前回は、盗まれた自転車を勝手に取り返すのは,場合によっては「窃盗罪」になる可能性があることを説明しました。
では、盗まれた自転車を発見して返してもらいたいときは,どうすればいいのでしょうか?
今回は,取り返せるケースとその条件,そして残念ながら返還が難しい可能性についても,関連する法律を紹介しながら解説していきます。
その場で取り返すことは正当防衛(刑法第36条第1項)として認められます。
ただし,実力行使は危険が伴うので,声をかけても返してくれない場合は,証拠写真を撮影するなどした上で,警察に届け出ることをお勧めします。
その場に自転車を放置した者が窃盗犯や悪意の者(盗品であることを承知で入手した者)である場合はもちろん,即時取得(民法192条)が成立する場合であっても,民法193条により原則として所有権は移転していません。
しかし,その占有者がリサイクルショップなどの公の市場で購入した場合は,所有者は対価を支払う必要があります(民法194条)。
※占有者がリサイクルショップ等でその購入した場合は,盗難から1年過ぎると所有権が移転している可能性があります(古物営業法20条)。
正当な理由なく他人の敷地に入ることは原則として住居侵入罪(刑法130条)が成立します。
たとえ自分の物であっても,他人が占有している物を無断で持ち帰ると窃盗罪が成立する以上,自分の所有物を取り返す目的のために他人の敷地に立ち入ったら住居侵入罪が成立すると考えて差し支えありません。
返還の条件は、↑上記2と同様です。
この場合,その自転車の占有者が窃盗犯又は悪意の者以外の場合を除き,即時取得(民法192条)が成立する場合,193条の例外も適用されず,原則としてその占有者に弁償をしない限り取り返すことはできません(民法194条参照)。
また,占有者がリサイクルショップ等でその購入した場合は,盗難から1年過ぎると所有権が移転しているため(古物営業法20条),弁償しなければ取り返すことができません。
その自転車の占有者が窃盗犯または盗難されたことを知っていた者(悪意の者)については,即時取得(民法192条)が成立しないため,2年を過ぎても弁償することなく取り返すことが可能です。
ただし,悪意の者であっても20年で取得時効が成立しますので(民法162条),その場合は取り返すことがそもそも出来なくなります。
以上のように,盗難されてから経過した年数,占有者がその自転車を入手した経緯,発見した場所などによって,盗難品を取り返せる条件や手順が異なります。
盗難品を発見してすぐに取り返したいと思う気持ちはわかりますが,くれぐれも勢いに任せて勝手に取り返さないよう,法的手順をしっかり確認して返還を請求しましょう。
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