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なぜ魚は獲れなくなったのか|漁獲量減少の背景

近年、各地で不漁が広がっています。
これまで当たり前に獲れていた魚が、なぜ獲れなくなっているのか。
その背景には、海そのものの変化があります。
いま水産業で何が起きているのか。不漁の原因について解説します。

いま、なぜ各地で不漁が起きているのか


こうした海洋環境の変化は、特定の魚種だけの問題ではありません。
函館のスルメイカ、オホーツクの毛ガニに加え、北海道を代表する秋サケも大幅な減少が続いています。
さらに、オホーツク方面の漁業者からは、「かつては大量に獲れたカラフトマスもほとんど獲れなくなった」という声も聞かれます。定置網に魚がほとんど入らない日が続くこともあるといい、現場では”魚種ごとの不漁”ではなく、”海そのものの変化”として受け止められています。

こうした漁獲量の減少は、漁業者の収入減少に直結します。
漁業が基幹産業となっている地域では、地域経済全体の衰退にもつながるのです。

近年はただでさえ燃料費の高騰も重なっています。
燃料を使って沖合の漁場へ出ても、十分な漁獲が得られなければ、経営は一層厳しくなります。
「獲れない」「コストは上がる」という二重の負担が、現場を直撃しているのです。

不漁が続く背景|海洋環境と資源構造の変化

近年の不漁について、水産庁は、地球温暖化や海洋環境の変化に起因する資源変動が大きな要因であり、この傾向は今後もしばらく続く可能性があるとしています。

不漁の背景にはさまざまな要素がありますが、主な原因は次の三つに整理できます。

① 海水温上昇と海流変化による「回遊ルートの変化」


地球温暖化の影響で海水温が上昇し、親潮などの海流の勢いも変化しています。
その結果、以下のような現象が起きています。

  • サケは稚魚の回遊時期の環境が悪化
  • サンマは群れが北や東へ移動
  • スルメイカは産卵場の水温が適さなくなる

魚が日本近海から離れれば、漁場までの移動時間が長くなり、操業効率は低下します。
単に「魚がいない」のではなく、漁場そのものが遠くなっているのです。

② 餌環境の悪化(生態系の変化)


水温の上昇は、魚だけでなく餌となるプランクトンにも影響を及ぼします。
たとえば、サンマの重要な餌である低水温性のプランクトンは、海が暖かくなると成長が鈍り、より深い場所へ移動します。

また、沖合は沿岸部に比べて栄養塩が少なく、餌の密度も低くなります。
さらに、海洋酸性化が進めば、貝殻をもつプランクトンや甲殻類が減少する可能性も指摘されています。
つまり、不漁は単に魚の数の問題ではなく、海の食物連鎖全体の変化によって起きているのです。

③ 国際的な漁獲競争と資源管理の難しさ


サンマやスルメイカは、日本だけでなく複数の国が漁獲する「国際資源」です。
同じ魚群を外国漁船も漁獲すれば、資源の取り合いになります。

現在は関係国間で総漁獲可能量(TAC)の導入など管理強化が進められていますが、国境を越える資源である以上、管理は容易ではありません。
資源の減少は、自然環境の変化だけでなく、国際的な利用構造とも無関係ではないのです。

海の変化と向き合い、これからの水産業を考える

現在の不漁は、単なる「今年の出来不出来」ではありません。
海水温の上昇や海流の変化、餌環境の悪化、国際的な資源利用構造など、複数の要因が重なった構造的な変化の中で起きています。

魚が減ることは、漁業者の収入だけでなく、加工業や流通、地域経済、そして私たちの食卓にも影響を及ぼします。水産業は、地域と食文化を支える基盤だからです。

だからこそ、「たくさん獲る」ことを前提とするのではなく、限られた資源をどう守り、どう活かし、どう価値を高めるかという視点が求められています。資源管理の強化に加え、経営やブランド戦略、持続可能な仕組みづくりが重要です。

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▼参考
水産庁令和6年水産白書「不漁が続き漁獲量が減少したスルメイカ等は高値」
水産庁令和6年水産白書「サンマ、スルメイカ及びサケの漁獲量が近年大きく減少」
水産庁 カラフトマス資源の現況
水産庁 令和6年水産白書 「漁業・養殖業の経営の動向」
農林水産省 漁獲量、消費量ともに減少している原因とは!? 知りたい! 魚の今
水産庁|不漁問題に関する検討会
魚食普及推進センター|サンマが獲れない・小さいその理由。温暖化や鮮度重視の戦略が関係?
水産振興ONLINE いか類資源をめぐる国際状勢と日本の “いか産業” の課題と展望

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