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水産庁の取り組み紹介①持続的な水産資源管理を支えるルール


近年、水産資源の減少や海洋環境の変化が見られる中で、「魚をどう守り、どう使っていくか」は重要なテーマとなっています。


こうした課題に対して、水産庁では資源管理の仕組みを段階的に整備し、従来の「多く獲る」漁業から、「持続的に利用する」漁業への転換を進めています。

その中核にある考え方は、非常にシンプルです。
 「科学に基づいて、“取りすぎない仕組み”をつくること」

ただし実際には、単一のルールで管理しているわけではなく、複数の仕組みを組み合わせることで、水産資源の持続的な利用を目指しています。

本記事では、水産庁が進める資源管理の取り組みについて、全体像を押さえつつ、その中核となる仕組みを紹介していきます。

「獲りすぎ」を防ぐ!総量・配分・現場の管理

水産資源管理は、ひとつのルールで成り立っているわけではありません。
「総量」「配分」「現場」という3つの視点から、複合的に管理されています。

①「全体でどれだけ獲るか」TAC管理(総量規制)

まず基本となるのが、「全体でどれだけ獲るか」を決める仕組みです。

TAC(漁獲可能量)は、資源評価の結果をもとに、魚種ごとに年間の漁獲量の上限を設定する制度です。資源の状況に応じて漁獲量をコントロールすることで、取りすぎを防ぎ、資源の維持・回復を図ります。

現在、水産庁ではこのTAC管理を段階的に拡大しています。
いわば「取りすぎないための上限ライン」を決める仕組みです。

たとえば、スルメイカの例を紹介します。2026年2月4日に開催された第8回資源管理方針に関する検討会では、2026年度のスルメイカ全体の漁獲上限を、6.84万トンに設定しました。

スルメイカは年ごとの資源量の予測が難しいため、今回は海外(アメリカ)のイカ漁の管理方式を参考に、直近のデータに基づいた計算基準が暫定的に使われています。

 また、万が一枠を超えそうになった時のために国が確保しておく調整用の枠(留保枠)も、今回は必要最低限の200トンにとどめられ、より厳しく管理する方針が取られています。

TACの対象魚種について>
平成8年にTAC法が制定された当時は、7種(マイワシ、マアジ、マサバ・ゴマサバ (サバ類)、サンマ、スケトウダラ、スルメイカ、ズワイガニ)が対象となりました。
2026年1月の時点では、14種類(さんま、まあじ、まいわし、かたくちいわし、うるめいわし、まだい、すけとうだら、するめいか、ぶり、さば類、ずわいがに、まだら、べにずわいがに、くろまぐろ)まで拡大。将来は、漁獲量の8割をTAC管理することを目指しています。

② 「誰がどれだけ獲るか」IQ管理(配分ルール)

次に、その上限の中で「誰がどれだけ獲るか」を決めるのがIQ(個別漁獲割当)です。

TACで定めた総量を、漁業者ごとに割り当てることで、各漁業者はその枠の範囲内で計画的に操業できます。

これにより、従来のような「早くたくさん獲った者勝ち」といった競争を抑え、無理な操業や資源への過度な負荷を防ぐことができます。

③ 自主的資源管理(現場ルール)

そしてもうひとつ重要なのが、現場でのルールづくりです。

漁業の現場では、地域や魚種ごとに状況が大きく異なるため、一律の規制だけでは対応しきれないケースも少なくありません。

そのため、漁業者自らが主体となり、「操業時期の制限」や「漁獲サイズのルール」などを定める「自主的資源管理」が行われています。

特に、さまざまな魚種を扱う沿岸漁業においては、こうした柔軟な管理が重要な役割を担っています。

<これまでの経緯>
かつての日本では、漁船の大きさや漁具の制限などによる「インプットコントロール(投入量規制)」で漁獲量を管理していました。時代が進み、平成8年の「海洋生物資源の保存及び管理に関する法律」(いわゆるTAC法)制定に始まり、「アウトプットコントロール(産出量規制)」に移行してきています。そして、平成30年に改正された新しい漁業法では、科学的根拠に基づく資源管理の強化を前面に出した資源管理方法が採用されました。

資源管理を支える科学的データとIUU対策


ここまで見てきた「総量(TAC)」「配分(IQ)」「現場(自主的管理)」は、それぞれ独立しているようでいて、共通の土台の上に成り立っています。

それが、「科学的データ」と「ルールの実効性」です。

■ 魚を把握する科学的データ(資源評価)

水産資源管理の前提となるのが、魚の総量を把握する「資源評価」です。

資源調査や漁獲データの分析を通じて、資源量や増減の傾向を科学的に評価し、その結果に基づいてTAC(漁獲可能量)などの管理方針が決定されます。

■ ルールを遵守させるIUU対策(違法漁業の排除)

もうひとつ重要なのが、ルールを遵守させる仕組みです。

違法・無報告・無規制漁業などのIUU漁業によって、ルールを無視した漁獲や流通が行われてしまうと、どれだけ管理制度を整えても、その効果は十分に発揮されません。

そのため、水産庁では、「違法に採捕された水産物の流通を防ぐ仕組み」「輸出入時の証明制度」などを通じて、適法に漁獲された魚介類のみが市場に流通する体制の整備を進めています。

これからの水産業に求められる考え方

 ここまで見てきたように、水産資源管理は単一の規制で成り立っているわけではありません。

  • 資源量に応じて漁獲の上限を決める「総量(TAC)」
  • それを漁業者ごとに配分する「配分(IQ)」
  • そして現場の実態に応じて運用される「現場(資源管理協定)」

そして、それらを裏付ける科学的データの活用と、適法漁業を守る仕組みに支えられ、はじめて資源管理は機能します。

従来のように「多く獲ること」を前提とした漁業から、「資源を維持しながら利用する」ことを前提とした漁業へ。その転換を支えているのが、こうした仕組みといえるでしょう。

▼参考
https://www.jfa.maff.go.jp/j/policy/kihon_keikaku
https://www.jfa.maff.go.jp/j/kikaku/wpaper/r06_h/trend/1/t1_3_2.html
https://www.suikei.co.jp/archives/92852
https://news.yahoo.co.jp/articles/b53dc6b5b3dcc380c0cde4594a3d52d42289b43b
https://www.jfa.maff.go.jp/j/study/kanri/attach/pdf/231027_8-59.pdf

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