライバーが不足する恐れがあるということは、以前から懸念されていました。
「2024年問題」とは、働き方改革関連法によって2024年4月1日以降、自動車運転業務の年間時間外労働時間の上限が960時間に制限されることによって発生する問題の総称です。トラックドライバーの労働時間が厳しく制限されることで、1人のドライバーが担当できる配送件数が減少し、それに伴って業界全体での運転手の供給能力及び輸送能力が低下しています。
これまではトラックの運転手の労働時間が長すぎるため、労働環境が悪く事故の原因となったりしていたので、方向性としては評価できると思いますが、それが引っ越し業界にも影響が広がり、業者側が受注件数を抑えなければならなくなり、引っ越しの予約がなかなかできないといった問題が発生しています。
需要が供給を大きく上回る状況のため、費用が大幅に高騰していると考えられます。このままでは「引っ越し難民」と呼ばれる、希望するタイミングで引っ越しができない人が増える可能性が高いとも言われています。
▼参考
知っていますか?物流の2024年問題|全日本トラック協会
物流業界「2024年問題」を一から解説|住友電工システムソリューション株式会社
物流の「2024年問題」とは|国土交通省
引っ越しを予定している方は、できるだけ早めに計画を立て、可能であればオフシーズンの利用を検討することが重要です。例えば、3月末の繁忙期を避け、5月や6月に引っ越し時期をずらすだけでも、費用を大きく抑えられる可能性があります。
さらに、最近では引っ越しの「混載便」を利用する方法もあります。混載便とは、他の引っ越し客とトラックをシェアする形で運送する方法で、特に荷物が少ない単身世帯には有効です。通常の単独便と比較すると、運送料が大幅に抑えられるため、コストを削減できるメリットがあります。
もう一つの選択肢としては、引っ越し業者を利用せず、宅配便やレンタカーを活用する方法も考えられます。特に単身者であれば、大型家具の運搬のみ業者に依頼し、それ以外の荷物は自分で運ぶという方法も有効です。レンタカーを利用すれば、時間の制約が少なくなり、費用を大幅に削減できるケースもあります。
確かに引っ越し費用は高騰していますが、これまで運送費用や引っ越し費用が安価すぎたのではないか、という考えもあります。
オンラインショッピングの普及により、配送料無料で気軽に1点から購入する消費者が増えたことで、運送業者の負担が大きくなっています。配送料無料といっても、実際には業者がコストを負担しており、その影響が物流全体に波及している印象です。
オンラインで商品を購入する際には、できるだけまとめて注文する、再配達を減らすために配達日時を指定するといった、一人ひとりの配慮が大切です。そうすれば、物流業界の負担が軽減され、結果的に引っ越し費用の高騰を抑える一助となる可能性もあるかもしれません。
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