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いまなぜ「共同親権」なのか?これまでの単独親権制度を振り返る

『コトニ弁護士カフェ』2024年6月7日放送分

皆さんの暮らしに関わる法律の中でも、最近特に話題になっているのが「共同親権」ではないでしょうか。
共同親権の導入については、民法の改正案が2024年4月16日に衆議院本会議で可決され、その後5月17日、参議院本会議の採決において賛成多数で可決、成立しました。
現在も共同親権については、賛成派や反対派などさまざまな意見が飛び交っている状態です。

今回は、これまでの日本における単独親権の制度について解説し、今回なぜ共同親権が採用されることになったのか、その理由や経緯などについて紹介します。

日本の親権制度「単独親権」について

日本では、「成年に達しない子は、父母の親権に服する」と規定されています(民法818条1項)。これを親権と言います。

民法818条
1 成年に達しない子は、父母の親権に服する。
2 子が養子であるときは、養親の親権に服する。
3 親権は、父母の婚姻中は、父母が共同して行う。ただし、父母の一方が親権を行うことができないときは、他の一方が行う。

そして、これまで日本では、未成年の子どもがいる夫婦が離婚する場合、父母のどちらかを親権者として定める必要があることが規定されています。

民法819条1項及び2項 
1 父母が協議上の離婚をするときは、その協議で、その一方を親権者と定めなければならない。
2 裁判上の離婚の場合には、裁判所は、父母の一方を親権者と定める。

これを「単独親権」といい、離婚後は一方が親権を得て、もう一方は親権を失うことになります。
すなわち、どちらか一方の親がその子に対する親権を独占するということです。

もちろん、親権者にならなかったからといって、法律上の親子関係がなくなるわけではありませんが、父母の両方が親権を主張する場合、親権争いが長引くことも珍しくありませんでした。

単独親権制は、家族生活における個人の尊重と両性の本質的平等を規定した憲法24条に違反するのではないか、ともいわれています。
しかし、この制度は戦後の民法改正時に、憲法24条の「個人の尊重と両性の本質的平等」に適うものとして定められたのです。

戦前の民法では家長父制が採用されており、夫婦が離婚した場合、子どもの親権は家長である父親が行使することになっていました。つまり、離婚すると子どもは父親とともに家に残り、母親は子どもを置いて家を出なければならなかったのです。

しかし、戦後の民法改正の際、憲法24条が定める「個人の尊重と両性の本質的平等」に反するとの指摘を受け、「父母のどちらか一方」に単独親権を与えることとなりました。

いまなぜ共同親権が求められるのか?

離婚によって一方の親が親権を持つことになっても、もう一方の親と子どもの親子関係が切れるわけではありません。
しかし実際には、親権を持たない親と子どもが疎遠になるケースが非常に多いのが現状です。

厚生労働省の2021年度調査によると、母子家庭の45%で実の父と子の面会交流の経験がありませんでした。
もちろん、合意の上で交流がなくなったり、母親や子どもが望んでも父親が会いたがらなかったりするケースもありますが、以下のようなケースも見受けられます。

【ケース①】
母親が親権を持つ母子家庭の場合、父親が子どもとの面会を求めても母親に拒否され、会いたくても会えないケース。

【ケース②】
子どもがまだ乳幼児のうちに離婚し、親権を持つ母親が子供を連れて再婚した場合。
再婚相手が父親同様の存在として家族生活を送っているため、血縁関係のある父親が会わせてもらえない。
場合によっては、子どもが再婚相手を実の父親と思っているなどの事情で、実父が父親であることも名乗れないケースもある。

親権の有無と面会交流は本来別の問題であり、親権を持たないからといって子どもと会えなくなることは、原則として本来あってはならないと考えられます。

そのため、親権を持たない親が子どもとの面会交流を求めて家庭裁判所に調停や審判を訴えるケースが増えています。

共同親権が認められることで、離婚後も子どもと関わり続けたい親にとっては、面会交流という形式的な機会だけでなく、教育方針や子どもの成長過程において、より責任を持って密に関わることが期待されています。

これは、子どもにとっても、子どもと関わりたい親にとっても、安心感があり、共同親権の良い面だと考えられます。

多くの先進国はすでに共同親権を採用

実は日本ではこれまで当たり前だった単独親権は、世界の国々の中でも珍しいケースで、多くの先進国はすでに共同親権を採用しています。

そのため、日本で国際結婚をして離婚となった場合、親権を巡る争いが多く発生しており、国際社会に取り残されないためにも、単独親権制度はそろそろ限界であるという見方もあったのでしょう。

特に国際離婚における「子どもの連れ去り」は、これまでも国際社会から問題視されてきました。具体的には、日本人の母親が親権を持ち、元配偶者に無断で海外から日本に子どもを連れ帰ることが度々ありました。

こうした問題を背景に、日本も2014年にハーグ条約を批准し、16歳未満の子どもを無断で居住国外へ連れ去った場合、原則として元の居住国へ返還することが義務付けられるようになりました。

しかし、2020年7月に開催された欧州議会本会議において、EU籍の親に対する日本からの子どもの返還の執行率が低いことなどが指摘されるとともに、ハーグ条約のもとで子どもの返還が効果的に執行されるために、共同親権を認め国内法制度を改正するよう求められました。

共同親権、2026年までには運用開始

まだ明確なスケジュールは不明ですが、令和8年(2026年)までには改正された法律が施行され、それまでに現実的に運用される見込みです。

ただし、反対派の意見にもあるように、たとえば親権者ではないほうの親にDVの恐れがあるなど、子どもの安全のために面会交流を避けなければならないケースもあります。

そういった場合、スムーズに単独親権を選択できるのか、共同親権になるとどうなってしまうのか、まだ議論しなければならない課題も残っています。

いずれにしても、単独親権・共同親権に関わらず、離婚後も父母どちらにも親として子どもと関わる権利があります。そして、子どもが不自由なく安心・安全に暮らす権利が守られることが、もっとも重要です。

全員が満足するような関係性は難しいのかもしれませんが、法律によってそれぞれの権利や主張が正しく認められるようになることを願います。

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