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街に出没するクマの増加|自治体の責任と対策について

『コトニ弁護士カフェ』2022年5月20日放送分

ここ最近,さらに暖かくなってきたこともあり,クマの出没ニュースが多くなってきました。
4月には,2021年の道内市街地でのクマの被害は史上最多だったとお伝えしましたが,今年もヒグマの目撃情報がすごく増えており,過去の記録を更新してしまう可能性もあります。
以前の放送では,まずは被害を受けないために対策をするのが大事ということをお話ししました。
また,実際に農家の方へ野生動物対策のための助成金があったり,地域によっては被害を補償する制度もあったりするとのことをご紹介しました。

しかし,札幌のような市街地に住んでいる場合,たとえば自分の土地といっても住居とその周りだけだったり,もちろん賃貸住宅に住んでいる方もたくさんいる中で,野生動物対策をしようと言われてもなかなかピンとこない人も多いでしょう。
そこで今回は,野生動物の被害を受けないように,市民が安心安全な暮らしを送るため,自治体がやるべきこと,責任などはどのようになっているのか,というところに着目したいと思います。

札幌市が行っているヒグマ対策

札幌市のホームページには,ヒグマ対策のページがあります。
札幌市の取り組みや活動の紹介のほか,ヒグマに出会わないための対策など色々な情報がまとめられています。

また札幌市では,家庭菜園をやっている方向けに,電気柵の購入金額の2分の1,最大2万円を補助してくれる制度や,登山や渓流釣りで山に入る方向けに,くま鈴なども無償で貸し出す制度が行われているようです。
受付期間が決まっており,今年は5月19日から受け付けが開始しています。
貸し出しの際は電話などで予約する必要があるようです。
購入補助は先着順で,貸し出しにも数に限りがあると思いますので,対象地域で家庭菜園をしている方はぜひチェックしてみてください。
札幌市のホームページはこちら

そして現在は,札幌市の公式LINEで「ヒグマ出没情報」を配信しています。
たとえば南区,西区などのようにお住まいの地域を選択して,該当地域に出没情報があった際に,出没日時や出没場所などが届くような仕組みです。
今ではテレビを観ない人が増え,LINEを使っている方はたくさんいるため,とても現代的で便利な機能といえるでしょう。

なお,札幌市以外でも,北海道では多くの市町村でヒグマ出没情報をWebで発信しています。
登山や釣りに行く際には確認しておくと安心です。

ヒグマ被害があった場合の自治体の責任について

実際に札幌のような街中で突然ヒグマが現れたら,わたしたちにはどうすることもできません。
ヒグマに畑や敷地を荒らされてしまったり,襲われてケガをしてしまったり,最悪な場合,直接的な被害を受けてしまった場合があったとしましょう。
そうなってしまった場合でも,やはり相手は野生動物ですから,一般的な事件や犯罪とは異なります。
被害を賠償してもらうだとか,慰謝料を請求するだとかの責任を追及することは当然できません。
そこでやはり,被害を受ける前にまずは「対策する」ことが最重要になります。
とはいえ実際には,農作物の被害だけで年間100億円をのぼるとも言われている通り,野生動物の被害は避けられないのが現実です。

国や自治体はどこまで責任を持てるのか

なかなか難しい問題ではありますが,4月の放送で紹介した「鳥獣による農林水産業等に係る被害の防止のための特別措置に関する法律」いわゆる「鳥獣被害防止特措法」では,地方自治体で鳥獣による農林水産業等に係る被害を防止するための計画を定めることが出来るように規定されています。

そうすると,シカやクマなどが頻繁に出没して農作物や人に被害を与えることが予見出来ていたにもかかわらず,その被害を防止するために何もしないとなると,農作物や人などに損害が生じた場合に,国や地方自治体は国家賠償法などに基づき賠償をする義務が生じる可能性はあります。

対策や管理を行い、人と共存できる地域づくり

本音を言えば,増えすぎた地域では生息数を減らすことは必要かもしれません。
増えすぎたシカも同じですが,人とのかかわりだけではなく,健全な生態系を守るためには間引きも必要だと思います。
そして,前回の放送でも触れましたが,やはり人が生活する地域と野生動物が生活する地域は明確に区別する必要があります。
山林との境目にゴミを捨てない,畑や家の周りは草刈りをして野生動物が警戒して入らないようにする。
これはシカよけでは多く見られますが,畑の周りにフェンスをする,ヒグマが通行しそうな川や林などは通れないように草刈りをしたりフェンスをしたりするなど,人のいる地域には野生動物が入らないように工夫することは不可欠だと思います。


クマやシカなどの野生動物がたくさんいる生態系を守ることは大切ですが,人の生活に害がでないように対策しながら「人との共存」を目指さなければなりません。

ラジオ番組『コトニ弁護士カフェ』
毎週金曜日10時30分から三角山放送局で放送中!
隔週で長友隆典護士&アシスタントの加藤がお送りしています。
身近な法律のお話から国際問題・時事問題,環境や海洋のお話まで,様々なテーマで約15分間トークしています。
皆様からの身近なお悩み,ご相談などのリクエストもお待ちしております。
三角山放送局 reqest@sankakuyama.co.jp または当事務所のお問い合わせフォームでも受け付けております。

三角山放送局の放送内容はこちらで視聴できます!

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