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能登半島地震から考える、地震災害への備え

『コトニ弁護士カフェ』2024年1月19日放送分

2024年1日1日、能登半島で大きな地震が起きました。
石川県ではすでに200名以上の死者が出ており、今も避難生活を続けている方も大勢いることでしょう。
自然災害は,お正月等にも関わらず、突然訪れるということをあらためて思い知らされました。
今回は、能登半島地震から考える地震災害への備えについてお話ししましょう。

過去の大地震を思い起こす

東日本大震災後の牡鹿町の様子

能登半島地震の大きな揺れで,東日本大震災や熊本地震など,過去の大きな地震災害を思い出した方も多いのではないでしょうか?
私はそれぞれ現地で被災したわけではありませんが,東日本大震災,熊本地震の支援活動に参加した経験があります。

東日本大震災の際は,司法試験と重なってしまったこともあり,震災から3ヶ月後に現地へ1週間ほど滞在し,瓦礫処理などを手伝いました。

私が水産庁時代にお世話になった漁師さんがいる宮城県石巻市牡鹿町と被害が甚大と聞いていた岩手県陸前高田市に行ったのですが,津波で町が全て流されていて,私が知っている町は無くなっていてショックを受けたことを覚えています。

まだ震災から間もないということもあり,多くの人が避難所での暮らしを続けていて,道路も寸断され,何もかもが無くなっている“絶望”という言葉しか見当たらない状況でした。

そんな中,地元の方はもちろん,自衛隊の皆様やボランティアの方々と協力して,毎日復興作業をしていたのを覚えています。

牡鹿町でのボランティア活動

その後も,4年間ほど1週間ぐらいずつ現地にボランティアに行きましたが、徐々に復興が進んでいるものの,まだ元には戻らないのが現実です。

熊本地震の際は,私の実家も被災したので,地震の翌日に行って,実家の片付けをしたり親戚の安否を確認したりしました。

震源地が内陸だったため津波は無かったのですが,震源地に近い益城町周辺などでは地震で家が倒壊したり,道路が寸断されたり,橋が倒壊したり,震源地から離れていた熊本市中心部でも地震で壁が壊れたりヒビが入ったり,瓦が落下したり,石垣やブロック塀が倒れたり,道路が波をうったり,なにより衝撃を受けたのが熊本のシンボルである熊本城が壊れたことでした。

現在は,多くの方々の協力により,かなり復興が進んでいます。

能登半島地震直後の報道や救援活動について

東日本大震災や熊本地震での出来事を経て,今回の能登半島地震直後の報道で感じたのは,東日本大震災前に比べ,津波に対する注意喚起が強く何度も繰り返されていたということでした。

特にNHKのアナウンサーの「逃げてください!」という呼びかけが非常に強い口調だ,ということがSNSなどで話題になっていましたが,実は東日本大震災後にアナウンサーの皆さんは「いかに人々が真剣に聞いて危機感を持ってくれるか」ということを検討されていたようで,あえて強い口調で言っていたそうです。

当然ですが,本当に危険なときは,冷静に静かな声で「逃げてください」と言われるよりも,命令口調で強く「逃げてください!」と多少聞いている人が驚く程でないと,多くの人の耳に届かないのではないでしょうか。

私もそのときテレビを観ていましたが,アナウンサーの真剣さが伝わってきて,東日本大震災のことがよみがえり,なんとか皆さんが無事であることを願い,涙があふれそうになりました。

過去の教訓を活かす「プッシュ型支援」

今回政府では「プッシュ型支援」という方法をとっているそうですが,これも東日本大震災や熊本地震での教訓が活きています。

プッシュ型支援とは,東日本大震災の翌年の平成24年6月に改正された災害対策基本法に盛り込まれています。

国が被災都道府県からの具体的な要請を待たず,避難所避難者への支援を中心に必要不可欠と見込まれる物資を調達し,被災地に緊急輸送することです。

内閣府防災情報 https://www.bousai.go.jp/taisaku/hisaisyagyousei/push.html

東日本大震災の際にさまざまな物資が不足したことから,要請を待たずに先に物資を送り届けるように動く,ということを行っていました。

また,各地の住民の方々においても,海岸近くの町の方などは東日本大震災後に防災訓練をしていたところもあるようです。

そういった準備の結果,迷うことなく避難のために動けたというところもあるようです。

地形による“新たな課題”

今回の能登半島地震では,東日本大震災や熊本地震とは異なる新たな課題として,地形の特徴に問題があると言われています。
熊本地震の場合,熊本県は福岡・大分・鹿児島・宮崎などと隣接しているため,さまざまな方向から支援してもらえるルートがありました。

実際,私も福岡空港まで飛行機で行って,そこからレンタカーを借りて向かったのですが,福岡と熊本の間は道路が何本もあるので,地震の直後でも大きな問題なく熊本市内まで行くことが出来ました。

しかし,今回の被災地である能登半島は,海に囲まれており,陸から入るにも半島の先端までにたどり着くには被災地を通り抜ける必要があります。
そのため,陸路を確保するのが大変困難な状況です。
地震によって道路が通行できない状態になっている地域もあることに加え,もともと大きな道路が通っていないような小さな町や村まで辿り着くのはかなり困難なのではないかと感じます。

そのことから,陸路だけでなく,海路や空路なども使って被災地へ直接救援に向かうことも行われています。ただし,今回の地震で海底が数メートルも隆起したエリアもあり,これまで使っていた港が陸地になってしまったところがあったり,海岸線が急峻な崖になっているエリアも多かったりなどにより大型の船が接岸できないといった問題もあり,海からの輸送も決して簡単にはできないようです。

重要なのは地震災害への備え

引用元:東京消防庁「地震に対する10の備え」

日本では全国各地で数年に一度,大きな地震が起こっていますが,なかなか実際に被害を受けるまでは,「次は自分の住んでいるところに起きるかもしれない」という危機感を抱けない場合もあります。

熊本地震の際も,熊本では大きな地震は発生しないと思っていた方が多かったためか家屋に対する地震保険に加入していなかったり,タンスなどに突っ張り棒を設置するなどもしていないなど,地震に対する備えがしっかりしていない人が多かったと聞いています。

そのため,日本全国どこであっても,いつ発生するかわからない地震災害のために,日頃から準備しておくことが大切です。
まずは地震そのものに対する備えとして,突っ張り棒などで家具が倒れたり物が落下してきたりしないような対策を行うとともに,非常食や水,簡単な医療品,簡易トイレなどを詰めたいわゆる「防災バッグ」を準備しておくようにしましょう。

このような事前対策に加えて,火災に対する対策も必要です。
消化器を目立つところに置いておく・使用期限などもしっかりと確認しておく。
そして地震による停電時には、コンセントを抜くことも大事です。

今回の能登半島地震でも地震直後に火災が発生して大きな被害をもたらしました。
この,地震後の火災の原因のひとつに「通電火災」があります。

停電後,電気が復旧した際に,たとえば電気ストーブが布団の上に倒れていたままの状態で,電気が通電して発熱・発火してしまうなど,そういったことが起きてしまうのです。

それから,避難が必要になった際には,スムーズに行動できるよう,近隣の避難場所を把握しておく,緊急時の集合場所を家族で決めておく等といった行動も大切です。
今回の地震でもそうでしたが,緊急時には電話がつながりにくかったり,携帯電話の充電が限られていたりなど,いつものように連絡が取れなくなってしまいます。

そうなった場合もパニックにならないよう,もしものときの行動を家族や近所の方々とシミュレーションして共有しておくといいと思います。
電源については,最近はポータブルの充電式のバッテリーが販売されていて,スマートフォンやパソコン,サイズによっては冷蔵庫やテレビなども対応しているものもあるようですので参考にされると良いと思います。

もちろんですが,水を常備しておくことも忘れてはいけません。
飲料水ももちろんですが,トイレやお風呂などで使えるように水道水をペットボトルやバケツなどに常時溜めておくようにしましょう。

2018年,北海道で起きた胆振地震の際,電気と水が数日間止まってしまいました。
ほんの数日でもかなり困った経験があるため,水と電源の確保は大切だと私も痛感しているところです。

そしてこの冬の寒い時期に避難生活を強いられているみなさまにおかれましては,本当に日々大変な想いをされているかと思います。
1日でもはやい復興と、日常が戻ることを心より祈っております。

ラジオ番組『コトニ弁護士カフェ』
毎週金曜日10時30分から三角山放送局で放送中!
隔週で長友隆典護士&アシスタントの加藤がお送りしています。
身近な法律のお話から国際問題・時事問題,環境や海洋のお話まで,様々なテーマで約15分間トークしています。
皆様からの身近なお悩み,ご相談などのリクエストもお待ちしております。
三角山放送局 reqest@sankakuyama.co.jp または当事務所のお問い合わせフォームでも受け付けております。

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