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あおり運転は犯罪行為!法律と対策について弁護士が解説

『コトニ弁護士カフェ』2025年6月27日放送分

夏のお出かけが増えるこの時期、注意したいのが「あおり運転」。

近年、あおり運転は、単なるマナー違反ではなく、重大な刑事事件に発展するケースもあり、社会問題になっています。

今回は、あおり運転の危険性や罰則、巻き込まれないための注意点についてお話しします。

道路交通法における「妨害運転」の定義


あおり運転は、正真正銘、犯罪です。あおり運転は「妨害運転」とも言われ、重大な交通事故につながる極めて悪質・危険な行為で、正真正銘の犯罪行為とされています。

一般的に「あおり運転」と呼ばれているのは、前の車との車間距離を極端に詰めたり、後ろから執拗にクラクションを鳴らしたり、蛇行運転をして周囲の車を威嚇したりといった、危険で挑発的な運転行為のことを指します。

ただし、法律上「あおり運転」という明確な定義があるわけではありません。ですが、こうした行為の多くは、道路交通法で禁止されている「妨害運転」に該当します。

妨害運転の10類型

妨害運転として取締まりの対象になるのは、次のような10類型です。

  1. 対向車線を逆走するなどの通行区分違反
  2. 不要な急ブレーキ
  3. 車間距離を極端に詰めて走行する行為
  4. 急な進路変更や蛇行運転
  5. 無理な追い越しや左側からの追い越し
  6. ハイビームを不必要に継続して照射する行為
  7. クラクションを何度も鳴らすなどの警音器の乱用
  8. 幅寄せや急加速・急減速などによる威嚇運転
  9. 高速道路で極端に遅い速度で走る最低速度違反
  10. 高速道路上での不必要な停車や駐車

こうした行為は、事故の原因となるだけでなく、他のドライバーに大きな恐怖やストレスを与えます。

▼参考
妨害運転の対象となる10類型の違反|警視庁
危険!「あおり運転」はやめましょう|警視庁

東名あおり運転事故をきっかけとした取締まり強化と法改正


あおり運転は社会的にも大きな問題になり、令和2年6月30日に改正道路交通法が施行され、あおり運転は「妨害運転」として法的に明確に位置づけられ、厳しい罰則が科されるようになりました。

あおり運転といえば、神奈川県の東名高速道路で起きた事件が、あおり運転の危険性を社会全体に知らしめた象徴的な事故でした。

平成29年6月、神奈川県の東名高速道路で、あるワゴン車があおり運転を受けて追い越し車線に無理やり停車させられ、そこに後続の大型トラックが追突し、車に乗っていた夫婦が死亡、さらに、同乗していた2人の娘さんも重軽傷を負ったというものです。

この事件については、加害者に対して令和元年の第一審で「危険運転致死傷罪」が適用され、懲役18年の実刑判決が言い渡されました。

その後、高等裁判所で一審の手続きに違法がある地裁に差し戻され、令和3年に差し戻し審が行われましたが、東京高等裁判所は同年10月26日、懲役18年という一審判決を支持し、被告人の控訴を棄却する判決を言い渡しました。被告人は上告し令和7年7月時点では判決は確定していません。

この事故は「東名あおり運転事故」とも呼ばれ、あおり運転の社会的な危険性が強く意識されるようになるきっかけとなりました。

あおり運転の件数については、内閣府が公表している「車間距離保持義務違反」の取締まり件数の推移を見てみると、平成26年から平成28年までは年々減少傾向にありました。

  • 平成26年:9,581件(うち高速道路上が9,033件)
  • 平成27年:8,173件(うち7,571件)
  • 平成28年:7,625件(うち6,690件)
  • 平成29年:7,133件(うち6,139件)

ところが、平成30年には取締まり件数が13,025件と急増し、特に高速道路での違反件数が11,793件と、前年のほぼ2倍近くに跳ね上がっています。

これは、先ほどご紹介した平成29年の東名高速で起きた「東名あおり運転事故」をきっかけに、警察が取締まりを一層強化したことが背景にあると考えられます。

また、同じく平成30年には、あおり運転に関連して刑法が適用された件数も出ています。

  • 殺人罪:1件
  • 傷害罪:4件
  • 暴行罪:24件

このように、平成30年には合計29件もの事件で、刑法が適用されています。

特に「暴行罪」の適用が多いというのは、運転中の威圧的な行為が、物理的な暴力行為として法的に認定されたということを示しています。

▼参考
あおり運転対策について|内閣府

72.5%のドライバーがあおり運転を経験


チューリッヒ保険会社が実施した「2024年あおり運転実態調査」によると、「あおり運転をされた経験がある」と回答したドライバーは72.5%にものぼりました。

これは、前年の53.5%から19ポイントも上昇しており、半年以内に遭遇した人も24.1%という高い数字です。

この背景には、コロナ禍が明け、人の移動が活発化した影響もあると見られています。

また、あおり運転に遭遇したときの状況として最も多かったのは、「激しく接近し、もっと速く走るように挑発してきた」というパターンで、これが76.5%を占めています。

興味深いのは、あおり運転の”きっかけ”に心当たりがないという人が76.3%にものぼることです。「制限速度で走っていた」「スピードが遅かった」など、通常の運転をしていただけにもかかわらず、挑発されるケースが多く報告されています。

▼参考
全国のドライバーに「2024年あおり運転実態調査」を実施|PR TIMES

あおり運転の被害を防ぐために


あおり運転に遭わないための工夫として、「車間距離をしっかりとる」「ドライブレコーダーを設置する」といった対策があります。

ドライブレコーダーは本来、事故などが起こった際に、そのときの状況を証拠として記録するためのものですが、実は「ドライブレコーダーを設置している」というだけで、「事故やトラブルに巻き込まれたとき、ちゃんと記録が残ります」というアピールになるので、あおり運転などのトラブルに巻き込まれないための抑止力になります。

「ドライブレコーダー録画中」のようなステッカーも販売されていますので、そのようなステッカーを貼るのも効果があるかもしれませんね。

とにかくあおり運転は犯罪につながる行為ですので、不意に巻き込まれないように、危なそうな車がいたら追い越させて距離を取る、高速などでなければ道を変えるなど、巻き込まれないための工夫も必要です。

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