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アメリカの歴史と差別問題について

『コトニ弁護士カフェ』2020年6月19日放送分

世界的に新型コロナウイルスが猛威を振るい,特にアメリカでは死者が10万人を超えるなど依然として社会に大きな影響を与えている中,5月25日にアメリカのミネソタ州で起きた事件をきっかけに,差別に反対する運動が世界中に広がっています。

ミネソタ州ミネアポリスの警察官による黒人男性の死亡事件

皆さんもニュースなどでご存知の通り,5月25日ミネソタ州ミネアポリスの路上で黒人男性が警察官に押さえつけられて亡くなってしまったという事件を受けて,反差別運動が大きく広がっています。
事件直後は一部で警官との衝突や略奪なども起きましたが,今は少しずつ平和的な活動に落ち着いてきているようです。

奴隷から自由の身へ―アメリカの歴史を振り返る

黒人の人たちは,もともと奴隷としてアメリカ大陸に連れて来られて,長い間白人の人たちの奴隷として扱われてしました。
今となっては同じ人間なのに考えられないことなのですが,当時はそれがアメリカでは制度として成立していたのです。
1863年にリンカーン大統領による奴隷解放宣言がなされて,奴隷制を禁止するという内容で憲法も修正され,その後は市民権や投票する権利も付与されて,奴隷制度は廃止されました。

奴隷解放後も根強く残った差別的な「区別」

しかし,奴隷ではなくなったものの今度は白人と黒人を「区別」して取り締まる法律や州法が,特に南部の州で広まっていきました。
病院やレストランなど公共の場で白人の人たちと黒人の人たちを分けるとか,学校も当然分けられました。
交際や結婚を禁止する州法もありました。
電車やバスでも車両や座席を分ける,停留所や券売所が分けられていたケースもあるようです。
ローザ・パークスという黒人女性が白人に席を譲らなかったことで逮捕された事件は,ご存知の方も多いのではないでしょうか。
黒人という理由で投票する権利を奪うことは憲法に反してしまうので,読み書き試験を導入して意図的に黒人を振るい落とすような制度を取り入れた州もありました。

このように,表向きは平等のように見せながらも,差別はずっと続けられてきて,黒人の人たちは勉強する機会や経済的に成功する機会も奪われてきました。
それがまだ100年ちょっと前の話です。
そして公民権運動が活発になったのちに,公民権法が成立したのが1964年。
実はまだ60年も経っていない,ごく最近のことなのです。

アファーマティブ・アクション ―是正措置を講じても埋まらない溝

「アファーマティブ・アクション」とは,黒人の人たちを優先的に大学に入学させたり,企業に採用させたり,そういった優遇によって差別を是正するという措置です。
しかし,このような動きが白人の人たちにとっては「逆差別だ」と反感を買うこともありました。
さらには貧困に窮した一部の黒人たちが集団を作って暴力的な手段に出るような活動も活発になった時期もありました。
もちろんこれは一部の話ですが,このように,白人と黒人との溝は一部でずっと根深く続いてきているのです。

今回の反差別デモで見えてくること

そんな中で今回の警察官による黒人男性死亡事件が起きて,ずっとくすぶっていた怒りに火がついたような形で,大きな運動に発展したのだと思います。

―デモや運動をしている人たちの中には,黒人や有色人種の人たちだけでなく,白人の若者の姿も多く見られます。

そこはやはり60年前の公民権運動と大きく違うところです。
私個人としては良いことだと思っていて,特に若い世代の人たちにとって「人種に関わらず人は平等だ」ということがしっかり当たり前のこととして理解されていて,過去の差別的な歴史に嫌悪を抱いている白人の人たちもたくさんいると思います。
また,黒人の人たちでも,暴力的に訴えるのは間違っているとか,過去の歴史を持ち出していま責めるのは違うのではないかとか,世代や境遇によって捉え方が大きく異なっているのが,今回の一連の流れを見て思うことです。
単に「白人対黒人」という構図ではなく,現代は様々な想いや思想が複雑に絡み合っているように感じます。

お互いに「違いを認め合う心」が必要

自分が生まれてきた人種,肌の色や目の色,そういうものはどうにもできないこと。
髪を染めたり化粧をしたりカラーコンタクトをすればよいというわけではありません。
ひとりひとり個性があって,それを好きになることもあれば,コンプレックスになることもあります。
それを誰かに否定的なことを言われるとか,それを原因で差別をされるなんてことは,あってはならないはずです。
小さないじめも人種差別も根本的なところは同じで,「自分と違う特質・特性を認めない」ということが根本にあります。
生まれながらの特質・特性,自分ではどうしようもないことを理由に嫌な思いをさせられるということほど,理不尽なことはありません別の人に生まれ変わることはできませんから,解決策がないのです。

お互いに違いを認め合い,尊重し合える心を私たちが等しく持つことができれば,少しずつ平和な世の中に近づいていけるのではないかと思います。

―ありがとうございました。

『コトニ弁護士カフェ』次回の長友隆典弁護士の担当回は, 2020年7月3日放送です!
よろしくお願いいたします。

ラジオ番組『コトニ弁護士カフェ』
毎週金曜日10時30分から三角山放送局で放送中!
隔週で長友隆典護士&アシスタントの加藤がお送りしています。
身近な法律のお話から国際問題・時事問題,環境や海洋のお話まで,様々なテーマで約15分間トークしています。
皆様からの身近なお悩み,ご相談などのリクエストもお待ちしております。
三角山放送局 reqest@sankakuyama.co.jp または当事務所のお問い合わせフォームでも受け付けております。

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