ブログ

トランプ大統領就任とTiktok禁止法をめぐる動き

『コトニ弁護士カフェ』2025年2月7日放送分

20251月20日にトランプ大統領の大統領就任式が行われました。
トランプ大統領はメキシコ国境の管理強化や、石油掘削許可の拡大でエネルギー政策の転換を図る、さらには、違法移民の強制送還、アイスランドの買収提案、メキシコ湾という名前をアメリカ湾に変える、JFK事件や911事件の情報を開示するなど、さまざまな政策を掲げていますが、そのなかでも、特に関税措置やTiktok禁止法が話題になっています。
今回は、トランプ大統領就任とTiktok禁止法をめぐる動きについてお話しします。

TikTokに関する中国側の主張とは


2024年1月にアメリカの”ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)”が行った調査によると、TikTokが導入したシステムはまだ「穴だらけ」で、アメリカのTikTokと中国のバイトダンスの間で非公式にデータが共有されていることが判明しました。

また、中国のバイトダンス従業員が情報源を突き止めるためにジャーナリストのデータにアクセスするなどの事件が懸念をあおっています。

しかし、1月20日に行われた中国外務省の記者会見では「TikTokはアメリカで長年運営され、法律を順守し、アメリカの国家の安全を害したことはない」と主張し、「中国政府が企業や個人に対して現地の法律に違反する方法で外国国内にあるデータを収集したり、提供したりするよう要求したことはない」と改めて主張しています。

▼参考
BBCニュース「米下院、TikTokのアメリカでの利用禁止できる法案を可決」
BBCニュース「TikTok、英ジャーナリストのアカウントを特定・追跡 データ侵害の懸念」
NHKニュース「中国外務省報道官「TikTokが米の国家安全を害したことはない」」

トランプ大統領は75日間の猶予を決定


トランプ大統領は、SNSを活用している方で、前回の大統領選でもTikTokを活用したこともあり、「TikTokに思い入れがある」と語り、政府がソーシャルメディアを規制することに対しては、消極的な姿勢を示しています。

昨年12月の法律の施行延期を求めた意見書では、TikTokの規制は憲法が保障する表現の自由を侵害するとの考えを強くにじませ、大統領による中国との外交交渉にも影響を与えると指摘しています。

実際に法律が施行された1月18日の夜、アメリカの1億7000万人のユーザーがTikTokを利用できない状態になりましたが、トランプ大統領は19日にこの法律の施行を遅らせ、20日にはアメリカでサービスを再開しました。

トランプ大統領は、NBCテレビの電話インタビューで「90日間の延長が妥当であり、慎重に検討する必要がある」と述べ、最終的に75日の延期に署名しました。トランプ大統領は、米企業が50%の所有権を持てば、米国でのサービス継続を容認する考えを示し、法適用の猶予によって「安全保障を確保するための取引をすることができる」と説明しています。

▼参考
BBCニュース「TikTok、米でサービス停止もすぐに再開 トランプ氏は大統領令で禁止法に猶予設けると」
THE WIRED「米国の“TikTok禁止”を75日間延期。トランプが大統領令に署名」

トランプ大統領とイーロン・マスク氏の関係は?


一方でメディアでも注目されているのは、トランプ大統領とイーロン・マスク氏との関係性です。
イーロン・マスク氏は、アメリカ大統領選挙でトランプ前大統領の当選に貢献した1人です。

マスク氏はトランプ大統領支持を明確にし、みずから所有する旧ツイッターの「X」で、選挙に関する投稿を700件以上繰り返し、その閲覧回数はあわせて170億回にも及びました。

二人はビジネスにおける盟友と言われ、マスク氏のテスラやスペースXといった企業は、今でも政府と多くの契約を結んでおり、トランプ政権が進める規制緩和があれば、さらに事業拡大が期待できると見込まれています。
トランプ大統領が勝利した直後、マスク氏の企業の時価総額が急上昇したのは、トランプ大統領の政策がマスク氏の事業にプラスに働くという期待感が市場にあったからでしょう。

トランプ大統領にとってのマスク氏の存在は、選挙期間中の財政的なサポートも大きかったことも事実です。
マスク氏は選挙期間中に約1億3000万ドルもの巨額の支援をしています。
また、トランプ大統領にとって、マスク氏のようなビジョナリーなビジネスパーソンと一緒に行動することで、革新性とか未来志向をアピールできる効果もあります。

マスク氏は選挙の前から一貫してトランプ大統領を支援し、Xの運営においても公平性を重視する姿勢を示しています。
マスク氏は自由を原則としており、本質的には反権力の立場を取っており、このような考え方はトランプ大統領とも共通点が多いようです。

トランプ大統領就任以降、Facebookのオーナーであるマーク・ザッカーバーグ氏にも変化が見られました。
投稿内容に対する独自の検閲をやめると宣言し,トランプ大統領に対して100万ドルの献金をしたそうです。
トランプ大統領の今後の動きとともに、マスク氏をはじめとする周囲の動向も、引き続き注目を集めると予想されます。

▼参考
CNNニュース「マスク氏、対談でトランプ氏への協力試みる ハリス氏旋風阻止へ」
DIAMOND ONLINE「ザッカーバーグ氏の米メタ、トランプ氏就任基金に100万ドル寄付」

関連記事

  1. クマなどの動物被害による法的責任とは|鳥獣保護管理法について
  2. 能登半島地震から考える、地震災害への備え
  3. ロシアの行動と国際法について国際弁護士が解説|パリ不戦条約違反に…
  4. マイナンバーカードのメリット・デメリット〜法改正で何が変わる?|…
  5. 夏に増える水難事故について|弁護士が解説
  6. 北海道 朱鞠内湖の熊襲撃事件、その責任問題は?弁護士が解説
  7. 隣家から伸びてきた木の枝を切るの法律違反?民法第233条について…
  8. 新型コロナウィルスの感染拡大とGoTo事業の今後
PAGE TOP