
1月末から中国では春節を迎え、多くの観光客が日本へ訪れています。
先日札幌では「さっぽろ雪まつり」が開催され、例年のようにたくさんの観光客の方で賑わっていたようです。
雪まつりの期間も、札幌駅や大通り周辺を、中国人観光客がスーツケースを引いて車道をぞろぞろ歩いているというニュースがありました。
今回は、インバウンド急増による観光地の問題についてお話しします。
外国人観光客,いわゆるインバウンドの増加は,観光庁の調査にも表れています。
北海道への観光・レジャー目的の訪日外国人の消費額は,2019年7~9月期で539億円,2024年7~9月期には753億円まで伸びました。
特に大きな変化を見せているのがニセコエリアです。
この冬ついにニセコエリアのスキー場の1日全山共通リフト券が初めて1万円を突破しました。
この価格上昇は,物価高騰による人件費や燃料費の上昇が主な理由のようですが,ただでさえニセコのスキー場周辺は,以前から外国人向けにさまざまな料金が高騰していましたので,地元の人たちはどんどん遠ざかってしまっている傾向も感じます。
倶知安町の統計によると,冬季(12~4月)の宿泊客の8割は外国人が占めており,特にオーストラリアや香港,シンガポールからの観光客が多く訪れているようです。
▼参考
北海道のインバウンド需要 | 訪日外国人観光客数と分布
スキーはもはや高値の花?ニセコのリフト券は1万円超え、インバウンドと設備切り替えで
観光客の増加に伴い,様々な問題も発生しています。
立ち入り禁止区域での撮影や,公共交通機関での迷惑行為など,マナー違反が目立つようになってきました。
マナー違反が原因で,観光自体をやめてしまう場所も発生しています。
2025年1月23日には,小樽市内のJR朝里駅近くで,中国人観光客が写真撮影のために線路内に立ち入り,列車にはねられて亡くなるという痛ましい事故が起きました。
朝里駅周辺は中国のドラマのロケ地として知られており,多言語での警告看板や警備員の配置など,対策を講じていたにもかかわらず,事故を防ぐことができませんでした。
注意喚起があってもこのような事故が起こってしまうので,公共交通機関や各観光地では,あまりにも度を越えたマナー違反を許容しないための取り組みが求められます。
また,2025年1月14日には,美瑛町で以前から人気がありました農地の中にあるシラカバ並木が伐採されてしまいました。
これもオーバーツーリズムにより観光客による車などが車道を塞いだり,勝手に農地に立ち入ったりすることが理由だということです。
▼参考
「海の写真を撮りたい」中国人女性が列車にはねられ死亡 インバウンド急増、小樽市が明かした危険な現状
人気のシラカバ並木を伐採 写真を撮る観光客が密集 通行に支障も 北海道美瑛町
最近は外国人観光客のレンタカー利用も増加しており,それに伴い交通事故も増えています。
日本特有の道路標識の理解不足が一因とされており,特に「止まれ」の逆三角形の標識は,世界的に一般的な8角形と異なるた,外国人ドライバーが見落としやすいようです。
万が一,外国人観光客がレンタカーで事故を起こした場合,どのように対応すべきかを説明します。
レンタカーで事故が発生した場合,まずは負傷者の救助と警察への通報が必要です。
その後,レンタカー会社にも連絡を入れます。
レンタカー会社が加入している保険が適用されますが,免責額やノンオペレーションチャージ(NOC)が発生する場合があります。
NOCは,事故や故障によりレンタカー会社が一定期間その車を貸し出せなくなる際の補償費用を指します。
この費用は,事故を起こした運転者が負担します。
また,事故の相手が外国人である場合,安易に「YES」や「NO」と返答しないことが重要です。
現場での発言が直接的に責任の有無を決めるわけではありませんが,相手が誤解し,示談交渉が複雑になる可能性があります。
言語の違いがあると,意図しない形で責任を認めたと受け取られることがあるため,慎重な対応が必要です。
外国人観光客がレンタカーで事故を起こしてしまった場合でも,多くのケースでレンタカー会社が加入している保険会社が損害を補償します。
レンタカー会社は,事業者として対人・対物賠償保険に加入しており,人身事故の場合も運行供用者責任を負うため,被害者はレンタカー会社に直接賠償請求ができます。
過去に当事務所で対応した事例として,外国人観光客が一時停止の標識を見落とし,左側から走行してきたトラックと衝突した事故がありました。
助手席に乗っていた方が亡くなるという痛ましい事故でしたが,レンタカー会社の保険が適用され,日本人の場合と同じ基準で保険会社が賠償を行いました。
この事故では,英語での対応が可能な弁護士が担当したことで,保険会社から「交渉がスムーズに進んだ」と評価を受けました。
外国人観光客が関わる事故では,言語や文化の違いにより示談交渉が難航するケースも多いため,専門家のサポートが円滑な解決につながります。
今後は道路標識の多言語化やピクトグラム(図記号)の活用など,よりわかりやすい案内方法の整備が必要でしょう。
2013年8月からは案内標識のローマ字表記も改善されていますが,さらなる進化が期待されます。
今インバウンド観光がもたらす経済効果を活かしながら,道路標識全般の進化と補助標識に関する表記方法がよりわかりやすいものになり,安全で快適な観光地づくりを進めていってほしいと思います。
▼参考
交通事故分析レポート|公益財団法人交通事故総合分析センター
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