ブログ

続くコメ価格高騰、1年で約2倍に!原因と今後の見通しについて

『コトニ弁護士カフェ』2025年3月7日放送分

連日の報道の通り、2024年夏頃から、米の価格高騰が続いています。
2025年3月現在のデータを見る限りでは、2024年6月から約90%も価格が高騰しているようです。

農林水産省によると、全国のスーパーなどで販売された米の平均価格は、2024年6月頃までは5kgで2000円〜2200円を推移していましたが、その後価格は上昇し、品薄となった8月には2600円を超え、さらに2025年3月には、5kgで4000円を超えるケースも見られています。

一時期は品薄になった時期もあったものの、今はどこのスーパーに行ってもお米は入手できるようになったものの、2024年秋に新米が出たあとも価格は安定せず、上がり続けています。

今回は、コメの価格高騰について、原因と今後の見通しについてお話しします。

▼参考
農林水産省スーパーでの販売数量・価格の推移(令和7年3月3日)

減反政策による生産量低下が原因か


米の価格高騰についてはさまざまな要因が指摘されていますが、その一つとして長年にわたる減反政策が影響していると考えられています。

減反政策とは、政府が米の生産量を調整する制度のことです。かつて政府は「米の供給は十分にある」との判断から、減反を推進していました。この政策の目的は、米価の安定や需給の均衡を図ることにありました。

背景には、戦後の米生産量の増加があります。日本の米生産量は1967年にピークを迎えましたが、一方で米の消費量は年々減少し、生産量が需要を上回る「米余り」の状態が発生しました。

その要因の一つとして、戦後、外国から多様な食材が流入し、日本人の食生活が変化したことが挙げられます。米以外の食品を選ぶ機会が増えたことで、「米離れ」が進んだのです。

この「米余り」を解消し、需給の均衡を取るために、政府の方針により農家はやむを得ず収穫前に稲を刈り取ったり、田んぼを畑に転換したりする減反政策を実施しました。

しかし、減反政策は2018年(平成30年)に廃止されましたが、その後も米の生産量は増えず、むしろ米不足が発生していた可能性が指摘されています。

特に、2024年10月の食糧部会で「新米が出回れば米不足は解消される」と断言されたことが、備蓄米の放出判断の遅れにつながったのではないかとの見方もあります。

さらに、JA(農業協同組合)の対応にも問題があったのではないかとする意見もあります。JAの責任者は、米価を維持するために減反を支持・推進していたとされ、需要に応じた十分な生産量を確保できていなかったのではないかと指摘されています。

▼参考
〈コメ不足を招いた農水省とJAの失態〉コメ転売が相次ぐなか、不足の元凶は「減反とそれに対する産地の隷属体質」と専門家が指摘
minorasu 「減反政策とは? 廃止から4年、米農家の現状と今後の展望を考える」

コメの高値はいつまで続く?今後の見通し


現在の米の価格高騰は、先ほど挙げた原因のほかに、そもそも集荷業者が高値で生産者から米を集めたことも一つの要因と言われています。政府が備蓄米を放出するとはいえ、安い備蓄米が市場に流れたところで、高く買ってしまった米を赤字で売ることはできません。となれば、米の価格がすぐに元通りに下がることはないでしょう。

もうひとつ気がかりなのは、昨年以上に米の在庫量が足りなくなっているということです。昨年夏の米不足を受けて、例年よりも早いペースで2024年産の新米が消費される事態が起きており、「在庫水準がかなり危ういのではないか」とささやかれているようです。

また、この夏も在庫量は逼迫する可能性が高いといわれており、その影響も考えると米の価格が元通りの価格まで下がるとは考えにくいでしょう。

転売の存在も、米の価格が下がらないことに少なからず影響しているかもしれません。実際に、オンラインのフリマサイトなどでは、値上がり前に4000~5000円だった10キロ袋に入ったコメが、1万円を上回る価格で完売したケースもあったそうです。

米の価格は,平成7年(1995年)にいわゆる食管法が廃止され,平成16年(2004年)に食糧法が改正され,事実上自由化されました。
しかしながら,こうした現状を見ていると、現在も米は日本人にとって重要な食糧なので、昔のように国が価格を管理していたことにメリットもあったように思います。自由化もいいですが、米に関してはある程度価格を決めたほうが安心だったように感じます。

▼参考
【コメ高騰】転売ヤーが消えても、備蓄米放出でも「米の値段」は下がらない…《令和の米騒動》が今年も続く「最大の原因」
だから転売ヤーがコメでボロ儲けしている…「コメはある」と言い張って備蓄米の放出を渋った農水省の大失態

備蓄米放出と安定供給のための対策


備蓄米の放出によって、米の買い付け競争が一定程度、落ち着くのではないかと言われています。専門家によっては、「4月頃には備蓄米を含めて安値で取り引きされた米がスーパーなどの店頭に本格的に並び始め、現在の販売価格の7割ほどに下がるのではないか」との見解をしている方もいました。

特に西日本は、次の新米の収穫時期が東日本より早いため、米不足という不安から生じていた一連の事態が解消されていくのではないかということです。

他にも米不足対策として、安定生産のために農家ができることとしては、農家1戸当たりの生産量を増やす取り組みが重要となってきます。たとえば、多品種を栽培して作期を分散することで、効率的かつ大規模な米の栽培が実現できます。

農家が減って米不足になれば輸入米を受け入れる選択肢もありますが、日本は日本の農業を守り続けなければなりません。価格の安定のためにも、今後は転売の取り締まりなど、昔のように米の取扱い業者を限定にするなどといった対策も有効なのではないかと思います。

また、異常気象についても対策が必要との見解があります。実際に、データやAIを活用することで、異常気象でも減収リスクを抑えることが期待できるそうです。


例えば、ドイツの大手化学メーカーBASFが開発した栽培管理支援システム「xarvio®(ザルビオ)フィールドマネージャー」というものがありますが、これを利用すると地域・品種・天気など、さまざまな情報をAIが解析してリアルタイムで水稲の生育ステージを予測できるようです。膨大に蓄積されたデータをAIが解析しているため、異常気象の中でも作業適期を把握することが可能となりました。

実際に、静岡県の農家で、ザルビオを活用して刈取適期を見極め、ほぼ全て一等米で通せたという事例があります。また、追肥の判断にも活用し、使い始めて3年で収量が約20%アップしたとのことです。このように、現代の発展を上手く使いこなすことで、米の生産量が上がれば、米不足の解消につながるかもしれません。

日本だけでなく、世界の穀物需給は非常にひっ迫している状態です。あらゆる食料価格が上がっていますが、やはり国産・国内の生産体制を確立していくことが大事です。米に限らず、食料の安定供給体制を構築することで、消費者に不安を感じさせないようにする取り組みが今後必要となってきそうです。

▼参考
「ザルビオ フィールドマネージャー導入ブック」(農林水産省のリンク)
政府備蓄米21万トン放出へ 私たちの生活への影響は
コメ不足の再来。“令和の米騒動”に学ぶ農家の未来

関連記事

  1. トランプ氏、大統領復活の可能性は?|弁護士が解説
  2. 2023年6月改正「入管法」が与える影響は?|国際弁護士が解説
  3. 緊急事態宣言延長とGoToトラベルの再開はいつ?
  4. ゴールデンウィークの由来と祝日|国民の祝日に関する法律のお話し
  5. 北海道 朱鞠内湖の熊襲撃事件、その責任問題は?弁護士が解説
  6. 盗まれた自転車を取り返すには?
  7. 引っ越しトラブル②敷金が返ってこない?退去時のトラブルについて
  8. 闇バイトに気をつけよう!見極めるポイントを弁護士が解説
PAGE TOP