2024年11月1日から,新たにフリーランスを守るための法律が施行されました。
この法律は,正式には「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」といいます。
働き方の多様化が進展してきたことを受けて,フリーランスの方が安心して働ける環境を整備するためにできたもので,フリーランスと企業などの発注事業者の間の取引の適正化と,就業環境の整備を図ることを目的としています。
今回はフリーランス新法についてお話しします。
フリーランスの方々の実態についてこれまでのさまざまな問題が提起されていました。
内閣官房の「令和4年度フリーランス実態調査結果」によると,報酬の支払いが遅れたり、期日に支払われなかったり、あらかじめ定めた報酬を減額された,低い報酬を不当に定められたなどといった実態が報告されています。
また,発注者の都合で,やり直しや追加作業を行ったにもかかわらず,それに伴う追加費用を負担してもらえなかったという回答も多く見られます。
本来は仕事を発注する側と受注する側は対等な立場であるべきですが,実際のところ,企業から仕事を受注するフリーランスはどうしても立場が弱くなってしまうケースもあり,不当な扱いを受けても受け入れざるを得ないという状況も発生しています。
また,フリーランスは1つの発注者に大きく依存しやすいという傾向があるようです。
内閣官房の「令和4年度フリーランス実態調査結果」を見ても「主な契約の契約期間中に、他にいくつの仕事を掛け持ちしていますか。」という問いに対し「掛け持ちしていない」と回答したフリーランスは6割にも登るという結果が出ています。
このように,フリーランスとして働く方が増えているにも関わらず,法整備が追いついていないということで,個人が受託した業務に安定的に従事できる環境を整備するために,フリーランス新法が施行されました。
今回のフリーランス新法において,フリーランスに仕事を依頼する場合,大きく以下のような義務が発生します。
発注者は最新かつ正確な募集情報を書面等により提示することが義務化されます(第12条1項)。
意図的に実際よりも高い報酬額を表示するのはもちろん,報酬額があくまで一例であるのに,その旨を記載しないことは違反となります。
これまでフリーランスとの取引では,口頭でのやり取りのみで契約が行われることが少なくありませんでした。
この度のフリーランス法の施行により,取引の内容を明確にし,トラブルを防ぐために,契約の際に書面または電磁的記録(メールやチャットを含む)の形で契約内容を残し,交付する必要があります(第3条1項)。
発注者は,フリーランスが納品した成果物やサービスに対して,合意された報酬を適切な期日に支払う義務があります(第4条,第5条など)。
遅延や未払いが行われると,違反とみなされ,行政からの指導や是正勧告の対象になる可能性があります。
発注者は,セクシュアルハラスメント・マタニティハラスメント・パワーハラスメントなどが発生しないよう,社内の体制を整備すること,妊娠や出産,育児と介護業務の両立ができるよう,状況に応じた配慮が求められます(第13条)。
詳細は公正取引委員会のページを参照してください。
https://www.jftc.go.jp/freelancelaw_2024/
注意すべき点として,契約期間によって保護の対となる項目に違いがあります。
契約期間の長さに関係なく,業務委託を行う場合は,書面等の公布や支払期日の策定,募集情報の最新かつ正確な表示やハラスメント対策による体制整備が義務付けされますが,これらに加えた義務が業務委託期間が1ヶ月以上の場合と6ヶ月以上の場合で変わります。
例えば,6ヶ月以上の業務委託期間の場合は,妊娠・出産・育児・介護に対する配慮や中途解除等の予告が義務付けされます。
違反行為を受けたフリーランス側の対応手段として,以下のものがあります。
また,違反が発覚した発注者には,申出の内容に応じて,報告徴収や立入検査が行われます。
また,申出の内容が事実の場合は法規定に則って,指導・助言のほか,勧告が行われます。
勧告に従わない場合には命令・公表が実施され,命令違反の場合には50万円以下の罰金が科せられます。
さらに,虚偽の報告をした場合は,20万円以下の罰金が科せられることもあります(第24条~26条)。
参考:厚生労働省「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律 説明資料」
G -GOV法令検索「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」
公正取引委員会フリーランス新法特設ページ
フリーランス法の対象者には,個人事業主だけでなく,従業員を雇用しない個人事業主と法人も含まれます。
トラブルを避けるためにも,契約内容をしっかり確認し,必要であれば専門家に相談することをお勧めします。
フリーランス法の対象者には,個人事業主だけでなく,従業員を雇用しない個人事業主と法人も含まれます。
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