結婚前の約束・・・それが結婚契約書です。
1.結婚契約書とは
結婚契約書とは,結婚時に二人の約束・ルールを明確にして契約書のかたちにすることです。
結婚契約書・婚前契約書(プレナップ:Prenuptial agreement)とは,元々はヨーロッパやアメリカで多く取り扱われており,まだ日本ではあまり馴染みがありませんが,結婚生活上の小さな取り決めから,万が一の離婚することになった時の財産分与の条件までを,結婚前に取り決めることができます。
結婚するのに契約を交わすなんて・・・と抵抗感を抱く方もいらっしゃると思いますし,離婚時のことまで取り決めるなんて縁起が悪いと感じる方もいらっしゃるかと思います。
しかし,婚前契約書を作成することで,より真剣に結婚生活を考え,真摯に取り組むことができます。また,夫婦関係の破綻の可能性を未然に防ぐ役割もあります。
2.結婚契約書を作成するメリット
・結婚生活を具体的にイメージすることができる
夢いっぱいの結婚生活をいざ始めると,それまで見えていなかった現実的な問題が突然目の前に現れることもあります。
お金のこと,家事の分担,子供・教育のこと,住む家のこと,お互いの両親のこと・・・
こんな問題が起きたときはどうする・・・?
お互いに事前に家庭生活をリアルに考えておくことで,スムーズな結婚生活を始めることができます。
たとえば,家計の管理はどちらが担当するか,家計の負担はどうするか,自由に使えるお金はどのぐらいにするか,ボーナスはどうするか,貯蓄額や貯蓄目標など・・・ などなど,お金の問題ひとつを取っても,話し合うべきことはたくさんあります。
・不安・衝突の種を事前に摘んでおく
「いつか離婚するかもれない」と思って結婚するカップルは,あまりいないでしょう。
しかし現実には,性格の不一致,浮気問題,DV問題,経済的な問題など,予想もしなかった様々な事態が起こるからこそ,多くのカップルが離婚に至ってしまうのです。
起こりうる問題をあらかじめ想定して,どのように対処すべきか考えておくことで,実際に問題が起こることを抑制することにも繋がりますし,いざ問題が起こった時に速やかな解決を目指すことができます。
・お互いを良く知る機会になる
結婚を決めるほどの大切な相手ですから,自分のことを良く思ってもらいたいのは当然のことです。
しかし,円満な結婚生活を送るためには,結婚前に本音で語ることもまた大切なことです。相手がどのような結婚生活を望んでいるのか,どのような家庭を目標としているのか,そしてどのようなことを嫌うのか・・・。
たとえ契約書に記載する必要が無いようなことがあったとしても,二人で結婚に対する考えを洗いざらいリストアップすることで,お互いの性格や考えを改めて知る良い機会になることでしょう。
- 「家事の分担の範囲を決めておきたい」
- 「子供ができても仕事を続けたい」
- 「子供の教育費は十分にかけたい」
- 「いつかは一戸建てを購入したい」
- 「自分の両親の近くに住みたい(同居したい)」
- 「1カ月に〇万円は自由に使いたい」
- 「無断で借金をしないでほしい」
- 「ギャンブルはしないでほしい」
- 「誕生日や記念日は一緒に過ごしたい」
- 「絶対に浮気だけは許さない」
- 「異性と二人で食事やメールをするのも嫌だ」
お互いが素直な気持ちで話し合う機会を持つきっかけにもあなりますし,お互いの本音を知ることもできるので,円満な夫婦関係の構築にも繋がります。
・離婚時の財産分与などを決めておくことができる
離婚時のもめ事のひとつとして,財産分与の問題があります。婚姻中に二人で築いた財産は共有財産とみなし,離婚時に半分に分けることが一般的ですが,共有財産には結婚前にお互いが持っていた財産や相続・贈与によって得られた財産は含まれません。それらを明確にしておくことで,離婚時に無駄な争いを避けることになります。
3.婚前契約書の内容
結婚契約書の内容は,例えば生活費の金額,お小遣いの金額,目標とする貯蓄額,家事の分担,子供の教育方針,親族との付き合い方など,公序良俗に反しない限り、原則としてどんな内容でも盛り込むことができます。
Q:一度作成した結婚契約書は,後から変更することはできますか?
A:お二人の合意の上で変更・追加は可能ですが,注意が必要です。
民法第754条では『夫婦間で契約をしたときは、その契約は、婚姻中、何時でも夫婦の一方からこれを取り消すことができる』と定められています。つまり結婚した夫婦の契約は,いつでも一方的に取り消すことができてしまうのです。それでは「契約」としてはあまり意味がありません。だからこそ,このような「契約」はお互いがまだ夫婦になる前,すなわち「婚前」にすることが重要なのです。婚前の契約であれば,一方的に取り消すことは出来ないのです。簡単に言いますと,結婚契約書は夫婦になる前の婚前に契約をするからこそ法的効力があるのです。
しかし結婚生活を続けていく上で,様々な状況の変化によって変更や追記が必要になる場合もあるでしょう。その場合は,あらかじめ契約書に変更・追加に関する条件を記載しておく,そして変更・追加の際には夫婦間の取消権については行使されないということを約束しておくこともひとつの方法です。
Q:将来は子供を持つことを考えていますが,もし離婚となったら絶対に親権が欲しいです!
結婚契約書で,あらかじめ親権者を決めておくことは可能ですか?
A:親権者は離婚時の状況で子供のことを最優先に決定されます。
離婚の際の親権者をあらかじめ結婚契約書に記載することは可能ですが,それが必ず実現するとは限りません。なぜなら親権者というのは,子供のことを最優先に考えて,離婚する時の状況でどちらがふさわしいか判断されます。
例えば「離婚時には母親が親権を持つ」と決めていたとしても,母親のDVや育児放棄が離婚の原因であった場合,母親が親権を持つことは難しいです。
Q:結婚契約書は自分たちで自由に作成しても効力があるのでしょうか?
A:内容によっては法的効力がない場合も・・・
結婚契約書に盛り込む内容は基本的に自由であると説明しましたが,一般的な社会常識から逸脱している内容や公序良俗に反するような内容の場合, 無効となってしまう可能性があります。法律の専門家である弁護士にご相談ください。
このように,結婚契約書は決して「離婚の準備」などではなく,
むしろ将来の離婚を防ぐため,結婚生活と真摯に向き合うための前向きな取り組みです。
結婚契約書の作成に興味がある方は,当事務所までお気軽にご相談ください。
国際結婚などの場合は,英語での契約書作成・チェックも対応しております。