ブログ

2024年“過去最多”に近づくヒグマの出没と対策

『コトニ弁護士カフェ』2024年8月2日放送分

過去最多の出没が目撃された2023年に続き,2024年もヒグマの出没が相次いでいます。

北海道内での目撃件数は,2024年8月2日時点で1732件となっています。
今年の1月~5月末までは279件と令和最少の目撃件数でしたが,6月だけで817件と急増し,6月の1ヶ月間では令和最多の目撃がありました。
7月中も北海道内各地で500件以上の情報が寄せられているようです。

暖かくなると街に姿を現すヒグマですが,北海道の各地自体ではさまざまな対策が講じられています。
今回は,2024年過去最多に迫るヒグマの出没について,また対策や注意点などについてお話しします。

北海道各地で相次ぐヒグマの出没

北海道各地では,毎日のようにヒグマの出没・目撃情報が報道されています。
2024年7月には西区の三角山の遊歩道付近でヒグマの姿が確認され,三角山の自然歩道から盤渓までの全ルートを閉鎖したと発表されていました。

また,2024年5月にも西野の住宅街付近でも3頭の出没が確認されています。

山奥だけではなく,私たちが生活するエリアでの目撃も増えていることから,不安な日々を過ごす方も多いでしょう。
毎年,過去最多を更新する勢いでヒグマの出没情報が増えていますが,ヒグマの行動範囲も広がってきているようです。

ヒグマの定着を抑制する「出没重点エリア」の制定

札幌市では,人の生活圏とクマの生息域の区分に関わらず,ヒグマの定着を抑制すべき場所として「出没重点エリア」を定めています。

「ヒグマ対策重点エリア」事業実施プラン

出没重点エリアは,山林や山林に隣接している住宅地だけでなく,公園や自然歩道,市民の森のほか,観光施設やキャンプ場,スキー場等の観光・レクリエーション施設に点在しており,札幌市内でも市民の利用が多い地域であることがわかっています。

他にも,農家や家庭菜園が点在するエリアでの出没も挙げられています。
出没重点エリアでは,親から離れて間もない若いヒグマの出没も見られています。
本来,メスのヒグマはオスに比べ狭い範囲を生活圏とし,出産後約1~2年は子グマと一緒に行動します。
親離れした若いヒグマのうち,オスのヒグマは生まれた場所を離れて長距離を移動する一方で,メスのヒグマは生まれた場所の周辺に定着する習性があります。

ただし,一部の捕獲されたメスの個体では,DNA分析により,年によっては宮の森から真駒内,藻岩山まで広い範囲を移動していたことがわかっています。
サンプル調査やDNA分析などから複数の個体の行動を調査することで,ヒグマの繁殖や定着,移動範囲などのデータを集めて,各個体ごとの対策が可能になります。

ヒグマが西区・中央区周辺市街地へ出没する原因

札幌市の報告によると,西区や中央区周辺の市街地近くの出没要因のひとつとして,クルミの実が関連しているケースもあります。
以前はクルミの実がなる秋の出没に影響していましたが,ここ数年は冬を越した前年のクルミの実に誘引されて,春から夏に出没するケースも出てきているようです。

2024年5月に西区で出没したケースでは,クルミやウドを食べた形跡が残されており,山林でドングリが不足していることから,ヒグマがクルミを求めて市街地近くまで下りてきていると考えられます。

参考:さっぽろヒグマ基本計画2023 概要版

札幌市が実施しているヒグマ対策

札幌市のヒグマ対策には,公園と山林の境界部での電気柵やフェンスを設置したり,クマを誘引するクルミを伐採したり,電気柵で囲ったりなど,対策の強化が検討されています。

また,札幌市は「ヒグマにとって居心地の悪い環境を目指す」として,積極的に捕獲圧をかけていくとしています。

札幌市のヒグマ対策方針

公園や観光施設の電気柵等での侵入防止だけでなく,重点エリア内の自然歩道などにおいて,銃器を携帯した捕獲技術者による巡視も行うそうです。

それにより,ヒグマに警戒心をもってもらい,居心地の悪い環境を作り出します。
ヒグマの出没件数はメスの定着個体に大きく影響していることから,メスの定着個体の動きをより詳細に把握したうえで,箱わなを設置する等の具体策についても順次着手していくようです。

【ヒグマ対策】私たち市民が気を付けること

ヒグマに出会わないために,私たちはどんなことに気をつければいいのでしょうか。

まず,キャンプやレジャーなどで山林や野山に入る場合は,事前にヒグマの出没情報を確認しましょう。
そして,ヒグマが出没しているエリアには絶対に入らないことを徹底してください。

基本的にヒグマは人を避けて行動していますので,鈴やホイッスルなどで音を鳴らし,人の存在をアピールすることが大切です。
そういった道具がない場合には,手を叩いたり大きな声を出したりするだけでも効果はあります。
複数人でおしゃべりしながら行動するのも得策です。

ヒグマ対策には,クマ撃退スプレーなども効果的ですが,噴射距離が約5mなので,使用できるのは本当にヒグマに襲われそうなときに限られます。
ヒグマ本体に出会わなかったとしても,まだ新しめの糞や足跡を見つけた場合は速やかに引き返してください。近くにクマがいる可能性があります。

シカの死骸や木にひっかくような傷があった場合や,明らかにシカや他の動物がいない藪や森の中で,木がガサゴソと動いたり揺れたりする場合も同様です。
また,ヒグマにはヒグマ特有の強い臭いがあるので,近くにいるとわかる場合もありますので臭いも意識するようにしましょう。

ただし,多くの場合,ヒグマも人間が怖いためかヒグマ側が先に人間の存在に気付いて逃げていきます。
先にこちらの存在を知らせるように,大きな声を出したりヒグマ鈴や爆竹を鳴らしたりすることが大切です。

私もヒグマがいそうな場所は爆竹や笛などを鳴らして歩くようにしていますので,クマの気配がすることがあっても,実際に目の前で会ったことは未だありません。

もしもヒグマに遭遇してしまったら

ヒグマに遭遇してしまっても,慌てず騒がず,落ち着いて行動してください。
背中を向けて走って逃げると,ヒグマは本能的に追いかけてきてしまいます。
大声を出したり石を投げたりすることも,ヒグマを興奮させてしまうため危険です。

まずは落ち着いて,ヒグマから目を離さず,ゆっくりと後ずさりをしてその場から立ち去ってください。

もし遭遇したヒグマが子どもだった場合は,母グマが子グマを守るために攻撃してくる可能性が非常に高いといわれていますので,さらに注意が必要です。
いずれにしても,背中を向けて走って逃げず,ヒグマから目を離さず,静かに速やかにその場を離れましょう。

ヒグマ対策には,クマ撃退スプレーなども効果的ですが,噴射距離が約5mなので,使用できるのは本当にヒグマに襲われそうなときに限られます。
また,風向きなどによって自分の顔にかかってしまうと大変なことになってしまいます。

したがって,ヒグマを見かけたからといって,むやみに噴射するようなものではないため,注意してください。

ヒグマに遭遇しないのが一番の対策

一番の対策は,とにかくクマとの遭遇を避け,まずは野生動物と近づかない,先に気付いてもらって近づかせないことです。
また,山林や森に入る際には,食べ物やごみは放置せず,必ず家に持ち帰るようにしてください。
生ごみだけでなく,空き缶やペットボトル,弁当の容器などもヒグマを誘引する要因となります。
ヒグマの嗅覚は非常に優れているので,ごみは必ず家に持ち帰りましょう。

まずは「ヒグマに出会わない」ことが一番ですので,出没情報などを常にチェックし,安全な夏休みをお過ごしください。

札幌市では,市のホームページや公式LINEでヒグマ出没情報を配信していますので,こういったシステムの利用もおすすめします。

札幌市ヒグマ出没情報

▼過去の記事

関連記事

  1. 仕事中に熱中症になったら?安全配慮義務と労災認定について
  2. スキー・スノーボードでの事故 法的責任は?第1回
  3. 台風による損壊があった場合について|​​民法717条第1項及び2…
  4. パワハラの定義と対処法〜証拠保全と因果関係の立証が大事
  5. 相続登記の義務化について~過去の相続も対象に
  6. 印鑑の法的効力は?ハンコがなくても成立する契約
  7. 自然との共生を考える②
  8. AIと著作権〜画像生成AIにおける法的問題について
PAGE TOP