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釧路湿原メガソーラー開発:自然環境を守るための法整備

『コトニ弁護士カフェ』2025年12月5日放送分

日本の指定国立公園であり、ラムサール条約にも登録されている釧路湿原。
貴重な自然を有するこの場所で、メガソーラーの大規模開発が進んでいることは、みなさんもご存知だと思います。

実は、環境への懸念に加え、さまざまな問題が取り巻いているのです。

今回は、こうした事例から見えるメガソーラー開発の今と制度の課題についてお話しします。

釧路湿原で開発が進むメガソーラー計画


釧路湿原といえば、日本最大の湿原であり、国立公園であるだけでなく、国際的に重要な湿地として「ラムサール条約」にも登録されています。
特別天然記念物のタンチョウをはじめ、希少な動植物が多く生息しているとても貴重な場所です。

その釧路湿原の周辺で、約6,600枚のソーラーパネルを設置する大規模なメガソーラー計画が進められています。

そして、この工事をめぐって土壌汚染対策法違反、森林法違反、盛土規制法違反、届け出の大幅遅延などの問題が次々と見つかっているのです。
工事記録の中には、作業不可能な日に「作業した」と記載されているなど、虚偽の疑いがある点も報じられています。

これを受けて、文化庁が現地視察に入るほか、釧路市議会では撤退を求める声まで上がっている状況です。
11月の報道では、文化庁の調査により、予定地にガラス片やプラスチック片が見つかったことがわかりました。

業者が産業廃棄物を持ってきたのではないかと問題になっており、事業者が撤去作業を行うことになったそうです。

▼参考
ラムサール条約|釧路湿原国立公園連絡協議会
釧路湿原近くのメガソーラーの建設現場からガラス片やプラスチック片などが見つかる 事業者が撤去作業行う|Yahoo!ニュース

釧路だけではない、全国で進むメガソーラー

引用:釧路・阿寒湖観光公式サイト


メガソーラーに関わる一連の問題で、もっとも懸念されているのは環境への影響です。

湿原の周辺では森林伐採が進んでいるのですが、この地域の自然は本当に繊細で、湿原は広大な水のつながりによって成り立っていますので、森が削られると、周囲の生態系全体にダメージが広がるおそれがあります。

それに、特別天然記念物のタンチョウをはじめ、たくさんの希少生物が暮らしている地域にもかかわらず、その影響が十分に調査されないまま工事が進んでいるという点も、大きな問題です。

さらに、景観や文化的価値への影響も計り知れません。
釧路湿原といえば、日本でも有数の自然景観を誇る場所ですし、観光資源としても大変価値があります。
こうした魅力が、大規模なソーラーパネルによって損なわれてしまうのではないかという懸念も強く指摘されています。

そして建設現場では、法令が守られていないことも次々と問題になっています。
本来、工事を始める前に提出しなければならない届け出が、実は5か月以上も遅れて出されていたり、工事記録と実際の作業内容が食い違っていたりと、かなり不自然な点が重なっています。

こうした状況を見ると、国が定めている安全管理や環境保全のルールがしっかり守られていない可能性があり、事業者への信頼が大きく揺らいでしまうでしょう。

2025年12月5日時点の情報では、北海道知事が地域と共生しないメガソーラーは認めないという姿勢を示したものの、事業者は今年の12月中の工事再開を目指しているということです。

また、事業者が反対の町内会に“現金200万円”の支払い提案したものの、受取りを拒否されるなど今後の成り行きが注目されています。

▼参考
【釧路メガソーラー問題】文化庁が予定地視察“国の特別天然記念物”タンチョウの繁殖や成育への影響調査|FNNプライムオンライン
工事同意が条件か?建設業者側が反対の町内会に“現金200万円”の支払い提案(UHBニュース)

鴨川、阿蘇でもメガソーラーによる環境破壊が問題に

釧路だけはなく、全国でもメガソーラーに関連したトラブルが発生しています。

たとえば千葉県の鴨川市では、本来残しておくはずだった森林を、1.5ヘクタールも誤って伐採してしまうという問題が起きました。
これは森林法の許可条件に違反する重大なケースで、管理体制そのものが問われています。

また、熊本県阿蘇の山都町では、草原地帯におよそ20万枚ものパネルが設置されました。
この地域は世界遺産登録を目指している場所で、豊かな景観が大きな魅力です。
メガソーラー建設によって、その景観が大きく損なわれてしまったとして議論が起きています。

▼参考
山林切り裂きメガソーラー(下) 不透明な事業主体、FIT認定「まるで売買」|農協協同組合新聞
ソーラーパネル”20万枚”が世界遺産目指す阿蘇に 景観の課題への対応は|日テレNE

メガソーラー開発急増に法整備が追いつかず


メガソーラー開発が全国的に増えた背景には、2012年に導入された「固定価格買取制度(FIT)」があります。
再生可能エネルギーで発電した電気を一定価格で買い取る仕組みで、導入後、事業者が一気に参入しました。

原因は大きく二つあります。ひとつ目は「法律や制度が追いついていないこと」が挙げられます。
FITそのものが問題というわけではなく、あくまで制度の導入によって事業者が急増した一方で、環境保全や安全性のチェック体制が追いつかなかったのです。

特に、国立公園内には「普通地域」という、規制が緩い区域があり、届け出だけで大規模開発が可能という制度上の穴も指摘されています。

二つ目は「行政チェックの弱さ」が挙げられています。
届け出の遅延や工事記録の不備など、不自然な点があっても、行政が十分に確認できないまま工事が進んでしまうケースがあります。
これらが重なり、全国で同じような問題が繰り返されています。

▼参考
再生可能エネルギーの導入状況|経済産業省ー資源エネルギー庁
国立・国定公園内における大規模太陽光発電施設設置のあり方|環境省

再生可能エネルギーを正しく活用するために


メガソーラーや再生可能エネルギーそのものが悪いわけではありません。
ほとんどの化石燃料を輸入に頼っており、CO2などの温暖化ガスの排出を抑制するためにも、再生可能エネルギーは日本にとって今後ますます大事になってくる取り組みです。

ただ、環境を壊したり、法律違反のまま進んでしまったりすると、本来の目的である「持続可能な社会づくり」がかえって遠のいてしまいます。
そのうえで、改善の方向性として大きく三つあります。

1. 法整備の強化が必須

これまで制度の隙間を突いたような開発が起きていたので、そこをしっかり塞ぐ必要があります。

  • 政府は、国立・国定公園での大規模メガソーラーの新規建設の規制を強化する方針であること
  • 自然公園法の改正を視野に入れた許可基準を厳格化するということ
  • 特に規制が緩かった「普通地域」での大型開発を制限する

このような内容を、実際に議論しているそうです。

今回問題となっている釧路や阿蘇のケースを踏まえ、環境価値の高い地域で同じ問題を繰り返さないためだといえるでしょう。

2. より慎重な事前調査

メガソーラー建設によって、希少な動植物が影響を受けないか、景観はどうなるのか、文化的価値は守られるのか。
本来は着手前の段階でもっと時間をかけて調べるべきことが、これまで不十分なまま進んでしまうケースが多かったといえます。

これについても国会では、「環境調査の義務付けをさらに強化すべき」との意見が相次いでいるようです。
今後は地域ごとの特性に合わせて、より慎重な環境評価が求められます。

3. 地域の方々との対話

たとえ環境に配慮したエネルギー計画だとしても、住んでいる方々が納得できなければ、持続可能な事業にはなりません。

住民の理解や不安に寄り添いながら進める対応が求められます。
実際に政府でも、制度の見直しや監視体制の強化や開発の基準の調整といった点も、今後の検討事項になっています。

▼参考
メガソーラー規制強化へ、法令改正や監視体制…年内にも対応|読売新聞オンライン

環境に配慮したエネルギー開発を


私個人の意見とは、太陽光発電は、CO2を排出しないというメリットがあるため、その推進に反対という立場ではありません。

しかし、同じCO2を吸収する森林を切り開いたり野生動物の生息地である湿地帯などを埋めたりしてメガソーラーを建築するのは本末転倒だと考えます。
そこで、建物の屋根の上やゴルフ場の跡地など、人工的な場所の上部や既に活用されていない土地の上に作るのが良いのではないでしょうか。

たとえば、鉄道の線路の内側に設置してる例はとても良いアイデアだと思います。

▼参考
世界初の鉄道線路内ソーラー発電システムを開発(株式会社フルーク)
2本のレールの間にパネル設置、スイスで実証実験(東洋経済オンライン)


こうした改善が進んでいけば、環境を守りながら再生可能エネルギーを広めていくことができますし、地域の方々も安心して受け入れられるようになるのではないでしょうか。

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