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クマなどの動物被害による法的責任とは|鳥獣保護管理法について

『コトニ弁護士カフェ』2022年4月8日放送分

今年の冬は本当に雪がすごくて大変な冬でしたが,暖かい日が増え,春が近づいてきました。
暖かくなってくると野生動物の動きも活発になってきます。
北海道の生活で切っても切れないのが野生動物との付き合い。
今回は,クマなどの動物被害による法的責任について。
また,万が一遭遇してしまった場合の対処法,そして遭遇してしまわないための対策についてお話しします。

ヒグマとの遭遇は決して人ごとではない北海道

田舎だけでなく,都会の札幌市内でも定山渓や大倉山の方など,少し山に近いところにいくとクマと遭遇するケースも珍しくありません。
私は北海道に住んで17年ですが,本州の東北地方で1回,北海道で4~5回くらい遭遇したことがあります。
知床に行って船に乗ると、沿岸にもたくさんヒグマがいました。
本来クマは用心深いのでなかなか直接見ることはなく,実際に面と向かって会ったことはないのですが,歩いている音や獣の匂いだけで,そこにクマがいるのがわかるのです。
野生のクマのそばを通ったことはある人はわかると思うのですが,クマは強烈な臭いがします。
しかし,クマは近くに来ることがあっても自ら姿を現すことはせず,ガサガサっと逃げていくのです。

他にも,車で山奥の林道を走っているとバッタリ遭遇し,クマが逃げて追いかけっこのようになったことも何度かあります。

実際に起こった動物による被害

実は昨年の2021年は,道内市街地でのヒグマの被害が史上最多でした。
クマによる被害で建物や畑を荒らされるだけならまだしも,実際に大けがをしたり,場合によっては命を落としたりすることもあります。
野生動物による被害は,農作物の被害だけでも年間100億円を超えるのが現状です。

意識的に行う「クマ対策」

ヒグマは人の気配を感じると先に逃げるのことが多いので,こちらの気配を先に教えてあげましょう。
クマ避けの鈴はもちろんですが,ロケット花火や爆竹をもって,これから山に入るという時は爆竹やロケット花火を打ち上げたりするのも効果的です。
他にも,クマを撃退するトウガラシ成分が入っているスプレーを必ず持って行くようにしています。

野生動物,特にクマやイノシシはとても危険だということを認識していただいて,もしクマやイノシシが現場にいたらむやみに近づいたりしないことです。
北海道にはいませんが,サルも襲い掛かってくるのでとても危険です。

野生動物に畑を荒らされたりなど被害を受けてしまった場合,安全を確認した上で,被害にあったところの証拠写真を撮っておくのがおすすめです。
それから市町村の担当課や警察,または近隣の駆除業者に連絡したりするケースもあるでしょう。
単に農地が荒らされていただけだと,ひょっとすると野生動物ではなく,人が盗んだ可能性も否定できません。
動物被害と見せかけて人が盗んでいる可能性もあります。
そういった確認をするためにも,監視カメラの設置も有効です。

クマなどの動物被害による法的責任

今のところ、動物被害を直接的に補償するような法律はありません。
たとえば野生動物と車で衝突したり,家を壊されたりなど,そういった被害に対しても自動車保険や火災保険の対象外となることがほとんどです。
ただし,自治体によっては被害対象を絞り,動物被害に対する補償制度を導入しているケースもあります。
たとえば兵庫県では,兵庫県とJAが協力して,シカやイノシシによる水田の被害に対し,一定の補償を受けられる制度があるようです。
こういった補償があることで農家の皆さんも安心できるでしょう。
あとは被害を受ける前の対策に力を入れるケースが多いかと思います。
とはいえ,野生動物を防ぐ対策について助成金が出る制度はあるでしょう。
例えば,国の支援で鳥獣被害防止総合対策交付金というのがあるんですが,畑の周りに電気柵をつけたり,イノシシやクマ,シカの罠をつけたりするのも助成金があったりします。
また,後述の鳥獣被害防止特措法では,捕獲した動物をペットフードや革製品したり,ジビエを積極的に推進するような策を国や地方公共団体が講ずることができるように明記してあります。

『鳥獣による農林水産業等に係る被害の防止のための特別措置に関する法律』

野生動物に関わる法律では,こちらは農作物などへの被害に関するものなのですが,『鳥獣による農林水産業等に係る被害の防止のための特別措置に関する法律』という法律が平成19年に制定されました。
これは現場に最も近い市町村が被害防止のための総合的な取り組みを主体的に行うことを目的として,被害防止策を計画して実行する際にこれを支援するための法律です。
また,そういった鳥獣駆除に関する法律では「鳥獣保護管理法」という法律があります。
これは元々「鳥獣保護法」と呼ばれていたのですが,2014年5月に「鳥獣保護管理法」と改正されました。
こちらは,実際に人の暮らしに深刻な被害をもたらす動物を指定して,一定の駆除を認めるというもので,対象となる動物や駆除に対する認可・許可についてなど定められています。
余談ですが,鳥獣保護法は元々このようにどちらかというと農林水産業を守るための法律という側面もあって農林水産省の林野庁の所管だったのですが,環境庁が1971年に出来て環境庁に移管されたのです。

まずは被害を受けないように,しっかりと対策をすることが大事です。

自然との共生で大切なこと

まずは野生動物と近づかない,先に気付いてもらって近づかせないことが大事です。
現在は林業や農業をする人が減り,野生動物の侵入を防ぐ対策をする人が減ってきています。
動物が住む山と,人が住むエリアの境目が曖昧になってきているともいえます。
その結果,動物が人間の居住エリアに侵入してくるケースが増えています。


「ここから先は人間のエリア」と区切りをつけて,動物にもわかってもらえるような仕組みが必要です。
たとえば畑のまわりをいつもきれいに草刈りをして,見晴らしがよくなることで動物は警戒して入ってこなくなることもあります。
あとは電気柵などを設置することで,ここから先には入らないようにすることも効果的です。


大切なのは,駆除が必要になる前に動物と人間との距離をきちんと取るようにして,動物から近づいて来ないような対策を取ることです。

ラジオ番組『コトニ弁護士カフェ』
毎週金曜日10時30分から三角山放送局で放送中!
隔週で長友隆典護士&アシスタントの加藤がお送りしています。
身近な法律のお話から国際問題・時事問題,環境や海洋のお話まで,様々なテーマで約15分間トークしています。
皆様からの身近なお悩み,ご相談などのリクエストもお待ちしております。
三角山放送局 reqest@sankakuyama.co.jp または当事務所のお問い合わせフォームでも受け付けております。

三角山放送局の放送内容はこちらで視聴できます!

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